フランス・アニメーションレポート by 伊藤裕美 第3回 アヌシー・コンペティションを振り返る | アニメ!アニメ!

フランス・アニメーションレポート by 伊藤裕美 第3回 アヌシー・コンペティションを振り返る

短編、卒業制作・学生作品、テレビ/委託制作の各部門のコンペティションに延べ164本、短編のアウトオブコンペティションに40本、長編部門に20本が選ばれた。

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フランス・アニメーションレポート by伊藤裕美 第3回
アヌシー・コンペティションを振り返る

取材・文: 伊藤裕美(オフィスH)


■アヌシー2012 コンペティション

短編、卒業制作・学生作品、テレビ/委託制作の各部門のコンペティションに延べ164本、短編のアウトオブコンペティションに40本、長編部門に20本(コンペティションとアウトオブコンペティション各10本)が選ばれた。
独立系アニメーション作家の上映会のスピリットを継承する短編部門、そして若い才能を顕彰する卒業制作・学生作品部門には、それぞれ49本と55本の新作がノミネートされた。
短編部門の最優秀賞クリスタルがフランスの『Tram(原題 トラム)』(Michaela PAVLATOVA(ミカエル・パヴラトヴァ)監督)、審査員特別賞がフランスとカナダ合作の『Edmond était un âne(原題 ロバのエドモンド)』(Franck DION(フランク・ディオン)監督)、そして観客賞がカナダの『Second Hand(原題 セカンドハンド)』(Isaac KING(アイザック・キング)監督)に贈られた。

フランスと日本の合作で津波に襲われる日本人をPCゲームのキャラクターのように描いた『The People Who Never Stop(動じない)』(Florian PIENTO(フロリアン・ピアント)監督)が初監督賞に当たるJean-Luc Xiberras賞を受賞した。
手書き、オブジェクトやパペットのコマドリ、実写合成、そしてCGアニメーションなど、今回もさまざまな技法を楽しめたが、コンピュータを主に用いた2作が最優秀賞クリスタルと審査員特別賞に決まった。
特別賞のデンマークの『Seven Minutes in the Warsaw Ghetto(原題 ワルシャワゲットーでの7分間)』はパペットアニメーションだが、顔の表情を作るためモーショングラフィックスが用いられた。監督のJohan OETTINGER(ヨハン・ウィッティンガー)は27歳ながら、独学でアニメーションを習得し、これまでに数々のストップモーション・アニメーションと実写映画を手掛け、CMやミュージックビデオで経験豊富な若手監督だ。受賞は逃したが、フランス、ベルギー、オランダ合作の『Oh Willy...(原題 オー ウィリー!』(Emma DE SWAEF、Marc James ROELS共同監督)もフェルトを用いたパペットアニメーションで、オランダとザグレブのアニメーション・フェスティバルではグランプリを受賞している。

短編部門にノミネートされた韓国の『Herstory』(Jun-ki KIM監督)は印象に残った。日本軍の従軍慰安婦にされた韓国女性の証言を元にした3DCGアニメーションの短編で、花開くコリア・アニメーションの運営に携わり、韓国のインディーズアニメーションに詳しい三宅敦子氏によると、桂園芸術大学が卒業制作として学生にチームで取り組ませるメッセージ性の強い作品だ。
CGIの水準が高く、年々亡くなっていく、元慰安婦の戦中戦後の体験をアニメーションにして若い世代へ受け継ごうとする韓国の人々の真摯な姿勢が伝わる。証言といっても、アニメーション制作のために語ってくれる女性は少なく、学生たちは過去の資料映像などを参考に脚本を練ったという。

第4回へ続く


アヌシー国際アニメーションフェスティバル
/http://www.annecy.org/


[伊藤裕美]
オフィスH(あっしゅ)代表。
外資系ソフトウェア会社等の広報宣伝コーディネータや、旧エイリアス・ウェーブフロントのアジアパシフィック・フィールド・オペレーションズ地区マーケティングコミュニケーションズ・マネージャを経て1999年独立。海外スタジオ等のビジネスコーディネーション、メディア事情の紹介をおこなう。EU圏のフィルムスクールや独立系スタジオ等と独自の人脈を持ち、ヨーロッパやカナダのショートフィルム/アニメーションの配給・権利管理をおこなう。
/http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp
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