そこで今回、日本最大級の電子書籍サイト「コミックシーモア」協力のもと、『ヲタクに恋は難しい』二藤宏嵩役や『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』(※コミカライズ版 原作:EVIL LINE RECORDS、漫画:城キイコ、シナリオ:百瀬祐一郎)観音坂独歩役で知られる“マンガ好き声優”伊東健人にインタビュー。
マンガの原体験やマンガとの接し方を聞きつつ、令和に残したいマンガ3作品を上げてもらった。
「アニメはあまり観てこなかった」という伊東は、そのぶんマンガに夢中だったという。そんな伊東が令和でも読み継がれて欲しいというマンガとは――。
[取材・構成=松本まゆげ/撮影=小原聡太]
■影響されたのは70'sのあの名作
――まずは、伊東さんの“マンガ歴”から聞きたいです。いつ頃から読んでいたか覚えていますか?
伊東:「自分はマンガを読んでいるんだ」と自覚したのは幼稚園くらいです。当時は「コロコロコミック」と「コミックボンボン」をよく読んでいて、友人と貸し借りしていたのも覚えています。ほかにも、書店とかで見かけたマンガの表紙がカッコよかったりすると、親に「あれ買って!」って頼むことも多かったですね。
――比較的早い段階で読んでいたんですね。
伊東:そうかもしれないですね。そういう生活をしていると、月刊誌の出るスピードが遅く感じました。とくに月刊誌の単行本だと、半年に1冊出ればいいほう。だから待ち遠しくて、単行本の奥付に書いてある初版を確認しては「○月に出てるから、次の巻は来月に出るだろ!」みたいなことをしてました。
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――かなり入れ込んでいましたね。では、お小遣いで最初に買ったマンガは?
伊東:それだと『魔法陣グルグル』(衛藤ヒロユキ)です。当時の財政状況だと厳しいんですけど、なんとか頑張って単行本で全巻そろえましたね。同じ頃に『金田一少年の事件簿』(原作:天樹征丸/金成陽三郎、漫画:さとうふみや)もそろえたかな? 一旦連載が終わったところまでのコミックスですけどね。
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――読むジャンルは、少年マンガ全般といった感じですね。
伊東:そうですね。親戚に男が多いですし、弟もいるので自然とそういう環境になっていました。あ、でも、母親が読んでいたマンガが家にあって、それも読んでいました。
――というと、女性向けのマンガですか?
伊東:はい。小学生のときに読んだら話を理解できなかったんですけど、中学生になってなんとなく何が描かれているのかわかってきて。そこから少女マンガという世界も理解できるようになりましたね。
――同じマンガでも、かなり違うものですよね。
伊東:今思うと、女子向けのマンガのほうが進んでるなって思います。「ちゃお」すごいな!って思いますもん。男の子なんて2ページに1回ウ○コが出てくるのに(笑)。
――印象深い少女マンガもぜひ教えてください。
伊東:いろいろ読んだので挙げづらいんですけど、今思いだすのは『ペンギン☆ブラザーズ』(椎名あゆみ)と『怪盗セイント・テール』(立川恵)です。男の子でも読みやすかったなという記憶があります。読んだのは中学生くらいかな?
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――そのくらいの年齢だと、クラスでもマンガの話題になったりしますよね。男女問わず。
伊東:そうなんですよ。だから少年マンガも少女マンガも教室に散らばっていました。……本当はいけないんですよ?
――ただ、その年頃だと興味が勝るかもしれません。
伊東:いつの間にか、クラスのなかでは貸し借りが盛んになっていました。そのおかげでいろんなジャンルのマンガを読めたんですよ。「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」という王道が主軸にありつつ、「週刊少年チャンピオン」を読んでみると「こんな作品が!」ってのめり込んだりして。
『グラップラー刃牙』(板垣恵介)とか『ドカベン』(水島新司)とかがそうでした。
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――『ドカベン』は、1972年から連載されていた作品ですよね。
伊東:僕が生まれるはるか前から続いています。リアルタイムで読んでいたのは、「プロ野球編」だったんですけど、それが面白くて興味がわいて「これよりもっと前の巻はどんな話なんだろう」と遡って、イチから読んでみました。
実は『ドカベン』って、もともと野球の話じゃないんですよ。野球でトラウマを抱えた主人公が柔道をはじめるところからはじまるので。
――そうなんですね。
伊東:そういうのも面白くて探っちゃいます。あとは、読んだマンガの作者のルーツをたどることもあります。「この人はあの人のアシスタントをしていたんだ」とか。そうして行き着いたのは手塚治虫さんだったんですけど。
――行くところまで行きましたね……!
伊東:手塚治虫さんの作品って、図書室や図書館に置いているので触れやすいんですよね。で、自分のお金で買えるようになったら買っています。
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――ここまでいろんな作品が挙がりましたが、最も伊東さんの人生に影響を与えた作品というと何ですか?
伊東:難しいですね……。でも、やっぱり小・中学校と野球チームに所属していたので、『ドカベン』の影響はあると思います。
練習のときはよく殿馬一人という登場人物のマネをしました。殿馬は変わった打ち方をするんですよ。「秘打・白鳥の湖!」とか言って、バッターボックスでくるくる回りだしたり、バットのグリップの先に当ててバントしたりするので、それに挑戦してましたね。まあ、打てないんですけど(笑)。
――小中学生といえば、自分にもできると思いがちなんですよね。
伊東:そうなんですよね。『るろうに剣心 ―明治剣客浪漫譚―』(和月伸宏)の「二重の極み(相楽左之助が会得する特殊なパンチ)」とか、挑戦した人かなり多い技なんじゃないですか? さも努力すればできるよっていう描き方だから、夢を持っちゃうんですよね(笑)。そういうところでも影響は受けていると思います。
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