■ 僕の中に作品が“降りてくる”、自分が面白いと思うことを提示する「アニメとかゲームとかって見る人それぞれに思い入れがありますから、僕には“すべてのファンの皆さんに喜んでもらえるものを創る”というのはとても無理だろうなと思っています。お仕事を頂いてからとことん原作のアニメを見たりコミックを読みこむうちに、僕の中にその作品が“降りてくる”、偉そうですが(笑)。一番大事なことは、僕はこの作品のどこに共鳴してどこに疑問を持ったか、やっぱり僕自身が感じているものを創るしかない、と。要するにファンの方々が喜ぶものはなんだろうっていう求め方はしない、自分が面白いと思うことを、演出家として、クリエイターとして提示する、それをお客さんが面白いと思って頂けるかどうか、そこが勝負なんです。アニメのように空を飛んだり、身体から光線が出たりとか、舞台では絶対に出来ないですよね。でも舞台でしか出来ない表現、舞台だからこそ面白い表現というものがあると思うんです。演劇とアニメでは創る文法が違いますからね。その違いを楽しんで頂きたいです。実は僕は、原作通りのストーリーでやらせて頂いたことは一度もないんです。舞台化するときは必ずオリジナルストーリーであったり、オリジナルのキャラクターを作ったりするんです。■ 主人公は“こういう人、好きだなぁ”っていう人になっています「主人公を描く時に考えるのは“敵役は強大でなくちゃいけない”ということ。違う価値観を持っている人間や思いが違う、志が違う者同士が戦うことで何がわかり合えるのか、わかり合えないのか、そういったものを見たいんですけど、やっぱり主人公が魅力的に見えるには、敵役が魅力的でないと絶対にダメだと思います。ですから敵対する側の人物造形にはとても力を注ぎます。今回の原作はボカロ曲『千本桜』とそれをもとに書かれている小説です。でも、先ほども話しましたが、主役を海斗に置き換えてのオリジナルストーリーなので、まず初音ミクってどういう人なのかっていうところから悩みまくりでした。そもそも初音ミクというキャラクターは、どうぞみなさんが自由に作り上げて下さいという存在ですよね。ボカロ曲『千本桜』もたくさんの人に影響を与えていて、それに触発されたひとがたくさんの二次創作を作り、発表しています。そういうことで言うと舞台も二次創作のひとつなんだろうなと。ホント、4分ぐらいの楽曲が、僕の中で膨らんでいって2時間以上の舞台に、さらに、ちゃんとした物語にならなくてはならない。そこが一番時間かかりましたね。あと、初音未来(初音ミク)や青音海斗(KAITO)とはどういう存在なのか、そこですよね。そこは、もう自分の力を信じて“僕はこういう人、好きだなぁ”っていう人を作るしかないと思っています。特に今回の主役は海斗(KAITO)ですからね。彼がどのように板の上で生きるのか、そこにかかっています。もしかしたら皆さんが想像している海斗(KAITO)や未来(ミク)と感じは違うかもしれませんが、でも“こういう人って素敵だな”って思えるような人間にはなっていると思います、そこは胸張って(笑)、皆さんに見て頂きたいなと思っています」
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