日本を代表する7つのアニメスタジオが「スター・ウォーズ」をテーマに短編アニメを制作する……。そんな夢の企画が『スター・ウォーズ:ビジョンズ』として、Disney+ (ディズニープラス)にて配信されている。
アニメ!アニメ!では今回、スタジオ・TRIGGER制作の『The Elder』にて監督を努めた大塚雅彦氏へのインタビューを実施。『The Elder』をもって、自身のアニメ制作業に「一区切りつける」とも言われているが、実際のところはどうなるのか。『The Elder』の見どころとともに語っていただいた。
――まず最初に、大塚さんにとってこの『The Elder』という作品が「一つの区切りになる」と言われておりますが……。
大塚思った以上にそこをピックアップされて驚いています(笑)。実は、TRIGGERを始める時に、「これからは現場の仕事はあまりできない」と思っていたんです。いざとなったらやります、くらいの気持ちでした。それが蓋を開けてみたら、すぐに「大塚さん、お願いします!」みたいな感じで(笑)。
それ以来、現場の仕事もやりながら続いていたのですが、そろそろ若手も育ってきたところですし、いい加減離れなければと。経営のこともあるので。自分としても、「スター・ウォーズ」という作品がすごく好きでこの仕事を始めたので、その「スター・ウォーズ」に関われるというのは自分の中でも一区切りつけられるのではないかと。そういう気持ちで本作には挑んでいます。
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――これからは後進の育成やTRIGGERの経営に注力していかれるんですね。
大塚そうですね。これまでも育成を兼ねて若手と組みながら仕事をすることはありましたが、さらにそういったことの比重が重くなるかなと思っています。
――今回の『The Elder』でも、経験豊富なジェダイ・マスターと若きパダワンが描かれていて、技術の継承や育成といった要素が盛り込まれていますね。
大塚プロットの時点で意識していたわけではないです。
ただ、自分自身、がむしゃらにやってきた時代というのはメンタル的にもパダワンに近いところにあり、そこから、今ではジェダイ・マスターのような視点を持つようになってきています。『The Elder』のジェダイ・マスターに自分を重ねて表現したようなところは、結果的にですがありましたね。
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――ご自身のキャリアを振り返ってみて、いかがでしょうか。
大塚娯楽作品で「人を楽しませたい!」という思い、そしてそれを「人と一緒に作り上げていくおもしろさ」というのがとても好きだったなと。
なので「クリエイター」という言葉に強いこだわりはなかったんです。「自分が好きでやった」とか「自分が想像してるものを作る」という意識はあまりなく、「どうやって人を楽しませて、どうやってそれをみんなで作るか」というのを常に意識していました。
その元となったものをもらえたのが「スター・ウォーズ」でした。勇気をもらえたし、すごく刺激も受けました。自分のアニメ作りの根本にあるのが「スター・ウォーズ」なので、そのアニメを作れるというのは、本当に感慨深いことだなと思っています。
――人生を変えるほどの影響を受けているんですね。キャリアの区切りにもなる『The Elder』は、大塚さんの集大成的な作品になっているのでしょうか。
大塚やりたいことは山のようにあるんですが、尺的にもすべてを詰め込むことはできませんし、今回は奇をてらわずにオーソドックスに行こうという思いもありました。他の仕事もある中での監督だったので、他のスタッフの手ももちろん借りています。自分自身のやりたいことを詰め込むというよりかは「みんなの力をどう引き出すか」というのを意識していましたね。
なので、集大成というよりかはこれまでやってきたことを変わらず続けて作り上げた作品になるのかなと思います。
――奇をてらわないというのは、ジェダイ・マスターとパダワンの関係にも現れていますね。
大塚経験豊富なジェダイとやんちゃなパダワンという図式は「スター・ウォーズ」では共通のものなので、そこは外さないようにしたいなと。師弟ものとしてみても多くがそのような関係になると思うので、あまり考えすぎないように、基本に忠実にしていました。短い中でも関係性をわかりやすく表現できるというのもありますね。
――ジェダイといえばライトセーバーですが、『The Elder』でも見ごたえのある戦闘シーンが描かれていました。なにかこだわりの部分などはありますか。
大塚宇宙空間でのドッグファイトも好きですが、今回はアニメーションの特性を活かしたくてライトセーバーでの殺陣をメインにしました。
ジョージ・ルーカス監督が日本の時代劇に影響を受け、三船敏郎さんにオファーをしていたという話を聞き、「スター・ウォーズ」にも時代劇のようなテイストを入れたかったのでは、というのを自分自身もずっと思っていたんです。日本人ならではの殺陣を、ジョージ・ルーカス監督はどのように盛り込みたかったのかを想像しながら再現することを意識しています。
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――確かに、殺陣のシーンは迫力がありつつも、なじみ深さを感じました。ちなみに、他に見所などはありますか?
大塚「スター・ウォーズ」って映像作品だけに限っても膨大な数があり、今から見始めようとしても尻込みしてしまう人もいるのではと思っています。
今回は、色々な制作会社が短編アニメを作るということもあり、これまで「スター・ウォーズ」に触れてこなかった人でも、ちょっと見てみようかなと興味を持つこともあるはずです。なので、『The Elder』は「スター・ウォーズ」が初めての方でも安心して楽しんでもらえるよう意識して作っています。
一方で、自分自身が「スター・ウォーズ」ファンでもありますので、ファンならではのこだわりも入れた部分もあります。これまで「スター・ウォーズ」を見てきた人にも楽しんでいただける部分は必ずあると思います。
どなたでも楽しめる「スター・ウォーズ」として『The Elder』を楽しんでいただければと思います。
――ありがとうございました!
『The Elder』は、他の『スター・ウォーズ:ビジョンズ』作品群とともに、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+」(ディズニープラス)にて2021年9月22日より独占配信中。
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