また、演出の時間と空間の演出においては、『かみちゅ』での主人公3人が夏の最中に縁側でゴロンと横になっているシーンを使い、ジュースを飲むシーンとグラスが空になっている間に風鈴などを挿入することで夏の時間がやさしく経過している様を現すことが出来ると説明した。また、感情の演出では、『かみちゅ』の中で石油ストーブに火をつけるシーンを言及。このシーンを入れることで石油の臭いまで再現出来るとその演出意図を解説した。 最も興味深かった演出技法が「視点の移動」。『R.O.D The TV』における、ねねねとアニータによる屋上での会話シーンを例に、観客が誰を主観的に見るべきかを潜在的に誘導する技法について説明した。ここでは「まず最初にねねねを登場させ、視聴者の意識をねねねに集中させた」と舛成氏。それにより後でアニータのクロースアップがあっても視聴者は心理的にねねねを追っていると解説した。その後、画面の隅にいたねねねがシーンから外れたが「ここではじめて視聴者の意識が心理的にアニータに移る」と舛成氏。その後、アニータが屋上から離れることで今後は自然に視聴者の意識がねねねに戻っていくと解説した。総じて「演出をするうえでフィルム感を崩さずに演出意図を気づいてもらうことが重要。誘導しているということを気づかせないというのは技術としては難しいが是非学んでもらいたい」と舛成監督はその重要性について強調した。