アニメ!アニメ!では本作の放送開始を記念し、中村雪役を演じる佐倉綾音さんにインタビューを実施。消防官や特別救助隊員といった実在する職業とも結びつくキャラクターを演じるにあたり大切にしたポイントや、自身の仕事における“挑戦”をテーマに話を聞いた。
[取材・文・撮影:吉野庫之介]
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「感動」という言葉だけでは表すことのできない様々な想い
――消防官や特別救助隊員の現場を描いた本作ですが、原作を読んだ感想は?
私たちが日常的に触れているのはサイレンの音だけで、その先に失われてしまいそうな命があり、自らの命を賭してそれを守ろうとする人がいる。決して初めて知ることではないはずなのに、漫画を通してその現実を目の当たりにしたときに、とても苦しい気持ちになりました。さらに、命を救った先には「感動」という言葉だけでは表すことのできない様々な想いがあって。
普段何気なく生活をしていると「私たちとは関わりのない世界のことだ」と思い込みがちになってしまうのですが、消防官さんも私たちと同じく雑談をしたり、食事をしたり、休憩をしたりする。けれども、出動時には即座に気持ちを切り替えて命と向き合われている。そのことに改めて感謝の気持ちを覚えました。
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――実在する職業ということで、ある種ノンフィクションに近いような役柄ですが、役作りではどのようなアプローチをされましたか?
作中で壁と壁の間で手足を突っ張って身体を浮かせる訓練をするシーンがあり、その状態でどれくらい声が出るのかを実際に試してみたのですが、そもそも私と雪ではついている筋肉量がまったく違うので、あまり参考にはならなくて(笑)。ただ、どの部分に力が入るのかといったことは理解できたので、私よりも身体が鍛えられ、洗練された女性をイメージして収録に臨みました。
あとは隊員の方が実際の訓練や出動準備をされている映像を拝見し、返事の仕方にも独特な文化を感じたので、その動画を参考にしながら普段それを言い慣れている人が発するような声を身体と喉に叩き込みました。
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――感情面でご自身の経験と重なる部分はありましたか?
これは私なりの解釈なのですが、訓練中に一度自分を全否定されるような感じが見てとれて。それはアニメーション中の教官の厳しさにも現れているのですが、自分が養成所生や劇団生のような立場だったときに感じた、“正解の見えない状態のまま先に進むしかなかった感覚”に似ていて、自分の古傷が痛む感じがしました(笑)。
――その感覚は学校の部活動や職場でのやりとりなどでも感じることがあるかもしれませんね(笑)。
一方で、みんなが和気あいあいと過ごしているシーンもあるんです。命がけで挑む職業の訓練生といえど、いち人間としての生活や日常、それぞれの個性といったものが見えたときに、ちょっと安心する気持ちにもなって。それと同時に、そんな彼らが命をかける現場へ行かなければならないことへの過酷さも感じました。
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――この作品を通じて「伝わったらいいな」と思うことを教えてください。
人の命の尊さを失礼のないように描いた作品なので、エンターテインメントとして楽しんでいただきながら、普段は目を逸らしているような防災意識や身を守るための知識も学んでいただけるかと思います。明日我が身に降りかかるかもしれないことが題材になっているので、ぜひご自身の身近な方ともご一緒にご覧いただけたら嬉しいです。
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変化を肯定してくれたファンの存在
――特別救助隊を目指す雪たちのように、佐倉さんご自身も昨今のご活躍を拝見していると、既存の枠組みを超えた“新たな挑戦”を多くされているように感じますが、何かきっかけがあったのですか?
これまで私は「声優」の枠組みから離れないように仕事をしてきたのですが、数年前、信頼するスタッフさんに昨今の声優の仕事の範囲についてどう思うか聞いてみたんです。きっとそれに対して否定的な言葉が返ってくるだろうと思っていたのですが、その方は「色々なチャレンジをして、そこで得た学びをアフレコスタジオにフィードバックしてもらえるのはとてもありがたいことだ」と仰って。その考え方に目から鱗が落ちたんです。
様々な役を演じるうえで“経験値”というのは宝物で、変なプライドやエゴでそれを得るチャンスを閉ざしてしまうことは、自分のお芝居の幅を狭めてしまう可能性がある。もちろん自分のなかで許容範囲はあるのですが、ここまでなら踏み出してもいいと思えるラインまでは足を進めてみようと。
そして先日、そのスタッフさんとまたお話しをする機会があり「最近色々なチャレンジする仕事のなかで不満に思うこともあるだろうけど、その前に必ず“学びがあった”と言いながら帰ってくるし、その海原の方が楽しくなって帰ってきたがらなくなる声優もいるなかで、ちゃんとアフレコスタジオに帰ってくるからすごい」と言っていただけて、自分が思い描いていた歩みができているのかなと実感することができました。
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――以前のインタビューで「顔出しの役者さんの出す音の種類は声優と違う」というお話しをしましたが、挑戦のなかでそういったものは得られましたか?
たくさん得て、たくさん傷つきました(笑)。最近実写のお仕事もさせていただいたのですが、完成した作品を見たときに自分の声がマイクに乗りすぎていて、周りから浮いていたんです。それもポジティブに捉えれば学びなのですが、もう少しどうにかなったかもしれないという悔しさもあって。その音は今後の声優人生に必要ではないものかもしれないのですが、突破策が見つからず、今ももがいています。
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――そうした様々な経験が佐倉さんの軸となる声優としてのお芝居に還元されていくなかで、お仕事もハイブリッド化していって。
側からはそう見えるのかなと。私は決して別の居場所を求めているわけではなく、声優のお仕事を守るためにやっていることで、色々なお仕事をいただくなかで私が選び取っているものは1割以下ですらあるのですが、それが表に出たときに「なんでも屋」のように見えてしまう。
そんなとき、その私の変化をすごく喜んでくださるファンの方がいたんです。きっと離れてしまうファンの方もいるだろうし、失望させてしまうこともあるかもしれないという覚悟も込みでお仕事を選択してきたのですが、「昔の綾音ちゃんだったら絶対にやらなかったことだと思うけど、踏み出そうと思ってくれた勇気が嬉しかったよ。」とメッセージをくださって。
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――第三者視点から観測される自身の挑戦や変化が必ずしもプラスに映るとは限らないし、たったひとつのイメージ変化によって前提条件が覆ってしまうこともある。そんななかでも信じて肯定してくれる存在がいるというのは素敵なことですね。
すごいことですよね。私は自他ともにあまり変化をポジティブに受け止めきれないことも多いので、そんなファンの方の存在がとてもありがたくて。「生きていてよかった」と思えた瞬間でした。
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TVアニメ『め組の大吾 救国のオレンジ』
初回放送日時:2023年9月30日(土)17:30~ ※一部地域を除く
放送局:読売テレビ・日本テレビ系列全国ネット
■スタッフ
原作:曽田正人・冨山玖呂「め組の大吾 救国のオレンジ」(講談社 「月刊少年マガジン」連載中)
監督:むらた雅彦
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
キャラクターデザイン:鶴田眸 / 藪野浩二
シリーズ構成:藤田伸三
音響監督:高寺たけし
音楽:住友紀人
■キャスト
十朱大吾:榎木淳弥
斧田駿:八代拓
中村雪:佐倉綾音
纏定家:中村悠一
山上恭介:稲田徹
長谷部:阿座上洋平
渡:岩崎諒太
ナレーション:津田健次郎
初回放送日時:2023年9月30日(土)17:30~ ※一部地域を除く
放送局:読売テレビ・日本テレビ系列全国ネット
■スタッフ
原作:曽田正人・冨山玖呂「め組の大吾 救国のオレンジ」(講談社 「月刊少年マガジン」連載中)
監督:むらた雅彦
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
キャラクターデザイン:鶴田眸 / 藪野浩二
シリーズ構成:藤田伸三
音響監督:高寺たけし
音楽:住友紀人
■キャスト
十朱大吾:榎木淳弥
斧田駿:八代拓
中村雪:佐倉綾音
纏定家:中村悠一
山上恭介:稲田徹
長谷部:阿座上洋平
渡:岩崎諒太
ナレーション:津田健次郎
(C)曽田正人・冨山玖呂・講談社/「め組の大吾 救国のオレンジ」製作委員会