オリジナルの物語を作るにあたって、まずはどういうシーンからイメージされたのでしょうか。
―岡田麿里(以下、岡田)
もともとの企画では「謎のメッセージがネットに流れると、人が死ぬ」という設定だったんです。今回はそこにオカルトっぽさを加えて、「謎の歌が聞こえてくると、人が死ぬ」というところから「躯(むくろ)」が生まれました。歌が聞こえてきて、ロボットが出てきて、敵もいて……というイメージで、作品の雰囲気が決まっていきましたね。
舞台は「無明領域」という異空間が突然生まれて、みんなが避難してきてできた都市であること。そこから、近くに人の住んでいない団地があるとか、夜7時以降は外を出歩いてはいけないということが決まって、どんどん世界ができていきました。
―AA
キャラクターに関してはいかがでしょうか。
―岡田
最初は、アカシとミナシのW主人公を考えていたんです。それも、もう少しアカシが負の面を背負って、ミナシが美しい面を背負っていて、その2人が各話ごとに「どっちが上か」と問われる感じだった。その後、アカシが単独の主人公になりました。
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―AA
最近のロボットアニメの主人公は、熱血でもウジウジでもダメで、キャラ作りに苦労されると聞きますが、そのあたりはいかがでしたか。
―岡田
たしかに「今こういうキャラはダメだ」というような話が出なかったわけではないんですが、ふと気づくと佐藤さんがそういうことをあんまり気にしていなかった。じゃあ、いいじゃないかと(笑)。
この作品は「中二病」のような要素が前面に出ているようで、アカシの「越えられないお兄ちゃんがいる」という設定には昔のロボットアニメのような熱血感があるし、やはり佐藤さんの作り方はすごくオーソドックスなんです。
佐藤さんは、主人公に「中二病っぽさ」を求めていたんです。なので塩梅としては、ダークに振りきれるわけでもなく、かといってウジウジするでもなく、どちらかというと無感情で、ある意味、心のシャッターを下ろしてしまっていて、でもイケメン……みたいなのがいいかなと思ったんですよね(笑)。
―AA
おもしろいですね。
―岡田
ただ、アカシは決してかっこいい子ではないんです。弟という、常に誰かに負け続けなければいけない宿命を背負った主人公なので。このあとも、アオシ以外に彼の前に立ちはだかる存在がでてきて、完全無欠の子なのに常に負け続ける。だけど、負けた時に落ち込んだりウジウジしたりするのではなく、好きな子を見つけて気持ちを寄せていくなど、普通の少年らしい一面もある。
「ずっとモテているのに、なんでこんなにモテていない感じがするんだろう」というのが、彼の良さだと私は思います(笑)。
―AA
「ただしイケメンに限る」の逆を行っているわけですね(笑)。
―岡田
負けるイケメンもいいじゃないですか(笑)。ミナシを見てもすごく無邪気で、心が美しい。でも、美しすぎるのって多くの欠落をはらんでいるものなんですよね。この『M3~ソノ黒キ鋼~』に関しては、かっこいい男の子を書いた気がまったくしないです(笑)。
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―AA
ほかにも、登場時に絶大なインパクトを残したといえば、ヘイトですよね。
―岡田
序盤は彼の行動で話が動いていくので、ある意味では最初の敵ですよね。彼は分かりやすく欠落していて、それを埋めようと、彼なりに常に何かを求めている。8人の少年少女たちのなかでは、マヴェスにも乗りたがっていますよね。ヘイトに関しては、村瀬(歩)さんの声がすごく良いです。
―AA
これまでにないタイプの役柄ですよね。
―岡田
もともと、村瀬さんはかわいらしい少年の声を持つ声優さんだけど「隠し玉がありそうだな」と思っていたんです。ヘイトを演じているのを見て「そっか、これだったのか!」と納得しました(笑)。
ヘイトの「言葉責め」はいつもの自分らしさが出ていると思いますが、それを「こんな喋り方があるんだ!」と驚くような演技をされていて、そのギリギリ感がとても良かった。スタッフはおなじみの方が多いのに、声優さんは初めての方が多いし、なにより作り方がこれまでとはまた違っているので、すごく「新しいものに参加している」という気持ちがしています。
後編に続く
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『M3~ソノ黒キ鋼~』
/http://m3-project.com/
Blu-ray<初回限定版> 定価: 7500円+税
DVD<初回限定版> 定価: 6500円+税
発売日: 2014年8月2日(土) (共通)