なぜロトスコープでアニメを制作したのか?「花とアリス殺人事件」岩井俊二監督インタビュー 2ページ目 | アニメ!アニメ!

なぜロトスコープでアニメを制作したのか?「花とアリス殺人事件」岩井俊二監督インタビュー

2015年2月20日から『花とアリス殺人事件』公開される。前作と異なるアニメーションという映像表現を選択した理由とは? 岩井監督の作品への想いについて話をうかがった。

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――前作から年月が経っていて鈴木杏さんと蒼井優さんは“花”と“アリス”に久々の再会ですよね。

彼女たちの中で“花”と“アリス”の像がすでに完成されているのでそこはスムーズにいけたと思います。本作は前作の『花とアリス』のトーン&マナーが完全に踏襲されていてエピソードゼロに当たる作品です。
「こんな出来事があってあれに続くんだ」と答え合わせしている気持ちを感じてもらえたはず。そういう意味では本作の後に前作を改めて見てみると、また違って見える気がします。

――2人の関係でいうと、一見するとアリスが周囲を引っ掻き回しているようで、本当は花のほうが突拍子もないキャラクターだと思います。

岩井
前作からそうですが、花っていうのはとんでもないヤツですよ(笑)。『花とアリス』はショートフィルムからスタートして、それを見た人は「花っていい子じゃん」と思うかもしれませんがあれは大きな嘘で、映画を観るとそれが覆されるように作っています(笑)。花はストーカー的であったり、思い込みが激しかったり、実は壮大なるトラブルメーカーなんです。
一方でアリスは小さなトラブルメーカーのようで親や友人、色々な人間に翻弄されて流されて生きている。翻弄されまくっていて、本人のためになることって何もないんですよね。でも気がつくと花という友達を手に入れている、というのが今回の結論です。アリスはオスカー・ワイルドの『幸福な王子』に出てくるつばめのような存在なんです。

abesan――そんな中で本人はすごくあっけらかんとしていて、それがこの作品を軽やかに、爽やかにしている気がします。

岩井
リスクやメリットを考えずに行動するから体験が得られるという、彼女に仮託している生き方があるんです。現代人は行動よりも先にリスクやメリットを計算しすぎて動かないというか。経験こそ一番の財産だと思うので、色んな経験や冒険をするためにどこか度外視した子なんです。
ただ、アリスが何事にも前向きな子かといえばそうではありません。たとえ行動に計算があったとしても、それを凌駕する外側の環境があって、気が付いたらそんな状況になっている……という部分に真実があるのかなと思います。大人たちも決して彼女たちに優しい人ばかりでは無いからこそ、10代の女の子たちが磨かれ光り輝く。大人たちにはそうであって欲しいし、彼女たちが輝ける場所を、荒波に揉まれる環境を奪わないで欲しいという想いがあるのかもしれません。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

abesan岩井
アニメを見慣れている方からすると、アニメを作ったことの無い人間が作った不思議なアニメかもしれません。なんというか、僕の中にも好きなアニメ像があって、普段アニメを見ながらフラストレーションに感じていたことがあったんだと思います。だから『花とアリス殺人事件』は自分が見たいアニメを作ろうと制作したアニメーションです。
見栄えはみなさんのなじみのあるアニメとは違うかもしれませんが、これもまた一つのアニメーションだと思って、ご覧いただければと思います。

――今日は、ありがとうございました!

映画『花とアリス殺人事件』
2月20日(金) 全国ロードショー
http://hana-alice.jp/
《川俣綾加》
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