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「21C:マドモアゼル・モーツァルト」から透けて見える“普遍的な世界” 

[取材・構成: 高浩美] モーツァルトが女だったら・・・天才作曲家の生き様だけじゃない、『21C:マドモアゼル・モーツァルト』から透けて見える“普遍的な世界”

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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■ 21世紀、『21C:マドモアゼル・モーツァルト』、時代を駆け抜けた一人の天才の物語、普遍性と時代性が共存する息長く続く作品

モーツァルトはこの時代の流行作曲家であるが、この作品の楽曲もまた流行作曲家が提供している。初演のミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』、楽曲は小室哲哉。そしてこの『21C:マドモアゼル・モーツァルト』は3人の作曲家が楽曲を手掛けているが、その1人がAKB48の『UZA』などのヒットメーカーである井上ヨシマサ。まさに旬の作曲家である。
モーツァルトが手掛けた200年以上ヒットしている数々の楽曲とともに21世紀のヒットメーカーの楽曲の競演である。また、全体を通して当然のごとくモーツァルトの楽曲が登場するが、編曲もポップなアレンジで楽しませてくれる。このシンクロのさせ方に時代性を感じるポイントでもある。

舞台の幕開け、老人になったサリエリが登場する。響き渡るモーツァルトの息子の声。サリエリに死が忍び寄る。過去に想いを馳せるその時、爆音とヘリの音、機関銃の音が鳴り響き、一人の少女が撃たれる。衝撃的なシーンである。
実はモーツァルトが生きた時代のヨーロッパは戦争に告ぐ戦争だった。今も地球上では紛争が絶えないが、時空を超えて現代にも通じるという暗示的なオープニング、原作には全くない哲学的な場面である。

物語は始まる。後のモーツァルト、エリーザに並外れた音楽の才能があると気づいた父・レオポルト、娘を男として育てる決心をする。世界的作曲家モーツァルトの誕生である。モーツァルトは音楽を創造する、そして生きる。その疾走感をダイナミックなダンスと楽曲、場面転換で見せていく。地球・宇宙をイメージさせるシンプルなセット、スピリチュアルなイメージを背負ったダンサーの群舞や動きが普遍的な空気感を紡ぎ出し、世界観を構築する。モーツァルトと共に生きる人々、サリエリ、モーツァルトの妻コンスタンツェ等、彼らも懸命にその瞬間を、その時代を生きるのである。
サリエリの苦悩・嫉妬、コンスタンツェの困惑ぶり(結婚した相手が女だったから)はモーツァルトのキャラクターを際だたせる。主演の高野菜々は中性的なモーツァルト役を軽やかに、時には可愛く演じていたのが印象的。サリエリ役の広田勇二はベテランらしい貫禄を滲ませて好演、その他、脇を固める俳優陣もきっちりと役を演じきっており、ミュージカル専門集団らしい出来映えである。

ラスト近く、冒頭に登場したシーンが蘇る。モーツァルトとサリエリ、深い奥底で共鳴する象徴的なシーンであり、原作にはないテイストでもある。『魔笛』の成功の後、モーツァルトの命の炎は消えていく。ラストの満月は印象的で余韻を感じさせる。息長く上演して欲しい作品である。

音楽座ミュージカル
『21C:マドモアゼル・モーツァルト』


東京公演 
6月14日~23日
東京芸術劇場 プレイハウス(中ホール)
大阪公演
6月29日~30日
シアターBRAVA!
愛知公演
7月6日~7日
青少年センター アートピアホール
広島公演
7月12日~13日
上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
ホームタウン公演
7月20日~21日
町田市民ホール

公式サイト /http://www.ongakuza-musical.com/aboutr/
《animeanime》
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