【金ロー】悪の美学の集大成―「るろうに剣心」志々雄真実はどうしてこんなにカッコいいのか? | アニメ!アニメ!

【金ロー】悪の美学の集大成―「るろうに剣心」志々雄真実はどうしてこんなにカッコいいのか?

敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第27弾は、『るろうに剣心』より志々雄真実の魅力に迫ります。

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「るろうに剣心京都大火編/伝説の最期編」(C)和月伸宏/集英社 (C)2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
  • 「るろうに剣心京都大火編/伝説の最期編」(C)和月伸宏/集英社 (C)2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
  • 「るろうに剣心伝説の最期編」(C)和月伸宏/集英社(C)2014「るろうに剣心伝説の最期」製作委員会
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  • 「るろうに剣心京都大火編/伝説の最期編」(C) 和月伸宏/集英社 (C) 2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
  • 「るろうに剣心京都大火編」(C)和月伸宏/集英社(C)2014「るろうに剣心京都大火」製作委員会
  • 『るろうに剣心 京都大火編』(前編)と『るろうに剣心 伝説の最期編』(後編)
  • 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』(C)和月伸宏/集英社
    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第27弾は、『るろうに剣心』より志々雄真実の魅力に迫ります。

※一部作品のネタバレがあります。

『るろうに剣心』シリーズ最大の悪役は、やはり「京都編」の志々雄真実だろう。

全身包帯だらけの異形の姿に、大軍勢をまとめるカリスマ、己の信念をブレずに貫く姿勢に実力も兼ね備えており、原作者曰く「悪の美学の集大成」だ。

自分の進むべき道を知り、迷いなく邁進する志々雄の姿に、悪にも関わらず憧れてしまう人も多いのではないだろうか。志々雄は、まさに悪の魅力が凝縮されたキャラクターだ。

「るろうに剣心京都大火編」(C)和月伸宏/集英社(C)2014「るろうに剣心京都大火」製作委員会

■復讐よりも野望を優先する志々雄


志々雄真実が優れた敵役となったのは、復讐鬼ではなかったからだろう。

彼は、幕末に影の暗殺者として多くの要人を殺害したとされている。明治新政府にとって都合の悪い情報をたくさん握っていたために殺されかけたという過去を持つために、当初は復讐が目的かと思われていた。

しかし、主人公の剣心と初めて対面したとき彼は、明治政府への復讐なんて考えていないとあっさりと言い放った。それどころか、「油断したら殺される、殺される前に殺れ」という教訓を教わったと明治政府には感謝しているとすら言うのだ。

全身を焼かれて包帯だらけの身体にされても、志々雄には恨みがない。なんて寛大な心の持ち主だろうと勘違いしそうになる。

志々雄の行動動機は復讐とは関係がない。では、彼を駆り立てるものは何かというと、自身の野望の実現である。真の目的を聞かれて、彼は豪快にこう言う。

「幕末ってのは、戦国時代以来300年を経てやって来た久々の動乱なんだぜ。そんな時代に生まれ合わせたのなら、天下の覇権を狙ってみるのが男ってもんだろ」。

要するに、彼は織田信長や豊臣秀吉、あるいは徳川家康のように天下統一を狙う器の大きい人物なのだ。夢追い人と言ってもいいかもしれない。志々雄が戦国時代に生まれていたら、その統率力とカリスマで大活躍していただろう。生まれる時代が違えば、悪役よりも主人公の方が似合うキャラクターだったのかもしれない。

「るろうに剣心伝説の最期編」(C)和月伸宏/集英社(C)2014「るろうに剣心伝説の最期」製作委員会

■弱肉強食の美学


志々雄は自身の野望のために行動しているが、そのために誰が犠牲になろうと気にしない非情さを持ち合わせている。いや、非情というより、これは彼の信念と言うべきかもしれない。志々雄の信念とは「弱肉強食」だ。

志々雄はよく「強ければ生き、弱ければ死ぬ」と言う。自然界の食物連鎖の法則にも似た考えだが、この世界は確かにそういう側面がある。この信念があるから、明治政府に殺されかけても恨みを持たないのかもしてない。そこで殺されたとしても、それは自分が弱かっただけだと考えているのだろう。

「弱肉強食」という考え方は、否定したくても否定しきれない部分がある。弱いものを助けるために力を使う剣心でさえ、結局は力で相手を超えないと、弱いものを助けられない。弱い人を助けるために力を使うべきだと言葉だけで主張しても意味がなく、その主張は強い人間じゃないと言えないのだ。

どんな主張を掲げようと、勝たねばそれを通せない。だから、剣心だって強くなろうとし、志々雄を負かそうとする。それは結局「強ければ生き、弱ければ死ぬ」ということではないだろうか。志々雄は物語の敵役なので、最後は剣心に倒される。

しかし、勝負に負けたとしても理屈の上では負けてはいないとも言える。剣心は物理的に志々雄を止めることはできても、志々雄の信念を止めることはできなかった。結局は、実力で志々雄を倒すことで止めたのだから、それは「弱肉強食」の営みに沿った行為だ(それは剣心自身一番よくわかっているのだが)。

これは、少年マンガの宿命でもある。主人公は強くなければならない。強い奴にみんな憧れるからだ。そして、敵役は主人公に倒される宿命なのだ。その意味で、みんな志々雄の信念はどこか正しいと感じている。その名、志々雄「真実」が示す通り、敵役にして世の摂理を体現する圧倒的な存在である。


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(C)和田伸宏/集英社 (C)2014「るろうに剣心 京都大火」製作委員会
(C)和田伸宏/集英社 (C)2014「るろうに剣心 伝説の最期」製作委員会

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