課題を抱えるJoost、Bittorrent 転換点のP2P配信ビジネス | アニメ!アニメ!

課題を抱えるJoost、Bittorrent 転換点のP2P配信ビジネス

レビュー そのほか

 海外に続いて日本でも映画やアニメなどの権利保有者が、インターネットを通じて番組を配信する例が増えている。番組配信を開始する際に大きな課題になるのが、配信を行うサイトや配信する方法である。
 動画配信サイトが一般化する中で、これまで今後大きな成長をすると思われてきたP2P型の配信ビジネスに異変が起きている。P2P型配信サービスの2大企業であったJoostとBittorrentのサービス運営が困難に直面しているからだ。

 P2P型の動画配信サービスは動画配信の際にかかる負荷を専用サーバーに依存することなく、サービス利用者のPCに分散する。このため接続PCが増えることで、低価格で大容量、そして質の高い画像の配信が可能になる。
 この技術が大きく注目された理由のひとつに、Bittorrent社の開発したソフトがある。Bittorrentはもともと日本でのWinnyのような存在で、ソフトの技術への評価が高い一方で、インターネット上で権利者未許諾コンテンツの違法アップロードに多く利用されていた。日本でも海外アニメファンがアニメの違法なファイル交換に利用するソフトとして知られている。

 しかしBittorrentは2007年にベンチャーキャピタルから資金を調達し、合法的な動画配信サービスを目指した。Bittorrentの強みはサービス開始時から既に多くのユーザーが同社のソフトを保有し、その扱いに慣れていた点である。(その多くは海賊行為利用のためであったが)
 ところが2008年12月に入り、Bittorrentがベンチャーキャピタルから予定していた第3ラウンド(3回目)の1700万ドルの資金調達が全面キャンセルになったことが明らかになった。さらにこの11月にはCEOが辞任しており、大幅な人員削減も行われている。同社の経営は、重要な局面に立たされているようだ。

 一方のJoostは、同じくこのP2Pの技術を利用した格安インターネット電話サービス スカイプの開発者チームによって設立された会社である。Bittorrentと同様に、安く、高速で動画配信を行えるサービスとして一躍注目を浴びた。
 ところがJoost は12月18日に、突然このP2P型の配信サービスからの撤退を発表した。既に今年9月になって開始していたYouTubeやHuluと同様のフラッシュ型の配信サービスに移行するとしている。

 Joostによれば今回の決定で、ブログへの貼り付けなどのウェブサービスを提供出来ること、iPhone向けのアプリケーションを提供できることなどを挙げている。さらにサイトを観るための専用ソフトのダウンロードがなくなることで、利用者にとってはより扱い易いサイトになることも大きい。
 より扱い易いサイトになることで、ユーザーにとっても魅力は増すとみられる。しかし、一方で、Joostは他の動画配信サイトとの差別化手段がなくなる。そして、まだブロードバンが十分普及していないために、フラッシュ型の配信よりP2P型の配信を利用していたユーザーを切り捨てることになる。既にアクセス数でYouTubeやHuluに遅れを取っているJoostの今後の展開は楽ではない。

 海外でP2P型配信ビジネスが直面する課題は、日本にも少なからぬ影響を与える可能性がある。日本ではP2P型配信ビジネスはまだ十分普及していない。むしろ2007年8月に設立されたP2Pネットワーク実験協議会を通じて普及を目指している段階である。
 実際に昨年から今年にかけて、主にアニメ番組を利用して様々な実験が行われている。『SAMURAI7』や『空の境界』といった人気作品がこうした実験に登場したのを覚えている人もいるだろう。
 しかし、今回のJoostとBittorrentの例で明らかになったのは、配信技術の問題ではなく、ビジネスプレイヤーの規模の大きさやユーザビリティといったP2P配信を行ううえでのビジネスモデルの問題である。 
 日本でも少なくともアニメの配信については、P2P型以外の配信ビジネスが既に成立している。このなかでP2P型配信を普及させるには、技術的な問題と同様にビジネスモデルの検討が重要になってくるだろう。

Bittorrent  /http://www.bittorrent.com/
Joost  /http://www.joost.com/

P2Pネットワーク実験協議会 /http://www.fmmc.or.jp/p2p_web/
《animeanime》
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