【ラストはもちろん交響曲第九番、全員で合唱!橋本良亮、自分に正直に生きたルードウィヒを熱演!】初日の前にゲネプロ(通し稽古)があった。原作ではフランツ誕生から描かれているが、舞台版は子供時代のエピソードをはしょり、物語はベートーヴェンの家の様子から始まる。プロローグは壮大な音楽で幕開き。里見浩太朗のソロ、なかなかの歌唱力。宮廷歌手という設定で、そのままストーリーに入っていく。家計が苦しいベートーヴェン一家。母マリアは近所のパン屋からパンをもらう。父ヨハン、もらったギャラは酒代に消えていく。しかし、息子の才能に早くから気付き、厳しい態度でピアノを教える。そんな父に反発するルードウィヒ。心優しく、近所の人々からも愛され、息子を励ます母マリアを浅野温子が抑えた演技で好演。里見の頑固一徹な父、ちょっと頑固な性格だが、民衆の力を信じるルードウィヒ。この親子関係、原作より少しクローズアップされている感がある。それから天才音楽家・モーツァルトに弟子入り。モーツァルトの軽やかな雰囲気と、いかにも堅物なルードウィヒのコントラストがはっきりとしている。河合はちょっとチャラくてコミカルな、でもどこか芯の通ったモーツァルトを嫌味なく構築。1幕の幕切れは、父に小切手を渡して旅立つシーン。父・ヨハンの言葉「やっと、この父を捨てることが出来たな」と言う下りは父の深い愛を感じる。貴族の前でののしられながら歌い、少々のギャラを手にすることに嫌気がさし、酒に溺れる姿を哀愁をこめて演じる里見浩太朗は流石の貫禄。幕切れに歌う姿はなかなかの迫力。2幕はフランス革命のシーンから。ルードウィヒは革命に傾倒し、『英雄』を作曲した程。次第に耳が聞こえなくなり、不安になるルードウィヒ。”音楽家としてやっていけない”と絶望するが、母の亡霊が現れて「生きて使命を果たすのよ」と諭す下りは感涙。このあたりから原作にはない”創作”部分。年月は流れ、歳を重ねたフランツが登場するが、その顔には深い哀しみが漂う。1幕は、ルードウィヒに激しい憎しみの感情をあらわにし、杖でルードウィヒを打つ下りは迫力満点だったが、一転して2幕のフランツの姿は正反対。姜暢雄、演じ分ける力量と歌唱力は実力派ミュージカル俳優らしい出来映え。ラストはもちろん、交響曲第九番。シラーの詩に感銘を受け、貴族の世が終焉を迎えようとした時代の波を感じ、自分に正直に生きたルードウィヒを熱演する橋本、俳優としての将来性が感じられる。ラスト、歓喜の歌を全員で合唱する幕切れは年末にふさわしい。モノトーンを基調にしたシンプルなセット、千住明の楽曲が物語を彩り、それを舞台中央で演奏するが、そのクオリティの高さは流石。映像もその場面の描写にとどまらず、時代を象徴する絵画等を映し、物語のバックボーンを雄弁に語る。また2幕の亡霊は映像で。母、父、モーツァルト、ハイドン等、ルードウィヒの人生に影響を与えた面々がルードウィヒに語りかける。民衆の時代が刻一刻と近づいていた動乱の時代。単なる波瀾万丈な作曲家の話にとどまらず、その時代を懸命に生きた人々が確かにいた、ということを知ることが出来る。コミックの作画と似てはいないが、手塚の作品らしいスケールの大きさを生かし、舞台ならではの表現でコミックで描かれている世界観が浮かび上がる。原作は未完でも、舞台版はしっかりと完結。ベートーヴェンは観客の拍手に気づかなかったという史実上の有名なエピソードを上手く織り交ぜてのエンディング、舞台『銀河英雄伝説』で力をつけたヨリコ・ジュンの脚本が光る。年の瀬の定番にしてもよい作品だ。「手塚治虫原作 音楽劇『ルードウィヒ・B』~ベートーヴェン歓喜のうた~」11月27日(木)~12月6日(土)東京国際フォーラム ホールC12月11日(木)~14日(日)シアターBRAVA!http://www.beethoven-stage.com※手塚の塚は本来は旧字体です。
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