「smoothing プラグ開発の現状」TAFシンポジウム レポート
東京国際アニメフェア2008で、アニメーション制作ソフトのなかでの独自のプラグイン開発の現状と意義を紹介するシンポジウム「制作現場からの提言2008 「smoothing プラグ開発の現状」が行われた。
このシンポジウムは、「プロフェッショナルのための デジタルア
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このシンポジウムは、「プロフェッショナルのための デジタルアニメマニュアル」の監修などを行うデジタルアニメ制作技術研究会が主催する。同会は、毎年デジタルアニメ分野の制作技術における個別のテーマを取り上げて、現状と今後の進むべき方向を討論している。
そして、今回は、映像処理の段階で線を滑らかにするスムージングについて取り上げた。東京工科大学の三上浩司さんの司会でプロダクション I.Gの安芸淳一郎さん、アニメーション監督高木真司さん、高橋プロダクションの刀根有史さん、東京工科大学の研究員の渡辺賢悟さんらが登壇した。
いずれもデジタルアニメーションの専門家で、基本ソフトに後付で付加されるプラグインの問題の重要性や開発の可能性が紹介された。
討論の内容はやや専門的な部分もあった。しかし、全体ではプラグインの独自開発の重要性や、実際に開発する過程と結果については、制作の専門家でなくても十分理解が出来るものとなった。
また、アニメ制作の最終段階の撮影で使用するソフトAfter Effectと併用されるスムージングのためのプラグインソフトの開発事例が今回特にフォーカスされている。
スムージングのプラグインを特に取り上げるのは、昨年、これまで無料でユーザーに提供されていたスムージングのプラグインソフトKP-SmoothをAEプラグインが有料化する方針を打ち出したことが理由である。
このソフトが既に業界スタンダードになっていることもあり、この結果アニメ制作現場では多いスタジオで年間数百万円の新たなコストが発生することになった。
高木真司氏は、今回のsmoothingの有料化から、制作における重要なプラグインをひとつのソフトに依存する危険性を指摘する。今回は、突然の有料化であるが、このほかにもサポートの停止や、ソフト自体がなくなる可能性もあるからである。
また、今回の出来事の背景には、アニメ制作会社自身が、独自のソフトを開発出来ないと思われたこともあるのでないかと指摘する。
そのうえで、今後のあるべき姿として、代替手段を持つこと、特定のソフトに依存しない制作が必要なのでないかと述べた。さらに、ソフトの開発については、とにかくやってみることが大切なのでないかと話す。
そして、実際に渡辺賢悟氏が、昨年11月中旬からこの開発を進めた。12月中旬にはα版、1月中旬にはβ版、2月中旬には正式版をリリースしている。また、完成したプラグインソフトは既に無料で配布も行われている。
開発に伴う様々な苦労はあるが、専門家外には短期間で独自に開発出来ることに驚きを感じる。逆に言えば、こうした開発に欠けているのは、知識でなく、開発のための人材や時間なのかもしれない。
今回のような動きが今後もさらに広がっていく可能があるかどうか判らない。しかし、独自のソフト開発部門が少ないアニメーション業界では、大きな意味のある動きでないだろうか。
デジタルアニメ制作技術研究会 /http://www.teu.ac.jp/clab/DAM/index.html