2013年劇場アニメは引き続き高水準 作品数は2012年を上回る勢い | アニメ!アニメ!

2013年劇場アニメは引き続き高水準 作品数は2012年を上回る勢い

2013年も劇場アニメは、引き続き活況を呈しそうだ。しかし、劇場アニメの全体の方向性には、やや変化も見られる。オリジナル作品、作家性の強い大作映画が減少している。

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■ 活況呈した2012年の劇場アニメ

2012年は、劇場アニメが活況だった。イベント上映も含めたアニメの劇場上映は拡大傾向で、ヒット作も多い。興行収入が40億円を超えた作品は、『ONE PIECE FILM Z』、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』、『おおかみこどもの雨と雪』の3本がある。小規模から中規模の劇場公開でも予想を上回るヒット作も多く、劇場アニメビジネス快調をエンタテイメント業界に印象付けた。
作品の内容面でも、多様性に飛んだ秀作の多い年となった。毎年最新作が公開される定番シリーズ、人気のテレビ番組からの映画化に加えて、劇場作品として新たに企画された映画が多かった。『ももへの手紙』や『虹色ほたる』、『アシュラ』、『伏 鉄砲娘の捕物帳』、『ねらわれた学園』、『花の詩女 ゴティックメード』、『009 RE:CYBORG』などである。日本のアニメの豊かさが、劇場という場で花開いた。

2013年も劇場アニメは、引き続き活況を呈しそうだ。12月30日の段階でまとめた2013年公開予定の国内劇場アニメ作品は、30本を超える。昨年の同時期にまとめた際は30本、一昨年は22本なので、この数字だけを見ると2013年の国内劇場アニメは2012年と同じかそれを上回る可能性が高い。
現在、未発表の作品も多く、それは各配給会社のスケジュールの多くが8月ぐらいで途切れていることからも分かるだろう。春から夏にかけての公開ラッシュが秋以降も続けば、実際の公開作品数は30本を大きく超えて来る。

2013年 劇場アニメ公開作品リスト
/http://animeanime.jp/article/2012/12/31/12551.html
(こちらで詳細を確認ください。)

■ 2013年の最大注目は高畑勲『かぐや姫の物語』、宮崎駿『風立ちぬ』

2013年の劇場アニメの最大のトピックスは、スタジオジブリによる2本の映画だ。日本を代表する二人の巨匠、高畑勲、宮崎駿がそれぞれ『かぐや姫の物語』、『風立ちぬ』を監督する。配給は東宝、夏シーズンに2本同日公開となる。アニメだけでなく、映画業界全体に大きな影響を巻き起こしそうだ。
公開時期は未定とされているが、2013年には大友克洋監督の『火要鎮』(「ショート・ピース」)も登場する可能性が強い。巨匠の競演は見ものになりそうだ。

スタジオジブリの作品はいずれも作家性の強いオリジナル作品だが、劇場アニメ全体の方向性には、やや変化も見られる。オリジナル作品、作家性の強い大作映画が減少している。
『魔法少女まどか☆マギカ』や『TIGER & BUNNY』の成功もあり、テレビ放映で人気を得たヤングアダルト向けの劇場アニメが急増している。『スタードライバー』、『とある魔術の禁書目録』、『花咲くいろは』、『STEINS;GATE』、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、『薄桜鬼』などである。
2012年は、作家性の強いオリジナル作品には興行が芳しくない作品も少なくなかった。公開規模を拡大せず、目に見えるコアファンに手堅く作品を届ける方向は今後も強まりそうだ。

作家性の強さを打ち出した作品は、比較的小規模な映画に移りそうだ。2012年上半期に公開される新海誠監督の『言の葉の庭』、吉浦康裕監督の『サカサマのパテマ』、さらに『ハル』や『サンタカンパニー』などもここに加えていいかもしれない。
小規模な公開では、2012年にアニメの配給に力をいれたティ・ジョイに加えて、東宝配給のセカンドブランドとしての役割も見えてきた東宝映像事業部の動きが活発化している。松竹やワーナーブラザース映画、角川映画もアニメ配給に依然積極的だ。一方で、クロックワークスの配給は以前ほど目立たず、配給会社間の競争激化を感じさせる。

■ 課題も多い2013年、プレキッズ映画に注目

もうひとつの新しい流れはプレキッズ作品である。小学校入学前の子ども向けの映画は、これまで興行が難しいとされてきた。子どもの忍耐力が長時間持たず、上映出来る時間帯も限られているからだ。
しかし、プリキュアシリーズやアンパンマンシリーズの好調もあり、近年、プレキッズに向けた映画が増加傾向にある。シネコンの多角的な活用の流れも反映していること、さらに上映にダンスなどを持ち込みライブイベント化することでこれを可能にしている。

傍からは好調に見える劇場アニメだが、実際には順風満帆というわけでない。ヒット作が出る一方で、興行が期待値に届かなったケースも少なくない。作品の当たり外れはエンタテイメントビジネスにつきものだ。
しかし、劇場アニメの製作費は一般的に実写映画よりかなり大きいから、大作の不発は出資企業に大きな痛手だ。もし、作品の供給が需要を大きく上回れば、採算ラインを下回るケースが増え、関係会社の業績にも影響を与える。
さらに2013年のテレビアニメ制作本数が、すでに2012年を上回る勢いであることが伝えられている。これに劇場アニメの制作も加わると、2013年にはアニメ制作がかなり増加することになる。アニメ業界の制作受注体制も問われる。大量生産でクオリティ低下すれば、ビジネス以前に、アニメの観客の失望を招くことになるからだ。
[数土直志]
《animeanime》
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