最終回放送を控え、ますます注目を集めるTVアニメ『錆喰いビスコ』。荒廃した世界を舞台に、錆び風に苦しむ人々を救うための戦いが描かれています。
すでに全話のアフレコを終え、あとは最終回の放送を待つばかりの赤星ビスコ役・鈴木崚汰さん。ビスコを思わせる赤いジャケットを身に着け、「よろしくお願いします!」とにこやかな表情で取材場所に登場しました。
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さっそく作品の見どころやビスコへの想いなどを熱く語る鈴木さん。
しかしあれほど過酷なバトルが待ち受けていようとは、このときはまだ知るよしもありませんでした。
『錆喰いビスコ』最終回直前インタビューと、白熱の三本勝負をお楽しみください。
※本稿はTVアニメのネタバレを含むため、11話視聴後に読むことを推奨します。
[取材・文:ハシビロコ 撮影:小原聡太]
「不器用なだけなんです」ビスコが内に秘めた優しさ
――本作に初めて触れたときの印象はいかがでしたか?
鈴木:最近は学園もののように等身大のリアルな心情を描くアニメが多いので、荒廃した日本を舞台にした作品は珍しいと思いました。いつもと違う世界に飛び込むことができる、わくわく感があります。愛や戦いの熱量も高く、少年マンガを読んでいるかのような高揚感を覚えました。
――原作を読んだときに、演じたいと思ったキャラクターは誰ですか。
鈴木:ビスコ役のオーディションを受ける前提で原作を読ませていただいたのですが、それでも演じたいと思ったのはビスコでした。今まで僕が演じたキャラクターは根暗でボソボソしゃべる人が多かったので、ビスコのように感情や声をアウトプットする役に興味があって。「本当は活発な演技もできるのに、まだ役として担当したことがない!」と思っていたからこそ、赤星ビスコは絶対に演じたいと思いました。
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――ビスコは叫ぶ台詞も多く、確かにこれまで鈴木さんが演じてきた役とはまた違ったイメージです。
鈴木:叫ぶときもビスコは荒くれ者のように、がなりを多くしました。正統派主人公ではないものの「味があってとてもいいな」と思っています。
ビスコは伝え方がへたくそなので勘違いをされるのですが、ただ不器用なだけなんです。悪役に見えるけれど悪役ではなくて、本当は少年らしい一面も持っています。もし錆が蔓延していない世界に生まれていたら、普通に心優しい少年として育っていた未来もあったのかもしれません。ジャビが言っていたように、ビスコが修羅に落ちてしまったのは世界の環境のせいでもあると思います。
ビスコは声優としても「おいしい」役
――ビスコの名前を聞いたときの印象はいかがでしたか。
鈴木:おもしろい名前だと思いましたが、それをビスコに直接言ったら「おい笑うんじゃねえ!」って怒られてしまいますね(笑)。ビスコは礼儀や礼節を重んじるキャラクターでもあるので、そこは言わないようにしないと。
でもビスコは「おいしくてつよくなる」ことができる、いい名前だと思います。ビスコもミロも、名前のイメージを体現するかのように強く育ちました。
――鈴木さんが思うビスコの「おいしいポイント」や「強さを感じるポイント」はどこですか?
鈴木:赤星ビスコを食べたことがないので味のおいしさはわかりませんが(笑)、僕としてはとてもおいしい部分のあるキャラクターです。挑戦させてくれる役柄ですし、原作のイメージにとらわれすぎずに殻を破らせてくれます。原作よりも語尾を荒くして言葉を発するなど、自分なりの解釈で演じた部分も受け入れてもらえてありがたいです。
ビスコの強さについて、身体能力の高さはみなさんすぐにわかったと思います。でも、きっと一番強いのは精神力。大切な人が死にそうな状況でも、ビスコはずっと戦い続けてきました。心身ともにダメージが蓄積され、それでもなお立ち上がることができたのは、ビスコの精神が強いからだと思います。
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――とくに印象的だったシーンはありますか。
鈴木:9話のラストでビスコがミロに「笑え。俺が、そうしたみたいに」と言葉を投げかけたシーンはとくに印象に残っています。戦いの中で笑っていたビスコも、心の中ではどこかつらい部分があったのだと気づかされて。ビスコが今までどれだけ頑張ってきたのかが伝わってきました。
――ミロ役の花江夏樹さんと共演していかがでしたか。
鈴木:花江さんは僕がデビューする前から多くの作品で主役を張っていた先輩で、いつかアニメでもがっつり共演したいと思っていたので、いい機会をいただけて嬉しかったです。
アフレコでミロの声を聞いたときは、「パウーやビスコを守りたい」という芯の強さがより伝わってきました。花江さんの声と音圧がミロの強さをしっかり表現していて、より完成されたキャラクターになったと思います。
ミロの演技では、10話と11話でビスコが憑依したかのような声が、とても記憶に残りました。ビスコが死んでしまったので僕はアフレコ現場にいなかったのですが、共演者の方が「すごかったよ!」と連絡をくれるほど迫真の演技で。完成した映像を見たときは、たしかにビスコそのものだと思いました。あそこまで僕の出したビスコのニュアンスを汲み取って演じていただけたことが、とても嬉しかったです。
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――アフレコを休んでいる間の心境はいかがでしたか。
鈴木:役としては死んだので心境も何もないですけど(笑)、ビスコが眠りについているときくらいは僕も喉を休めようかな、と静かに過ごしました。思い返せば主人公が途中で死ぬなんて、珍しい作品ですよね。
――本作ではビスコとミロでEDの「咆哮」も歌っています。レコーディングはいかがでしたか。
鈴木:実はレコーディングの時点では、お互いのことをまったく気にしないで歌っていたんです。僕はとにかくビスコとして歌う意識が強くて、まさしく「咆哮」のような歌い方を心がけました。あとから収録した花江さんも、僕のことは気にせずに歌っていたと聞いています(笑)。
でも完成した音源を聴いてみると、想像以上に2人のハーモニーがきれいで驚きました。荒々しいビスコと、静かな闘志をたぎらせるミロの声が重なって、いいバランスになったと思います。
鈴木崚汰VS『ビスコ』生物三番勝負!
ビスコたちが立ち向かう相手は人間だけではありません。軍用エスカルゴ空機やトビフグなど、巨大で強靱な身体に進化を遂げた異形生物たちとの戦いも本作の見どころです。
そこでここからは、『錆喰いビスコ』に登場する異形生物と鈴木さんがバトル! 錆び風が吹きすさぶ世界に適応した異形生物をどう倒すのか、ビスコに代わり、鈴木さんに実演していただきましょう。
鈴木:なんで僕を戦わせようとするんですか! まあ、でも受けて立ちましょう(笑)。
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第1試合 VS軍用エスカルゴ空機
初戦の相手は2話などに登場した軍用エスカルゴ空機。巨大な白金マイマイを武装させた兵器で、通常の矢はまったく効かないほどの高い防御力を誇ります。エネルギーの貯蔵量は飛び抜けており、重い装備もなんなく運ぶことが可能です。
鈴木:あいつらは空からゲロを吐いてくるし、ミサイルも飛んでくる。厄介ですね……。
しばし考え込む鈴木さん。しかしその間にも、空からは軍用エスカルゴ空機が近づいてきます!
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鈴木:いったん隠れ……いや、物陰から観察します! いくら無尽蔵なエネルギーを持っていようと、生き物なんだから長期戦に持ち込めば疲れるときが来るはずです。軍用エスカルゴ空機が補給のために地上に降りてきたタイミングを狙います。
持久戦の末、ようやく地上に降りてきた軍用エスカルゴ空機。ここから鈴木さんはどう戦うのでしょうか。
鈴木:塩を撒きます!
……塩?
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鈴木:巨大とはいえ、エスカルゴであることに変わりはありません。きっと30kgくらい塩を食らえば身体が縮むはず!
生物の特徴を逆手にとった作戦。30kgもの塩も、日頃のトレーニングで鍛え上げた鈴木さんの筋肉なら軽いものです。
鈴木:小さくなったエスカルゴに近づいて首根っこをガッとつかみ……。
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ビターン!!!!!!
ここで鈴木さんの強烈な膝蹴りがクリーンヒット! キレのある動きに、小さくなった軍用エスカルゴ空機は為す術もありません!
鈴木:イージーです!
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第2試合 VSトビフグ
2戦目の相手は5話に登場したトビフグ。巨大な身体で空を飛び、強靱な顎で建物も食い尽くしてしまいます。しかも大量発生をする厄介な相手です。
鈴木:こいつらも飛んでますよね。そしてでかくて多すぎる……。
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軍用エスカルゴ空機には楽勝だった鈴木さんも、数の力には敵わないかもしれません。
鈴木:だったらレインボーブリッジにおびき寄せて戦います!
レインボーブリッジといえば、お台場にある巨大な吊り橋。そこを封鎖してまで、鈴木さんはどう戦うのでしょうか。
鈴木:吊橋に張り巡らされたロープでトビフグの動きを封じます。やつらはでかいので、あのすき間をきっと通り抜けられないはず……!
魚を捕らえる網の代わりに、レインボーブリッジを利用する戦法。またもや頭脳を活かした作戦が光ります。
鈴木:あとは針を持って近づいて……。
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ツンツン。ツンツン。
鈴木さんが針で静かにつつくと、トビフグが風船のように破裂! 巨大な身体の中にはガスが詰まっているため、傷には弱いのです。
鈴木:イージーです! 花江さんにトビフグ鍋を作ってもらって食べましょう!
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第3試合 VSアクタガワ
最終戦の相手はテツガザミのアクタガワ。強固な甲羅と大きなハサミは攻防ともに優れ、高い機動力も持ち合わせています。普段はビスコたちの相棒として力を貸していますが、敵に回ると厄介な存在です。
鈴木:ただのカニだったら横歩きしかできないので楽勝ですが、あいつは前にも動けるのが厄介です。
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冷静に相手を分析する鈴木さん。相棒の特徴をよく理解しているようです。
鈴木:でも、しょせんカニなので焼いてしまえばいいでしょう!
たしかに熱には弱いですが、問題は焼く場所。アクタガワの巨大な身体を乗せるためには、広い敷地が必要です。
鈴木:まずキャンプ場に行って、巨大なキャンプファイヤーを用意します。この時点ではまだ点火しません。
鈴木:次にキャンプファイヤーの向かい側にテツガザミ(メス)を置いておきます。
鈴木:アクタガワがメスに気をとられてキャンプファイヤーの上に乗った瞬間に……。
鈴木:脚のすき間から火を入れて……。
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ファイヤー!!!!!!!
巨大なカニが、みるみるうちに丸焦げに。奮闘を終えた鈴木さんは、軽く肩で息をしながら先勝報告をしてくれました。
鈴木:イージーです! でもごめん、アクタガワ……!
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強敵との三番勝負を終え、見事生き残った鈴木さん。まだまだ戦い足りないのではと、ほかに相手にしてみたい生物を聞いてみました。
鈴木:いま戦闘民族扱いされていますか?僕がこの企画を考えたわけではないですからね! 皆さんの無茶ぶりです!
それでも作中の異形生物を振り返り、どう戦うか脳内でシミュレーションしてくれました。
鈴木:まず、筒蛇なんてもってのほかですが(笑)、沼ブタくらいなら戦えそうです。沼ブタはきっとまっすぐにしか走れないので、「ブヒー!」と突っ込んできたところを交わして背面投げ。あとは焼き豚にしていただこうと思います。
鈴木:ほかに戦えそうなのは霜ウサギ。耳を手でひっつかんで……。
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ビターン!!!!!!
鈴木:地面に霜ウサギをたたきつければ勝てます。
身振り手振りを交えて戦いの様子を再現する鈴木さん。その姿は、ビスコたちのようにたくましく見えました。
心の錆を落とす秘訣は「ファンからのプレゼント」
――三番勝負、お疲れさまでした。白熱したので疲労や錆がたまったかと思います。鈴木さんは心の錆を落とすために普段どのようなことをしていますか。
鈴木:入浴剤入りのお風呂にゆっくり浸かっています。以前ラジオ番組で「お風呂が好き」と話したら、ファンの方々が入浴剤をプレゼントしてくださる機会が増えました。その入浴剤に込められた応援の力も借りて、毎日心の錆と身体の垢を落としています。どの入浴剤も気に入っていますが、とくににごり湯系が好きです。
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――声優として演技力を錆び付かせないために実践していることはありますか。
鈴木:滑舌練習は高校時代から毎日続けています。ほかには表現を豊かにするするために、先輩のものまねをすることが多いです。最近は津田(健次郎)さんが『錆喰いビスコ』5話ラストの予告で言っていた「火傷に注意だぜ」をずっとまねしていました。聞いた瞬間に「かっこよすぎる!」と痺れて。津田さんの独特な語り口調は生半可な気持ちでは習得できないので、日々練習しています。
あと、ジャビの「ウヒョホホ」という特徴的な笑い方もいいですよね。(斎藤)志郎さんは声の圧が常にあるので、僕もあんな風になりたい、と憧れています。
――『錆喰いビスコ』で鈴木さんがとくに気に入っているキャラクターは誰ですか。
鈴木:みんな好きですが、5話に登場した夫婦は印象的でした。まさか敷島を島田(敏)さんが演じるとは……! しかも悦子役は大原(さやか)さん。声を聞いた瞬間に「このキャラクターが普通なはずがない!」と思いました。出番が短時間だったのは本当にもったいない。
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メインキャラクターでは黒革が好きです。もともと津田さんのお芝居が好きだったこともありますが、声が入ると原作で感じていた黒革の悪さが何倍にも膨れ上がって不気味になっていきました。津田さんはあえて台本の文字通りに読まない部分が多くて、黒革なりの遊び心を感じます。アフレコのテストでも津田さんは自由に演じているのに、本番はバシッと最適解を出してきて、さすがだと思いました。「黒革でしゅ」のようなアドリブも多く、以前Twitterでつぶやいたところ(※)津田さんも気さくに反応してくれて嬉しかったです。
――最後に、最終回を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。
鈴木:「愛の力はすごい!」と本作を見た後に感じていただけるはずです。普段の生活でも、家族や友達、趣味などに捧げる愛や情熱は何にも代えがたいものだと思います。同じように本作も、愛にあふれた身近な存在として触れていただけると嬉しいです。
作中ではついに錆の元凶がわかり、最終回に向けて盛り上がりを見せています。くり返されそうになる災いをビスコやミロはどう阻止するのかなど、ラストまで見どころ満載なので引き続き『錆喰いビスコ』をよろしくお願いします!
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『錆喰いビスコ』TVアニメ最終回となる12話は3月28日深夜より順次放送予定。ビスコやミロたちが愛する人を守るために戦った日々は、どのような結末を迎えるのか、最後まで目が離せません。