戸田恵子インタビュー 高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第13回 | アニメ!アニメ!

戸田恵子インタビュー 高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第13回

[取材・構成: 高浩美] 戸田恵子インタビュー 「自分を信じることが出来るようになった、芝居とは関係ない活動を通じて メンタル面がすごく上がったんですよ」

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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戸田恵子インタビュー
「自分を信じることが出来るようになった、芝居とは関係ない活動を通じて
メンタル面がすごく上がったんですよ」


[取材・構成: 高浩美]

■ 今回の2人芝居は自分にとってチャレンジ

この3月、戸田恵子さんは2人芝居に挑戦する。お相手はバリバリの舞台俳優加藤健一さん。舞台には本当に二人しかいない。それだけに俳優の力量が問われる、なかなかハードルの高い芝居である。

「今回の舞台はチャレンジですね。本当に私にとってはとても挑戦しがいがあります。加藤さんと2人で何かする、ということも含めてそうそうにこういうチャンスはないかもしれないです。脚本を改めて読んでみると“大きいなー”と思っています。今までだったら尻込みするようなところですが(笑)自分では選ばないことをぶら下げて頂いたおかげで・・・“鈴の鳴る方向”にいったってことで。こういったことはたぶん自分では見つけられないことなんですよね、ある時を境にして“やってみよう”気にはなっています」
戸田さんが演じるのは活発で少々エキセントリックなアグレッシブな女性。かなり年齢を重ねており、病気も抱えている。

「正直、圧倒的に活発な女性を演じることが多いですね、大人しい役は一度もやったことがない(笑)。こういう場合、男性の役は保守的ですよね。今回は60の声がちらほら聞こえてきて、病気とか、マイナスのものをたくさん抱えて、人生も重ねて、お互いにそういうものを持っていて出会った時にどうしていくのだろうかっていうところはとても興味深い、そこが面白いなと思います。翻訳ものですが、こういった作品を見ていると設定されている場所は“別にどこでも”って感じにはなります。最終的には“人間像”っていうんでしょうか、人間性みたいな・・・お芝居ってそういう力がありますよね」


■ 演じる、という点では全て共通、いいお芝居をするだけ

「基本的には演じる、頂いた台詞をしゃべる、いいお芝居をする、ということでは(舞台でもテレビでも声優活動も)共通です。ただ、それぞれ“約束事”があってそれを習得しないと思い切った演技は出来ないですね。声優としてはいろんな技術なことを学ばなければいけない時期がありましたが、それをクリア出来た時にはのびのびと芝居が出来るようになりました。テレビですと“写る”っていう要素がありますので、舞台の上でやるように動いてはいけない訳です。いろんなことがわかってこないとそこに見合ったお芝居が出来ない。でも、そういうことがわかってくると“あ、全部同じなんだな”っていう風に思っています」


■ 声優の仕事はイマジネーションが必要

「特にアニメは架空のものなので、非常にイマジネーションを要求されますね。例えば“10mぐらいジャンプする時の声って?”とか“空を飛んでいる時は?”とか“5歳の男の子になった時は?”っていうことをイメージしてお芝居をする、これは本当によく言われることで“声を作る”って表現されてしまうんですけど、例えば5歳の子供の役を舞台でやるとしたら5歳の身なりをして5歳“風”に演じる、5歳の声が出せなくても。声だけでそうしている訳ではない、気持ちでお芝居をしているんですね。声優はスタジオにいて動けない、身体を動かさない分、イマジネーションと内面がもの凄く豊かに動いていないと出来ない。気持ちとしては、“画面にいるヒト”と同じ芝居をしているつもりでやらないといけない。
そういう意味においては身体を動かしてお芝居する方が楽、ですね。外国映画の吹き替え、例えば2時間のものを、一日スタジオにいてやっていると、とにかく集中して台本と画面と耳と・・・合わせながらお芝居しなくちゃいけない、(尺を)合わせて“ナンボ”っていうところもあります。
アニメもそうなんですが純粋にお芝居するだけではない、もう一人の自分が常に居て、例えば100%“泣いている”芝居をしながら、同時に合わせていく作業をしていく、どこか”冷静な自分“がいつもいるんです。楽しい仕事ではありますけどね」


■ “ご縁”で子供達のための映画祭に

 「キンダー・フィルム・フェスティバル、世界各国の子供目線で製作された映画を吟味し、チョイスして皆さんにお見せするという映画祭に関わっています。実写もアニメも、ショートフィルムから長編まであります。国によって作風や切り口が違っていて、絵のタッチも国によって全く違いますし、内乱や戦争がある国のアニメでは子供達から見た戦争はどう映っているのだろうかとか興味深いものがあります。クオリティもすごく高いですよ。借りてきて期間中に見せています。原語で来るので、生で、現場で、一発吹き替え!やり直しがきかないのですごく勉強してからやります。毎年夏に開催されていて、ホントに忙しい最中にやって大変ですが、意義のあることですし。ひとえに作品がいいので“これはみんなに見てもらおう”と。それだけです。
あと、私に出来ることは、仲間の声優さんにお声をかけて“吹き替え、この役とこの役をやって欲しいんだけど”ってお願いすること。ホントにすごく勉強してきてくれて、しかもボランティアで参加してくれる、子供達のために。この映画祭は大変ですけど、やると“やっててよかった”って思います。最初はフェスティバル関係者の方に“やって欲しいんですけど”って言われて特に続けるつもりもなくっていうのが最初。“私が?”とは思ったんですが、ご縁でお声がかかったので。震災後は即、被災地に自家発電持って、暗幕張って、小さい幼稚園で生で吹き替えしたり、福島の大きな避難所の前で、野外でやったりとか。そういうことが出来るって本当にうれしいですね」


■ 何か世の中に“還元”したい、メンタル面もすごく上がった

「世の中に還元したいっていう気持ちが自然に出てきたこともありまして。ラブジャンクスっていうダウン症の子供達がエンターテインメントするスクールがあって応援しています。HIPHOPとかすごく上手に踊るんですよ、見てるとワクワクしてきます。発表会に行くと、頭を“ガーン”となぐられるくらい感動します。BGブランドというオリジナルTシャツやグッズなどを販売しているブランドを立ち上げてまして、その収益金でラブジャンクスを応援しています。自分のライブの時にも物販したりしていますが。たくさん応援することは出来ないけど、自分達で切磋琢磨してデザインして何かを作って、販売するということは、自分にも意義があるなと。そこで学ぶこともありますし」

何かのきっかけで方向が変わることはよくある話だが、それをつかむのか、そのままやり過ごすかは人それぞれ。戸田さんはそれを“つかんでいった”ようだ。
「具体的には5年ぐらい前でしょうか、“講演会に行く”とか。そういう話は以前からチラホラとあったのですが、自分では“そういうのって先生とかノーベル賞を取った人がやるんじゃないんですか?”って(笑)。それがある時、熱心に言って下さる方がいて。“人生観とか生き様とかそういう話でいいですから”って。去年「なにわバタフライ」再々演がありまして“ひとつ乗り越えた感”がありました。それは、自分のライブだったり、講演会だったり、ですが、そういった芝居とは関係ない活動を通じてメンタル面がすごく上がったんですよ。「なにわバタフライ」の稽古始まりの時に三谷幸喜さんが“なんか、全然違うね”っておっしゃって、自分でも“あれ?”って。自分一人で出て行く時の怖さは変わらないんですが、何か、自分を信じることが出来るようになったっていうのでしょうか。初演も再演も出来なくって泣いてばっかりだったんですが、それが初めて泣かずに出来た。それは他のことをやってたから、これは自分にとって全て必要なことだったんだなって。私には必要な“筋肉”だった、ライブ活動、講演会等全てが、ね。去年、身に染みてそう思いました」
今回の2人芝居もかなり質の高い舞台が期待出来そうだが、戸田さんは「でも意外と成長してないです(笑)大人ぶって大人しくやる必要はないと(笑)」  「八月のラブソング」でバージョンアップした“新・戸田恵子”さんに遭遇してみたくなった。

「八月のラブソング」
作:アレクセイ・アルブーゾフ
原題は DO YOU TURN SOMERSAULTS
作家のアレクセイ・アルブーゾフ(1908〜1986)はロシアンニューウェーブの戯曲家。代表作としてこの作品の他に「イルクーツク物語」「私のかわいそうなマラート」等がある。

[物語]
1968年、ある夏の昼下がり。バルト海に面した港町リガの海辺に近いサナトリウム。主任医師である彼は診察室を抜け出し、大きな栗の木の下で新聞を読んでいた。
そこに現れた派手な身なりの女性。彼女は、彼が今朝診察室に呼び出したはずの患者だった。サナトリウムでの奇妙な行動を注意すると身勝手な理由を付けて全く耳を貸そうとしない。彼はその居丈高な態度にすっかり憤慨してしまう。「
なんて女だ!」価値観も理念も性格も全く違う二人は共通の会話が出来ずにすぐに喧嘩になってしまう。「なんて人なの!」理解し合うことなど到底不可能だと思っていた二人だったが、何度か顔を合わせ言葉を交わすうちにやがて・・・

「八月のラブソング」
2013年3月8日〜24日
下北沢・本多劇場
/http://homepage2.nifty.com/katoken/ チケット好評発売中。

キンダー・フィルム・フェスティバル
/http://www.kinder.co.jp/index.html

ラブジャンクス
/http://www.cafe-athome.com/

ウェブショップ rumors
/http://rumors.jp/openers_special/list.html?af=gran
「BGブランド」は戸田恵子×植木豪のスペシャル・コラボによるオリジナル・ブランドです。
《animeanime》
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