2011年にスタートした海外向けのマンガ配信ポータルJMangaが再びコミコンに帰ってきた。7月12日、JMangaは今回で2回目となるパネルイベントをサンディエゴのコミコンで開催、日本マンガファンにそのサービスをアピールした。JMangaは日本のマンガ出版社がデジタルコミック協議会を通じて協力した日本マンガの正規配信のポータルである。2011年8月にスタートした。今年のコミコンのパネルでは、日本からも多くのゲストが訪れた昨年のサービス開始発表の様な派手さはなかった。しかし、来場者も多く、マンガファンから関心を集めていた。ファンの間でのJMangaの認知度が上がっていることも反映しているだろう。新作タイトルの発表では、『ゆるゆり』や『魔探偵ロキ』、『同棲愛』、『サンケンロック』、『GARDEN』などが挙げられた。JMangaがスタート当初に掲げた、海外では紹介されることが少ない良作の正規翻訳配信が実行されている。また、JMangaは、今後も、積極的に新作を投入していく方針も説明された。その大きな力になりそうなのが、今回、明らかにしたTokyopopとデルレイで出版した後、現在は絶版になっている講談社の旧作タイトルをJMangaでデジタルマンガとして提供するものだ。配信を利用した絶版作品の活用で、タイトル数の拡大を目指す。このほかにも大きな発表が相次いだ。ひとつは今年秋からのスマートフォン対応の決定である。AndroidとiOSの双方の対応で、モバイル化が進むマンガ購読の需要をつかむ。もうひとつは、文化庁と協力して実施するグローバル規模の翻訳コンテストである。いくつかの課題作品が与えられ、その英語翻訳を募集し、優秀者を表彰する。課題タイトルは明らかにされなかったが、集英社の少女マンガ、講談社と双葉社からそれぞれ青年マンガが提供される。募集はJMangaのポータルサイトを利用し、対象は日本を含む全世界、さらにプロ、アマを問わない。国の協力を得るのは、マンガ翻訳者の発掘・振興を通じたてマンガ文化の普及に狙いがあると見られる。コンテンスト実施の発表は、会場からの反応もよく、積極的な質問もあった。一方で、JMangaの抱える問題も少なくない。パネルの後半で行われたトークでは、こうした課題が取り上げられた。ゲストの一人、デブ・アオキさんは、翻訳の質が向上するなどJMangaの努力に成果が出ているとする。しかし、ポピュラータイトルが少なく、米国で主流の少年向け、少女向けのタイトルも少ないと指摘する。さらに決済機能がクレジットカードでは、子供たちには利用しにくいと話した。こうした議論からは、JMangaが青年向けなど新しい読者の開拓を目指す一方、逆にそれが子供たちの利用を遠ざけている現状が理解できる。ビジネスとしての採算性も考えれば、今後は日本マンガファンのボリューム層である子どもたちを取り込むための施策も必要になりそうだ。[数土直志]
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