本作が長く愛され続ける理由のひとつは、主人公ナウシカの存在感でしょう。圧倒的なカリスマ性を持ち、民を導くその姿に感動した人は多いはず。ナウシカはまさに理想のリーダー像を体現していると言っても過言ではないでしょう。
今回は、そんなナウシカの言動からリーダーにふさわしい資質とは何かを考えてみたいと思います。
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■迅速で的確な状況判断と決断力
リーダーの一番大事な仕事とは、決断すること。どんな組織であれ、意思決定をして方向を定めないことには、どれだけ優秀な人材を抱えていても良い成果は得られないでしょう。
ナウシカは決断することを決して人任せにせず、自分の責任で物事を決められる人物として描かれています。とりわけ、緊急時の迅速かつ的確な判断が光ります。
トルメキアの船がアスベルの乗るペジテのガンシップに襲われ墜落する時、ナウシカは脱出のために風の谷のガンシップを動かそうとします。従者のミトは「姫様、もうだめじゃ!」と叫ぶ中、ナウシカは「飛べるかもしれない、エンジン始動! 砲で扉を破る!」と即断即決。かなり派手な脱出方法ですが、最も早く合理的な選択だったでしょう。
この時のナウシカの声色がいつもと違って命令口調なのが素敵です。部下への指示を出す時、どんなトーンで指示するか一つで行動も変わってくるもの。ナウシカは状況を見極めながら的確な指示を、的確なトーンで出せるのです。
そして、ナウシカは谷の存続を考え、見方によっては非情ともいえる現実的な判断を下せる人でもあります。
クシャナ率いるトルメキア軍に制圧された風の谷は、ナウシカと人質5人をトルメキア本国で連れていく決定を下しますが、ナウシカはその人質に年寄りの城オジばかりを選んでいます。
「やれやれ、姫様も惜しげのない者ばかりよう選んだわい」と自嘲気味に城オジたちも話していますが、これは谷の存続のために若い人を連れていくわけにはいかないという、現実的な選択です。
風の谷は小さい国ですから、抱負な労働力があるわけではなく、人的資源もかなり限られているのでしょう。谷の民から自ら犠牲を選ばないといけないナウシカの心痛が察せられますが、その責任をだれにも押し付けないナウシカはやはりリーダーとして大変立派だと思います。
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■自ら率先して行動するカリスマ性
ナウシカは決断できるだけでなく、自ら積極的に行動し、そのカリスマ的な魅力で人を従わせることができるリーダーです。
城オジたちが乗った船が墜落しそうな時、助かることをあきらめていた城オジたちをなだめるために、ナウシカは腐海の瘴気がある場所にもかかわらず、マスクを外し、城オジたちに荷物を捨てるように指示をくだします。
作中、屈指の名シーンですが、これもやはり並の人間にはできない行動です。自分でリスクを引き受けて部下たちのパニックを一瞬で沈めただけでなく、その上で何をすべきかを明確に指示しています。「がんばれ」とか「あきらめるな」みたいな曖昧なことを言わず、積荷を捨てろとシンプルで具体的な指示を出しているのが素晴らしいですね。部下の立場からすると、何をすればいいのか明確で迷いなく行動できます。
そして、この時声を通りやすくするために、ガンシップのエンジンを切らせる時も即断即決でした。ここもやはり命令口調で「後席、エンジンを切れ! エンジン音が邪魔だ! 急げ」と具体的な指示とその理由を簡潔に伝えています。
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■城オジの言葉からわかる圧倒的な信頼
リーダーは組織の人間を平等に扱わなくてはなりません。不平等な扱いがあれば、不平不満が募っていき、組織力を低下させますし。ナウシカは、その点でも非常に優れた資質を発揮していると思われます。
ここでも城オジの証言が重要です。リーダーを評価する際、本人のコメントよりも実際の組織に属する人間の、本人のいないところで出される証言のほうが重要だと思います。それは忖度のない正直な評価である可能性が高いからです。
クシャナに捕えられた城オジの一人が言います。
「この手を見てくだされ。ジル様と同じ病じゃ。あと半年もすれば石と同じになっちまう。じゃが、わしらの姫様はこの手を好きだと言うてくれる。働き者の綺麗な手だと言うてくれましたわい」
労をねぎらい誰しもに平等に接していることが察せられます。ナウシカは、本人のいないところで関係した人々に絶賛されることが多いですが、こうしたセリフからも本当に信頼されているのだなと伝わってきます。
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ナウシカは、こんな上司のもとで働いてみたいなと心から思わせてくれるキャラクターです。リーダーや組織の上に立つ方々はぜひナウシカの振る舞いを参考にしてみてください。
『風の谷のナウシカ』
(C)1984 Studio Ghibli・H