―当初から“前日譚”を描くことは決まっていたのでしょうか?
永井
はい、仮にスピンオフの物語をつくったとしても、「いかにも映画化するためにつくりました」という中途半端なものになってしまいそうだったんです。第1話で日々人が「僕より先に月面を踏むはずだった人が、今この場にいないのは残念です」と語るのですが、その発言につながるような映画をつくろうと思いました。
―前日譚にした時に、物語の結末がある程度分かってしまいます。そこに向かって進むドラマを描くことに難しさや、危惧はありませんでしたか?
永井
いえ、もともと『宇宙兄弟』は結末がどうなるのかを引きにしている作品ではないんですよ。原作のラストも「最終的に六太と日々人は自分たちの夢を叶えるんだろうな」と何となく想像はつきます。が、それでも作品を観るのは、そこにたどり着く過程が面白いからです。だからこの映画も、90分という尺のなかで、結末に至る過程を上手く描ければ面白くなるという確信がありました。
―日々人とブライアンのエピソードに偏ることなく、六太の物語もしっかりと描かれていました。
永井
そこは小山さんが頑張ってくれたところです。シナリオに関しては、原作者の良さを活かすために細かい注文は出しませんでした。
―では、小山さんのアイデアがきちんと活かされた映画になっていると。
永井
ええ。いろんな要素が盛りだくさんに詰めこまれています。
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―プロデューサーとして、映画の内容に関して何かオーダーは出されましたか?
永井
演出チームには「観客を3回泣かせてください」とお願いしました。どこでもいいんですけど、とにかく3回泣かせてくださいと。
―「泣かす」という意図はどこにあったのですか?
永井
要は「泣けるぐらい良い話にしてください」ということです。やっぱり良い話ではないと『宇宙兄弟』ではないですから。
―ちなみに、六太と日々人、どちらがお好きですか?
永井
うーん……。どちらが特別ということはなくて、ふたりとも好きですね。どちらも本質は一緒だと思うんですよ。お互いに能力はある。日々人はそれを表に出せるけど、六太は自信がなくて表に出せない。長男と次男の違いという気もします。
―ふたりのどんなところに惹かれますか?
永井
六太は、何だかんだ言いながら最後は頑張るところが好きですね。日々人は、己を信じて突き進むところです。
―そんなふたりに感化されることも?
永井
そうですね、あのふたりは本当に凄いと思いますし、気付かされることもあります。でも、真似できるかといったら、やっぱりなかなか難しいですけどね(笑)。
―最後に『宇宙兄弟#0』の見どころを教えてください。
永井
『宇宙兄弟』に触れたことがない人は、この映画を観ると原作マンガを読みたくなると思います。一方、原作ファンの方は、もう一回読み直したくなるはずです。90分の作品だけでもいろんな伏線がからみ合ってつくられているんですけど、「なるほど、ここにつながっていたのか!」という発見があるので、そのあたりを楽しんでもらいたいです。
―どうもありがとうございました。
『宇宙兄弟#0』
/http://www.uchukyodai-movie.com
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(C)宇宙兄弟CES2014