「アップルシード アルファ」公開特集 荒牧伸志監督×水島精二監督対談“CGアニメの現在と未来”―前編― 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「アップルシード アルファ」公開特集 荒牧伸志監督×水島精二監督対談“CGアニメの現在と未来”―前編―

映画『アップルシード アルファ』が1月17日に公開される。本作の荒牧伸志監督と2014年の話題作『楽園追放 -Expelled from Paradise-』の水島精二監督が、現在のCGアニメについて対談を行った。

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■ 新たなワークフローへの挑戦、映像づくりはコミュニケーションで成立する

―水島監督がフルCGを手がけられるのは『楽園追放』が初めてですが、今後別の方法、例えばフォトリアルをやりたい気持ちはあるのでしょうか。

水島
映像のスタイルにはこだわりはなくて、自分が納得できるならやりたいと思います。『楽園追放』は「セルルックで」という話だったし「自分が普段やっている作画アニメーションの演出を取り入れる」のが大きな目的だった。逆に「フォトリアルな作品をやってみませんか」と誘われたら、条件が揃えばやると思います。

―セルルック自体にこだわりがあるわけではない?

水島
全然ないというとセルをやっている人たちに怒られますが、映像作品はコミュニケーション能力があれば成立するかなとこの年になって考えています。郷に入っては郷に従えで、そこのやり方を受け容れられる、自分のことを受け容れてもらえるのかだけ確認して、うまくいけば『楽園追放』みたいにいい形の物も残せるんじゃないかな。大事なのは同じ方向を向けるかどうかですね。

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荒牧
『楽園追放』は最終的な絵はセルアニメっぽいけど、フローや段取りが全然違うと思います。それはどうしていったのですか。

水島
最初に「レイアウト(*)とラフモーションを2D作画のアニメーターに描いてもらうやり方はやりたくない」と僕の方から話しました。絵コンテ(**)も同様で、絵の完成度が高すぎると3Dアニメーターがそれを再現する事に囚われすぎてそこから膨らませられなくなるから、それもやりたくなかった。絵コンテをお願いする人も、画力より構成力重視で、むしろ自分の絵で描く人に参加してもらいました。
*レイアウト 映像の完成を想定して、背景とキャラクターの動きや配置を描いたもの。いわば設計図。
**絵コンテ カットごとの絵とストーリーで映像の流れを示したもの。こちらも映画の設計図の役割を持つ。

荒牧
そうなると3Dで組んだ、ラフなモデルのレイアウトのようなものから始めたわけですね。

水島
最初はラフモデルでちゃんと情報を管理できるかドキドキしていました。でもその情報の中で最終的な絵を演出するビジョンを持たないとコントロールできない。そういう意味でも演出・絵コンテの京田(知己)さんが参加してくれたことは大きかったですね。作画出身ではなく、監督経験があって自分の絵作りがちゃんとわかってる人。演出は僕と京田さんの2人でやっています。
まさに適役で今回アクションを中心にお願いしたんですが、心強かったですね。後の絵コンテの2人(角田一樹、黒川智之)も作画経験はないです。

荒牧
CGアニメのフローが面白いと思えるかどうかが、僕はCG作品をやる監督の胆だと思っています。「こんなシステムじゃ作れない」って思うと絶対無理だと思うんです。水島さんはその辺の現場に対しての適応能力が高い方だなと思いました。CGアニメの場合は、制作現場が変わるとまた同じことになるんですよ。僕は何年かやって、これは難しいなと思ったのでスタジオを作ったんです。

水島
わかります。僕はいま別のスタジオで仕事をやり始めたんですけど、『楽園追放』のグラフィニカとはずいぶん違っていました。

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荒牧
2Dアニメの会社だと(どこに行っても)タイムシートも、製作フローも一緒なので戸惑うことはないんですが、CG会社はそれぞれで違う文化を持っている。使う言葉も全然違います。
監督の仕事は自分の意図を伝える時に、いくつも作品を一緒に作るとやりたいことを言わなくてもわかる人が増えていく。するとどんどん楽になるし、どんどん高度なことができるようになるんです。

水島
そうですね。『楽園追放』はまさに作っている間にそうなっていきました。

荒牧
セルアニメでは、アニメーターや原画マンの得意なモノがわかっていたりするから上がりも読めるじゃないですか。それと同じことが出来てくるとたぶんスピードも上がるしクオリティも上がる。数を作るしかないですよね。

水島
会社単位でもフロー確立して、数作って、生産性を上げていくことを考え方ないとより高度なことをやる余暇がなくなっちゃう。3Dはまだほんと過渡期なんだなって思います。いいタイミングで関われたなと思いますね。

《後編に続く》1月17日アップ予定

『アップルシード アルファ』
2015年1月17日、全国公開
/http://appleseedalpha.jp/

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《animeanime》
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