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立命館大「宇宙ショーへようこそ」でセミナー(2)

スーザン・ボイルは、作品に多くの人たちが出会うためのストーリーにつながる

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スーザン・ボイルは、作品に多くの人たちが出会うためのストーリーにつながる

spaceshowkyoto6.jpg 一方、野村信介宣伝プロデューサーは、宣伝業務を「作り手と観客との橋渡し」であると定義し、一見、様々な取材に同行したりする派手な業務に見えつつも、インタビュー時のタイムキープから飲み物出し、プレスリリース文のチェック等業務内容は地味な作業が非常に多い事を説明した。その後、ある作品を元に具体的な一日のスケジュールを示し自身の業務内容について解説。宣伝プロデューサーにとっての一日は朝3時からはじまるとしその激務をあらわにした。また、キャッチコピーの重要性について解説。キャッチコピーを「キービジュアルを補足してイマジネーションを掻き立てるために重要なもの」であると定義したうえで、作品を理解させると同時に作品の雰囲気が感じられる文章でなければならないとした。その意味で「修学旅行は宇宙でした」が数多くある候補の中から選ばれたのは修学旅行が醸し出すどきどき感が、主人公である小学生の視点に立っている点であるとその意図を説明した。またメディア戦略について言及。複数存在するアニメ―ション専門雑誌でもその客層によって提案する記事内容も変化させている旨を言及。紙媒体からテレビ、ラジオ、ウェブにいたるまで、全て自らが仕込みから展開まで進めていかないと物事が進まないという点を指摘した。また声優へのインタビューについては「取材のための絵作りも重要」と野村氏。声優の魅力自体も作品視聴の可能性を高めるとして、取材時のヘアーメイクの手配からより良いコメントを得るために声優さんに持っていくお土産まで気を配るとし、あらゆる形でより多くの人に見てもらうための施策を練っている様子が垣間見れた。

spaceshowochikoshi.jpg 最後は、『宇宙ショーへようこそ』のプロデューサーである落越友則氏が登壇。いまや「プロデューサー」はあらゆるところで用いられているが、落越氏はまず世のあらゆる作品は芸術作品であると定義したうえで、プロデューサーは「芸術作品を芸術とだけ言っているのではなく、皆に見せられるようにしたうえで、ビジネスにすること」と定義した。また作品のプロデュースは様々な人の力で成り立っているとし、作品づくり自体は、監督が、宣伝には、宣伝担当、営業には営業がとそれぞれの役割を果たしている人たちがいるので、その人たちひとりひとりにガソリンを与えてアクセルを入れていくことが出来ることが重要だとした。従って企画を立てていくうえで一番熱量を高く保つべきなのがプロデューサーであると指摘した。また、「作る人と買う人の間にストーリーを紡いでいくことも重要」と落越氏。今回のベルリン映画祭への公開を端緒とし、その後の英国映画協会での招待スクリーニングやシドニー映画祭オフィシャルセレクションでの出品といった『宇宙ショーへようこそ』の国際先行展開についても、劇場用作品で且つオリジナルという点や、新世代の才能とも言える舛成孝二監督の劇場用映画初監督作品という事実と重なり合うことで「単に面白い」と声高に叫んでいる以上の物語を紡いでいく一環であると述べた。
 一方で、人と仕事をしていくうえで重要なのは「関わる人にチャンスをあげられるか」と指摘。今回舛成監督と仕事をするうえでもこれまで足掛け5年に渡り2本の作品を作ってきた中で次の作品が舛成監督にとって相応しく、且つエキサイティングな事になるかをまず吟味してからオファーしたという。またスーザン・ボイル起用については、「日本の風景を数多く描いてはいるものの世界中の人に見てもらいたい、楽しんでもらいたいという思いから」と落越氏。そこで、世界中の人達が既に親近感を持っており、且つ優れたアーティストでもあるスーザン・ボイル氏は、「作品により多くの人たちに出会うためのストーリーにつながる」とした。

spanceshowkyoto7.jpg 以上が180分にわたる講演の全貌だが、3人の講演はコンテンツ制作全般でも生かせる知見に富んだ内容であった。また、聴講者もそれについては実感しており、講義終了後も複数の学生が3人を囲むように並び質問を投げかけていた。一方で、冒頭20分の先が気になると言った声も複数あがっており、その思いが公開時にどのような効果を生むのかも期待される。

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『宇宙ショーへようこそ』 /http://www.uchushow.net/
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