ライターが「これ読んでほしい!」と思うマンガを紹介する「アニメ!アニメ!」連載コーナー「おすすめマンガ手帖」。劇場3部作の第1弾が公開され、早くもその第2弾が2026年8月14日より上映される『機動警察パトレイバーEZY』に関連し、今回は『究極超人あ~る』を語ります!
『究極超人あ~る』とは、1985年に「週刊少年サンデー」にて連載がスタートした学園コメディマンガ。原作者は「ゆうきまさみ」先生はかつてクリエイター集団「ヘッドギア」にも所属しており、『機動警察パトレイバーEZY』ではキャラクター原案を務めました。
『究極超人あ~る』は1987年に一旦の最終回を迎え、全9巻の単行本でその幕を閉じましたが、現在は掲載誌をビッグコミックスピリッツなどに移して不定期で読み切りを発表しており、その一部を単行本第10巻として2018年に発売しました。

※以下の本文には“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意ください。
◆「変わり者しかいねえ!」個性的なキャラクターたち

物語は私立春風高校を舞台にした学園コメディとなっており、主人公の「R・田中一郎(「あ~る」)」が所属する光画部(こうがぶ/写真部)を中心にカオスな日常が展開。個性的な部活動、生徒会とのじゃれあい、撮影旅行でのドタバタ劇など、個性的な面々がさまざまな騒動を起こすというものです。
おもしろいのはその登場人物です。たとえば「あ~る」はつねに冬服の学生服をまとっているアンドロイド。大好物は白米で、どこか間の抜けたところに愛嬌を感じます。
先輩の「鳥坂先輩」は生まれながらの騒動屋。光画部が巻き起こす騒動はほぼ彼が元凶であり、「おもしろければ何でもよし!」の精神で、ルール無用のトラブルを起こします。「あ~る」はそんな彼のオモチャ。鳥坂先輩に言われるまま、いつも騒動の先頭に立たされていました。
そのほか生徒会長の「西園寺まりい」はキレ者の優等生ながら、いつも光画部(おもに鳥坂)の騒動に巻き込まれて「いつか目にもの見せてくれる!」と執念を燃やす、いわゆるライバルキャラ。もちろん登場人物は全員、性格に難ある変わり者しかいませんから、一見、常識人ながら悪ノリするヒロイン「大戸島さんご」や、用務員で光画部の大先輩「毒島」など、誰かがつねに騒動の業火に油をつぎ足します。
◆おもしろさのポイントは「アニメ化不可能!?の絶妙な会話劇」

筆者の中で特に印象的なエピソードとして、部活没収から新部室獲得に至る流れです。
他のクラブの備品(ボール等)をこっそり着服しては、写真部らしい活動もせずに遊び惚けていた光画部に対し、生徒会長の西園寺はとある計略を実行に移します。それは部室と備品を一挙に差し押さえるという、廃部寸前の処遇でした。
逆にそれを面白がった光画部OBは、現役部員たちに部室攻防戦を指示。この結果で部室が戻る確証など1%も存在しないにも関わらず、「なんか面白そう」「粘るだけ粘って春風高校の歴史に名を残せ」と学校全体を巻き込む大騒動を繰り広げます。
その手段とは、エアガンで武装して部室に立てこもるというもの。しかしただ立てこもるだけでは芸がないからと、校長先生がルールを提案しました。つまりサバイバルゲームを提案したわけです。
そして10日以上の大騒動の末に光画部は敗北して部室が没収されるのですが、彼らがそんなところで終わるはずがありません。旧校舎にいい物件(封印された部室)があることを知ると、そこを自分たちの根城にしようとします。しかしそこには先客として美少女の幽霊がいて、またまた騒ぎに……! 結局、その幽霊も部員に加えることで無事に新たなスタートを切るのでした。
騒動そのものも面白いのですが、いまなお支持される理由は、やはりテンポのいい会話劇にあります。本作は何度もアニメ化のオファーがありながら、実現したのは1991年に1本だけリリースされたOVAのみ。理由は「アニメでは表現しきれないから」とゆうき先生がなかなかOKしなかったためだそうです。
たしかに、ひとつのコマの中で展開を描くことができるマンガと違い、アニメにすると同じシーンでも間延びするリスクがあります。よほどうまく演出しない限り、マンガと同じものをアニメで表現するのは難しいでしょう。そんなわけでOVAも続編が出ずに1度きり。『究極超人あ~る』を楽しむなら、やはりコミックスに限ります。
◆パトレイバーとのクロスオーバーも!

さてそんな本作ですが、ゆうき先生が描く他作品とクロスオーバーしたこともありました。その第一が『鉄腕バーディー』です。
『鉄腕バーディー』とは、美女宇宙人「バーディー」が地球人の「千川つとむ」の肉体と同化し、宇宙人犯罪者を取り締まるSF作品。2008年には『鉄腕バーディー DECODE』のタイトルでテレビアニメ化されました。『究極超人あ~る』ではシルエットのみではありましたが、光画部が撮影旅行に行った際、海でバットを投げ返すというちょっとしたシーンに登場。『鉄腕バーディー』ではその投げ返す場面を描き、どちらも読んでいる読者を楽しませました。
またゆうき先生によるコミック版の『機動警察パトレイバー』では、光画部の面々が通行人として登場。イングラムに乗り込んだ野明たちと、ほんのわずかながらクロスオーバーを果たしました。なおその当時は『究極超人あ~る』の連載が終了していたことから『鉄腕バーディー』のような別視点はなし。そのかわり、シルエットではなく本人たちがしっかりと描かれていました。
さらに『究極超人あ~る』第10巻収録の第9話では、「あ~る」の開発者である成原博士が「多次元位相転換 変調交雑生成機」を発明。その影響で次元が融合し、本来は異なる世界であるはずの『究極超人あ~る』『鉄腕バーディー』『機動警察パトレイバー』のキャラクターたちが一堂に会すという夢の共演を果たしました。
「やあ」をするイングラムに、「あ~る」にツッコミを入れるバーディー。鳥坂先輩のペースに巻き込まれる一同の姿は、なんとも微笑ましい光景です。
連載が終了しても、あのエンディングから続く物語として度々復活している本作。個人的には「あ~る」の妹であるR・高峰秀子(アール・デコ)が、兄とは違った意味でおもしろい雰囲気を出しているので、もっと彼女の活躍を見たいところ。もちろん鳥坂先輩とのセットでないと面白さは半減してしまうでしょう。
『究極超人あ~る』は現在、全9巻および続編の10巻を電子書籍などで販売中。ビッコミなどのマンガサイトでは3話まで無料で読むことができるので、未読のかたはぜひあの“まぬけ時空”に足を踏み入れてはいかがでしょうか。








