■原作を大切にしながら、新しい『レイアース』を作る
――それぞれのキャラクターを演じるうえで、とくに意識したことや、こだわったポイントがあれば教えてください。

佐倉:オーディションの資料に「平成版の『レイアース』を意識してもしなくてもかまいません」と書かれていて、私たちに委ねられているように感じ、またスタッフの皆さんも“令和の『レイアース』”としていろいろな可能性を探しているんだろうなと感じました。
私は自分の声の個性が強いほうだと思っていて、人からもよくそう言われるので、ただ過去作に寄せるだけでは、その可能性を超えられない気がしたんです。もちろん私も「光=椎名へきるさん」というイメージがあるのですが、今回は令和版として、真正面から新しい光を作ろうという気持ちで臨みました。
オーディションでは、原作のコマを自分で資料にまとめて、表情や動きまで全部確認できる状態で準備していったんです。でも、一つだけ何度もリテイクになったシーンがありました。おそらく、5回くらい。オーディションで5回もリテイクを食らうことって、なかなかないんですよ。
そのとき、最後に急にピンと来て「私は原作を忠実に再現しようとしているのですが、もっとそこから膨らませた表現のほうがいいということですか?」と伺ったら、「そうです。一度やってみてください」と言われ、思い切って表現を広げて演じたテイクで「これでいきましょう」と言っていただけました。その経験から「スタッフの皆さんも原作を大切にしながら、新しい『レイアース』を目指しているんだ」と実感できたことが、自分にとって大きな勇気になりました。
大久保:海は3人の中で一番背が高くて、お姉さんやお母さんのような立ち位置にも見えるので、最初は少し大人っぽく演じていたんです。でもオーディションでは「お母さんにはしないでほしい」と言われて。「一番忘れないでほしいのは、みんな14歳の女の子なんだということ。精神的には少し大人びていても、お母さんのようにはならないでほしい」というディレクションをいただきました。
私は原作が本当に大好きで、実はコミックスもオリジナル版、新装版、愛蔵版の3種類持っています(笑)。だからこそ、表情まで頭に入っていて、そのイメージに引っ張られてしまう部分もありました。その一方で、先ほど言った「あまり嫌な子にはしたくない」というディレクションも最初にいただいていたので、そのバランスがすごく難しかったです。
でも、第1話では逆に「一度そのことは忘れて、もっとキツく言ってください」とも言われて……。例えば、風に「なんで血液型まで言うのよ」とツッコむシーンも、オーディションでは柔らかめだったんですが、本編では「もっとストレートに疑問をぶつけていい」と。ただ、その後はちゃんと切り替えて、ツンとした美人らしさを意識する。海はクールに見えて実は表情豊かな子なので、そのメリハリは最後まで意識していました。

高橋:風は、おっとりしていて不思議な子というのがベースにありつつ、「人と少しズレている感じ」を出してほしいというディレクションをいただきました。オーディションでは「もっとズラすとどうなる?」という形で、どんどんアプローチを試させてもらって。どこまで周囲と噛み合わない存在として成立させるのか、という部分を探っていた印象があります。
ただ、風は常にズレているわけではなく、彼女の中ではちゃんと理屈が通っているんです。だから会話も基本は自然に成立していますし、「このシーンだけもう少しズラしてみよう」というように、アフレコでは細かなさじ加減を一緒に作っていただきました。
――AnimeJapanのステージで「アフレコ時にセリフのイントネーションについてや、原作、前アニメとの向き合い方について、皆で話し合っている」とお話しされていましたね。具体的にどんなやり取りがあったのでしょうか?
佐倉:異世界の用語がたくさん出てくるので、「平成版ではどう言っていたっけ?」という確認はよくしていましたね。
大久保:最初は「ザガート問題」でしたよね(笑)。
佐倉:「ザガート↓」なのか、「ザガ↑ート↓」なのか(笑)。
大久保:そうそう(笑)。でも実は、どちらでも間違いではなかったんです。ただ、私たちとしては平成版をそのまま踏襲するわけではないけれど、あえて違うことをする必要はないよね、という話になって。視聴者として見ていても「前はこう言っていたのに今回は違うんだ」と、そこだけが気になってしまうと作品に集中できなくなることがありますよね。だから「だったらザガートはこの言い方でいきましょう」と、皆で相談していました。
佐倉:「意味のある変化と、意味のない変化をちゃんと見極めよう」という意識は皆で共有していました。意味のない変化はできるだけ作らないように、音響面でもとても気を付けていましたね。それと今回は、脚本でも「なるべく原作のセリフを変えない」ということが一つのテーマになっていたので、「ここ、原作と少し違いますけど何か意図がありますか?」と確認することもよくありました。「だったら原作に戻しましょう」という調整も現場で何度も行われていて、皆Kindleで原作を開きながら収録していました(笑)。
大久保:そうなんです(笑)。収録しながら「あれ、このセリフ原作と違わなかったっけ?」って、その場でパッとKindleを開いて確認して。『レイアース』は固有名詞も多いので、「原作ではこうなっていますけど、どうしましょう?」と、私たちから相談することもあれば、スタッフさんから確認が入ることもありました。キャストとスタッフの両方で、一緒に原作を確認しながら作っていた印象があります。
――高橋さんはオーディションを受ける際に初めて『レイアース』の原作を読んだとのことですが、このお2人の原作に対する熱量が大きな支えになっていたのではないでしょうか。

高橋:本当に心強かったです。聞けば何でも返ってきますし、「一緒に考えよう」と寄り添ってくださるので、すごく安心感がありました。皆が作品を“自分ごと”として考えていて、「自分のシーンだから」「違うシーンだから」という線引きがないんです。それがすごくいいチームだったなと思います。
佐倉:そうそう。「ここ、自分のシーンじゃないんですけど……」って言いながら話し始めたり(笑)。
大久保:ありましたね(笑)。
佐倉:「このセリフ、順番が逆じゃないですか?」とか、「ここだけ原作にはないセリフが追加されていますね」とか。「この追加されたシーンは、原作のどのコマのニュアンスを拾っているんですか?」という話も、よくしていました。
高橋:どのコマを拾うかで、キャラクターの表情や感情も変わってきますからね。意図的に追加されているセリフもあるので、「前のコマの感情を受け継ぐのか、それとも次のコマにつながるニュアンスなのか」を、皆で確認しながら演じていました。
大久保:時系列が入れ替わっている場面もありましたしね。でも、それも映像として美しく見せるために意味があって変えているんだと思うので、その意図を自分たちの中でも整理しながら「ここはどういう気持ちなんだろう」と確認していました。
また、原作が1993年の作品ということもあって、今の感覚だと少し懐かしく感じる言い回しもあるんです。でも、それも作品の世界観の一部なので、よほど問題になる表現でない限り、その空気感は大切にしていました。
佐倉:映像は最新のアニメーション技術で描かれていて本当に美しいのですが、物語の舞台は当時のままなんですよね。
大久保:そう、1993年のままなんです。
佐倉:だからこそ、その時代ならではの言葉遣いや空気感とのバランスも、皆で意識しながら作っていました。
大久保:「今作はもしかしてスマホを持っていたりして!?」なんて妄想もしましたけど(笑)、ちゃんと当時の時代設定のまま始まるので、その世界観も楽しんでいただけると思います。









