石井監督はYouTube上で300万回以上の再生を記録する「フミコの告白」(2009年)で第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞や2010年オタワ国際アニメーションフェスティバル特別賞を獲得し、2013年には「陽なたのアオシグレ」で劇場デビューも果たすなど、今世界中で注目を集めている。そんな石井監督の所属するスタジオコロリドにお邪魔した。
ところが、スタジオコロリドは『FASTENING DAYS』を制作後、東京・中野新橋の旧スタジオからりんかい線沿線へと拠点を引っ越しした直後だった。どういった現場で作品が生み出されたのかは残念ながら確認できなくなってしまった。
しかし、これからスタジオコロリドで作品が生み出される場所として、石田監督直々に各部署の説明をしていただきながら、スタジオの中をぐるりと見せていただいた。
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真新しいスタジオは作業に取り組んでいるチームも見られたが、ところどころまだ空席の机もあり、「これからはじまる」という空気が存分に感じられた。広いフロアに全てのセクションが入り、パーテーションで各班ごとに別れて机を並べている。入口正面の中央ブロックには作画班が机を並べて作業を進めていた。そのほかのセクションはぐるりと作画チームを取り囲むように配置されている。
4席ほどのCG班では、CG制作から仕上げ、撮影までを行える。実際『FASTENING DAYS』は当チームで行われたとのこと。
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日当たりと見通しのいい場所に石田監督の席は配置されていた。背中合わせにするようにすぐ近くには朋友・新井陽次郎さんの席。「前のスタジオはもっと狭かったので数名の作画班と隣り合わせでした」と石田監督が説明をしてくれた。
隣のブロックは3つほどの席がまるまる空いていた。石田監督によると『冩眞館』のなかむらたかし監督など、ベテランクリエーターが入る予定の席だという。
その隣は美術班。「前のスタジオでは美術さんの席がなかったんです」と石田監督は控えめに笑った。どういうことかたずねると「日々、空いている席を見つけて使ってもらいました(笑)。デジタルで作業していたのでパソコンさえあればできたんです」との説明だった。
続いて制作班の席が並ぶ。まだまだ始動しはじめといった様子ではあるが、スケジュール表なども張り出され、在席していた制作スタッフは電話対応をしていた。
「説明が難しいんですけど」と前置きをし、石田監督が紹介してくれた隣のセクションは「仕上げやプロップデザイン、管理」などをする班であった。
入口の左手には完全に区切られた会議室が設けられており、そこでは取材時にも数人がつめて会議が進めている様子だった。
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『FASTENING DAYS』を制作したスタジオよりずっとサイズアップをし、これからまた数々の企画が生まれていく期待感、そして石田監督をはじめ若いスタッフたちの生命力を感じさせるスタジオだった。これからも各クリエイターの生み出す作品が楽しみだ。
一方、『FASTENING DAYS』は、今後、英語、スペイン語、フランス語、中国語の4ヶ国語で全世界向けに公開される。その作品のメッセージと石田監督の世界観はいっきに世界に広がる。
[細川洋平]
『FASTENING DAYS』
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