本作の監督は『アフロサムライ』シリーズなどを手がける木崎文智監督である。人気ゲームのアニメ化に真っ向から取り組んだ、一大プロジェクトの内幕を監督に聞くインタビュー第2弾は、ビジュアルを中心に作品に迫った。
[木崎文智(きざき・ふみのり)]
1969年生。福岡県出身。1980年代末よりアニメーターとして活躍し『バジリスク~甲賀忍法帖~』で初監督。切れ味の鋭いアクション演出は海外からの評価も高く、近作『アフロサムライ:レザレクション』はエミー賞へのノミネートも果たした。
(※崎の字は、本来は“たちさき”です。)
『BAYONETTA Bloody Fate』 /http://www.bayonetta-movie.com/
― ここからはおもにビジュアル面についてお聞きしようと思います。まず、原作の細かい3DCGモデルを、手描きの作画中心で動かす労力は並大抵ではないと思うのですが。
- 木崎文智(以下「木崎」)
3DCGモデルの場合は、一度作ってしまえばディテールが多くてもいくらでも動かせますよね。それが手描きアニメーションだと、とにかく一枚一枚を描いていく作業になります。
『ベヨネッタ』は元のデザインの線の密度が非常に高くて、パーツも多かったので、アニメ用のリデザインは難航しました。そのまま忠実に再現すると「こんなの動かせない」ということになるし、省略しすぎてもキャラクターの華麗さが損なわれて「あれもこれも欲しい」という話になってしまうので。
― 具体的な落とし所は?
- 木崎
本当に偶然なんですけど、原作ゲームでキャラクターデザインを務めた島崎麻里さんが『アフロサムライ』の原作者である岡崎能士さんと交流があって、そのつながりでアニメ制作にもちょうどいいタイミングで参加していただけたんですね。そこから島崎さんにキャラクター監修として、原作サイドとも交えて調整しました。手描き部分以外では高密度のまま再現しなければならない大型天使や、銃のアップなどはCGで作成しています。
― そうしたデザインのすり合わせを経た上で、ベヨネッタの作画上のポイントはどこになりましたか?
- 木崎
シルエットのバランスですかね。ベヨネッタは頭身が高い上に、プロポーションもかなり特殊なんです。ほとんどの作画スタッフがそのシルエットのバランスには苦労していましたね。
昨今のアニメーション作品は頭身の低いキャラクターが主流なので、ベヨネッタの特殊な画は作業しつつ慣れていくしかなかったと思います。
― ベヨネッタは非常に頭身が高いですが、いまの多くの作品は5、6頭身ぐらいのキャラクターが多いですよね。
- 木崎
今時の流れとはまったく真逆のデザインなんですよね。作業効率を度外視した線の多さもあって、とくに若いアニメーターが苦労していたと思います。
メガネというだけでも動かす上ではハードルが高いんですが、さらに両手両足に銃を装備していたり、長いリボンや髪の毛がたなびいたりして、ただ動かすだけでも労力を要しました。
― しかもその髪の毛やメガネといった、作画が大変な要素が外せないポイントですからね。
- 木崎
「メガネを取ろうかな」と何度思ったことか……。もちろん冗談ですが(笑)。
― (笑)。ベヨネッタは絶対にメガネを取らないというのが原作でのお約束ですからね。
- 木崎
そうですね。それを貫いた原作サイドのこだわりは非常に強いと思いましたね。僕は監督作業はあくまでも仕事として受けるタイプなので、自分の趣味嗜好より原作サイドがこだわったポイントがアニメ映像に少しでも落とし込めていれば、成功かなと思っています。
ベヨネッタがメガネをしていることで、目の表情をレンズのハイライトであえて隠して心情を表現するという演出ができたのはよかったですね。
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