世界における日本アニメ産業の立ち位置とは―世界的に共感を呼ぶアニメづくりの条件と、コロナ禍での海外展開【レポート】 | アニメ!アニメ!

世界における日本アニメ産業の立ち位置とは―世界的に共感を呼ぶアニメづくりの条件と、コロナ禍での海外展開【レポート】

東京都が都内のアニメーション関連事業者の海外進出を支援するため、ビジネス知識やスキルを学ぶ機会として2017年度より実施している「海外進出ステップアッププログラム」が今年もスタートした。

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東京都が都内のアニメーション関連事業者の海外進出を支援するため、ビジネス知識やスキルを学ぶ機会として2017年度より実施している「海外進出ステップアッププログラム」が今年もスタートした。

オンラインで行われる本プログラムは4回のセミナーと2回のワークショップの全6回構成となっており、2022年2月の「東京アニメピッチグランプリ」へと続いていく。

初回となる9月24日の「セミナーA・入門編」では「新型コロナウイルス下での海外展開とは」をテーマに講演が行われた。

講師は、2004年にアニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立し、現在は独立しアニメーションに関する報道・執筆に従事するジャーナリストの数土直志氏。そしてバイアコムCBS・ネットワークス・ジャパンで代表取締役社長を務める井股進氏と、Nickelodeon InternationalとVIS KIDSの社内外のアニメーション開発・制作チームの責任者Chris Rose氏が担当した。

日本のアニメが世界で今どのような立ち位置にあり、国際的に受け入れられるアニメ作品とはどのようなものかが語られたセミナーの模様をレポートでお届けする。

海外市場が拡大し、日本アニメ産業は「一、二馬身先を走っている」状況に


最初に講師を務めたのはアニメーションジャーナリストの数土氏。「新時代の海外アニメーション市場 新型コロナ以降にどう変わったのか」をテーマに、国内外のアニメーション産業の現状が語られた。

まず国内アニメ産業が過去20年間で成長率128%を記録していることと、その背景にあるのが海外市場であるという現状を紹介。国内では成長を実感しづらいことにも触れつつ、ストリーミングサービスでの配信権利など海外市場におけるライセンス関連のビジネスが大きな支えになっていることから、数土氏は「人数ベースでは日本アニメの視聴者は半数以上が海外にいると考えられる」との見解を述べた。

ただし、そんな成長する海外市場の中で事情が変化しつつあるのが中国市場で、表現規制の強化や動画配信のプラットフォームが寡占化によって買い付け競争が無くなり、成長が小さくなりつつある。それでも成長を続けている要因はゲームライセンス関連の売り上げと、これまでイメージのなかった中東や東南アジア、中南米などの新興市場の影響にあり、番組を買うだけでなく製作出資や自国でのアニメ化・実写化など「ハリウッドメジャー」で取り上げられるケースの増加も大きな要因であると数土氏は分析している。

こうして市場が拡大する裏で明らかにアニメ制作会社は不足しており、国外のスタジオで製作されるアニメーションも増加している。しかし安定した品質と人気を確立している国内のブランドあるスタジオへのニーズは依然として高く、数土氏は「高品質で制作できる企業の立場が上がり、強気に交渉できる環境になっているのではないか」とも予想した。

ここから話題は「アニメーションの海外ビジネスとは」に移り、特にコロナ禍の状況では自分たちの得意な分野・できる分野が何かを考えることの重要性に触れつつ「海外でビジネスパートナーを見つけるための5つの方法」が紹介された。

その5つとは「1.個人取引(人脈/紹介)」「2.海外フィルムマーケット(国際見本市)」「3.国内見本市」「4.セミナー/マッチングイベント/ビジネスツアー」「5.アニメコンベンション/コミックコンベンション」である。中でも既に信頼感を獲得できている個人取引が魅力は高いものの新規参入にとっては難しい条件であり、実際に新しいビジネスパートナーを獲得する上で有効なのは「2.海外フィルムマーケット(国際見本市)」になっているのが昨今の状況として語られた。

海外のアニメ産業に目を向けると、単純な数字での比較は難しいもののグローバルに拡大し続けていることは間違いなく、特に映像配信プラットフォームの影響が著しいこともあわせて紹介された。かつてはコア層とされてきた大人世代のアニメファンにも現在では大衆的な作品が好まれる傾向にあり、「大人もエンターテイメントとしてアニメを楽しむ」ように変化しているようだ。

そうした海外産アニメが勢いを伸ばす状況下での日本産アニメーションの強みは、未だに認知度の高い世界的なIPが生み出され続けているシンプルな原作力と、ファンに向けたマーケティングなどのビジネスモデルが確立されていることにある。すでに独壇場と呼べるような状況は崩れつつありながらも、数土氏は現状を「一馬身、二馬身先を走っている」と表現した。

最後には気になるコロナウイルスのアニメ産業への影響についても言及し、制作の遅れはほぼ平常に戻ったものの、映画公開や放送の延期は以前発生してプロモーションに影響している現状が紹介された。中でも最も影響が大きいのはイベントやライブ関連の分野であり、ここ数年非常に成長分野とされていただけに打撃は大きかったのではないかとの見解も示された。

国際見本市も未だに延期や中止が相次いでおり、オンライン開催では対面して生まれるはずのビジネスチャンスが失われている可能性も大きいという。ただ、同時に参加コストの軽減や機会の増加などオンラインならではのメリットも存在しており、コロナの影響が収まった後も「オンライン見本市」は残っていくのではないかと数土氏は予想した。

これらを踏まえて、今後は見本市に限らずオンラインを活用したビジネスの開発にも目を向けていく必要があるのではないかとして、講演は締めくくられた。

ニコロデオンの作品が国際的な共感を呼ぶ「3つの柱」とは


続いてセッションは「あなたの作品・企画の開発とピッチについて。ニコロデオンと一緒にアニメーションを見てみよう」へと移り、まずバイアコムCBS・ネットワークス・ジャパン代表取締役社長の井股進氏が講師として登場。

延べ42億世帯184ヵ国44言語で視聴され、17億のソーシャルファンを抱えるバイアコムCBS・ネットワークスが持つブランドの紹介が行われた。国内では代表的な作品である「スポンジボブ」が地上波で放送されている他、VODやオンラインTVを通じて展開されていることに加えて、今回紹介する「ニコロデオン」ブランドは未就学児から就学児まで幅広いターゲットを対象としたチャンネルであることも併せて触れられた。

そしてここからはNickelodeon InternationalとVIS KIDSの社内外のアニメーション開発・制作チームの責任者Chris Rose氏が録画映像にて出演し、同ブランドが手掛ける革新的かつグローバルな作品の数々について、そのコンセプトや製作の背景が語られた。

まずChris氏は主要なターゲットである子供たちの世界を作品に反映させることが「これまでも、これからもコンテンツにおいて不可欠」と表現し、そのミッションに忠実であるために常にリサーチを行っていると述べた。子供たちはテレビ番組に自分の姿を反映させたいと願っているため、多様性を追求したコンテンツによって誰もが自分たちと置き換えられることを重視しているそうだ。

また、既に40年以上に渡ってテレビアニメのブランドとして成功しているニコロデオンだが、現在はニーズに合わせてネット配信など同時に複数のプラットフォームで展開することも意識している点など、コンテンツ制作時のアプローチの指針が数多く紹介された。

ニコロデオンは世界中のキッズコンテンツ制作者とのコラボを行い、大幅にモデルを進化させてきた。各大陸でオリジナルシリーズの政策が行われており、今回はアジアで進行中の3つのシリーズ「DEER SQUAD」、「サミーとラジのねじれた時間軸」、「SHARKDOG」を、現地のパートナーと協力しながら世界的に成功する作品の素晴らしい例として取り上げる。

まず紹介されたのは、イギリスで書かれたシナリオを中国のスタジオで製作した「DEER SQUAD」だ。登場する4匹の鹿のキャラクターは元々マスコットとして人気を博していたが、アニメ番組のスターになれるのではないかというアイデアから発展した作品だという。普遍的な「善と悪」の構図から、社会的な感情を学ぶことや環境問題への気付きなどへと繋げるという、通常の未就学児向けの作品よりシナリオに深みをもたせている点も特徴として触れられた。

続いてはニコロデオンインディアのインターンアイデアを元にした、2022年に放送予定の「サミーとラジのねじれた時間軸」について。インドには膨大な数のスタジオがあり、インドから世界に通用する作品が作れることを証明したい期待の作品として紹介された。作品の概要としては時間を操るアプリを手に入れた2人の男の子が繰り広げるドタバタ劇ではあるものの、あくまでアプリはストーリーのきっかけに過ぎず、メインとなるテーマは「家族との絆」など子供たちが親しみやすいものになるようデザインされている。

本作品の制作にあたってはChris氏とヘッドライターとアニメーターが同じビジョンを持つためにムンバイでのクリエイティブワークショップに参加したと言い、3世代の家族やユーモアあるドタバタ劇などインドで人気となる要素を交えつつも、子供を主人公とした世界中の子供たちが感情移入しやすい物語になっているそうだ。

最後はシンガポールのスタジオと共同で開発し、Netflixで配信される「SHARKDOG」。10歳のマックスがイヌと鮫が半分半分の生き物と出会う物語で、脚本はアメリカで、アニメと絵コンテはシンガポールで製作されている。従来のペットを斬新にアレンジした内容について、Chris氏は「世界中の誰もが共感できるコミカルな感性はまさにニコロデオンが求めるもの」と表現し、大きな期待を寄せた。

Chris氏によれば、これらニコロデオンの作品の特徴は「子供が親しみやすく、子供たちの生活や経験に基づいて普遍的に見える」ことにあるそうだ。ニコロデオンでは脚本を進めるにあたって必ず話をする3つ柱「BROAD(幅広い)」「SIMPLE(シンプル)」「EMOTIONAL(感動的)」についても紹介された。

「幅広い」とはドタバタコメディや楽しいキャラクターなど、全ての視聴者にとって普遍的な魅力を持つ内容のこと。そして「シンプル」さはどこがユニークなのか、あるいは子供が親しみやすい現実の問題、ハッピーエンドなど、前提条件を簡単に説明できるもの。そして「感動的」とは友情やチームワーク、キャラクター同士の関わりだけでなく、視聴者とキャラクターの関わりも含まれる。

最後には事前に寄せられた質問にChris氏が回答し、アイデアをアピールする際に重要なポイントを紹介。一緒にニコロデオンのコンテンツを作りあげていくエキサイティングなアイデアを常に楽しみに待っていると述べ、セミナーの結びとした。

今後のセミナー予定


海外進出に必要なスキルを学べる「海外進出ステップアッププログラム」。第3回は10月29日、第4回が11月10日に開催される予定だ。

また、11月25日と11月30日にはワークショップの開催を予定している。各回2営業日前までホームページからの申し込みで参加でき、費用は無料。


「海外進出ステップアッププログラム」
《ハル飯田》

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