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『マンガ出版を核にコンテンツビジネスを展開』

日本ベンチャー学会3月セミナー『マンガ出版を核にコンテンツビジネスを展開』 
2005年3月10日 東京・一ツ橋
主催:日本ベンチャー学会

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日本ベンチャー学会3月セミナー『マンガ出版を核にコンテンツビジネスを展開』 
2005年3月10日 東京・一ツ橋
主催:日本ベンチャー学会

講師: 保坂嘉弘氏(㈱マッグガーデン代表取締役社長)
コメンテーター: 秦信行氏(國學院大学経済学部教授)

 アニメとマンガ、ゲームのビジネスは互いに重なり合い、メディアミクスの展開などでも密接な関係にある。そのため、これら3市場は関連市場として同じものとして語られることが多い。しかし、実際にこれらの市場を調べてみると、3市場はそれぞれが異なった特徴があり、同一のものとして扱うには多くの困難さを感じる。
 そうした意味で、今回の保坂氏はこの3市場全てに関連してビジネスを行って来たという点で貴重な存在である。保坂氏はこれまで元漫画家志望から漫画原作者、ゲーム会社エニックスでプロデュサーを行った後、社内でコミック事業部を立ち上げるというユニークな履歴を持っている。さらにその後、独立してマンガ出版とアニメ事業を手掛ける会社マッグガーデンを設立した。また、保坂氏の会社マッグガーデンのマッグはManga、Anime、Gameの頭文字が組み合わされたものである。
 
 こうした履歴を背景に語る保坂氏の話には、新鮮な発見が多かった。例えば、漫画原作とアニメの関係である。保坂氏によれば、エニックスが漫画原作のアニメ化の際に製作投資を行った最初の会社であるという。それまで、出版社は漫画のアニメ化の際は、窓口手数料を差し引かれた収益の中から原作料を受け取るだけで、製作委員会は参加せずアニメ化作品のリスクを負っていなかった。出版社(漫画家の取り分も含まれている)は、漫画のアニメ化においては、リスクを持つことがなく一定の利益が確保されていたわけである。
 また、新刊雑誌にもかかわらずエニックスの『コミックガンガン』が、優れた作家を多数集めることが出来た理由は次のように説明した。当時、ファンタジー作品はメジャーな雑誌からは人気がないと描く場が与えられなかった、結果としてファンタジーが中心のエニックスの雑誌には、ファンタジーを描きたい優秀な作家が集まったという。
 さらに、漫画作品のアニメ化については、タイミングの重要性を力説された。人気のタイミングもあるし、例えば、コミック本が5、6冊たまらなければ会社としてのメリットはない経済上の問題も存在するようだ。しかし、本当に良い作品は、周りから自然にアニメ化の話が立ち上がってくるという。

 現在の会社の事業については、上場することでプレッシャーは感じるようになったそうである。しかし、これまでの自分のスタンスを変えないことが一番だとする。現在、盛んになって来ているコンテンツファンドについて自社は手掛けるつもりはないという。それは、作品のクレジットに名前が載るといったような楽しみとして投資するのならば良いが、コンテンツの投資はリスクが高いのであまり一般の投資家に向いていないのではないか説明した。同様に、M&Aについても、自分達で事業を立ち上げていくことが楽しいので、あまり興味はないと述べた。
 一方で、現在増えているコンテンツ関連大学、大学院については、クリエーター育成の点では非常によいことだと高く評価していた。講演全体は、保坂氏の事業に対する熱心でかつ真摯な姿勢が伝わるとても良いものであった。

/マッグガーデン 
/日本ベンチャー学会 
《animeanime》
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