■兄弟間の複雑な事情とは? ふたりが読み解く航海、賢汰の関係性
――ちなみに、おふたりが初めてお会いしたのはいつ頃だったのでしょうか?
橋本:いつ頃だろう…アニメのアフレコだったかな?
前田:そうかも。バンド練習も別々にしているので、スタジオの入れ替わりの時にすれ違うだけだったり……。なので、ちゃんと挨拶したのは、アニメのアフレコかもしれないですね。
――初対面の印象はどんな感じでしたか?
前田:「お兄ちゃんや!」と思いました。その前に「キャストが決まりました」って聞いた段階で、すぐにググったんですけどね(笑)。そこで「あ! 同郷(大阪)や!」という発見もあって嬉しかったです。
橋本:「本当に兄弟なんじゃないか?」説も出ていますね(笑)。
前田:実際に会った時は、物腰も柔らかくて、すごく包容力があって、本当に“お兄ちゃん感”が強い。あと、すごく賢汰に似ていると思いました。
橋本:それ、最近すごく言われる!
前田:キャラクターを演じる前の段階でも、賢汰として認識できましたね。
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橋本:僕は、第一印象はかわいい子だな」と思いました(笑)。
実際、アニメの第1話は航海のことばっかり見ちゃったので、僕も意識しているんだろうな~。「顔がかっこいい」「結構しっかりしてるな」って目線で見てましたもん。
前田:目線がもうお兄ちゃん(笑)。
航海は、最初に設定をいただいた時から「嫌いなもの:兄貴」と書いてあったので、意識せざるを得ないですよね。
なぜ嫌いなのか、どれだけ嫌いなのかがわからなかったのですが、第4話の台本をいただいた時に「嫌いの種類はそれか!」とわかったので、初めて真ちゃん(橋本真一)とお芝居した時に、その兄弟感をやっと表現できて楽しかったです。
――兄弟の関係性が今後アニメでどう描かれるのか気になるところですが、おふたりはどう捉えていますか?
前田:他人へ持つ嫌いの感情と、兄弟間で持つ嫌いの感情って全然違うものですよね。
航海が音楽を始めたきっかけが賢汰にあるので、憧れでもあり、負けたくないというライバル心もあって「嫌い」に繋がっているのかなと思います。
賢汰と航海で苗字が違うという、家庭環境で複雑な事情もあるんですけど……。
台本を読んでいると、端々に航海の「超えてやる!」という強い気持ちが見えます。
あと、航海はそんなに感情をぶつけるタイプではないので、賢汰に甘えている部分もあるのかなとか思いながら演じました。
橋本:賢汰は兄というより、親目線で航海のことを見ているのではないかと感じています。
だからこそ厳しい言葉を投げかけるのだと思います。そういった意味で、お兄ちゃんより「オカン」の方がしっくりくるかも(笑) 。
前田:たしかに(笑)。
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――兄弟の関係性をうかがったところで、それぞれバンド内での立ち位置はどうでしょう?
前田:航海は、すごく心配性で、石橋を叩きまくってから渡るタイプ。でも「Argonavis」はリーダーの結人が考えなしのポジティブなキャラクターなので、その結人と航海の両輪がなければ、成り立っていないバンドだと思います。
航海だけだと、心配が故に止まってばかりで前に進めないで終わっちゃうのですが、結人や他のメンバーの前向きさに引っ張られて、バンドとして良いバランスが取れていると思います。
航海も、バンドではお母さん的立ち位置なんですよね(笑)。
橋本:やっぱり兄弟なんだねぇ。
前田:そういうところは似てると思います。
橋本:賢汰は、バンド内でもお母さんですね。ボーカルの那由多(CV:小笠原 仁)がひとり突出したカリスマで、「実力がないヤツは付いてこなくていい」という意見を持っているので、任せていたらバンドが成り立たなくなっちゃう(笑)。
この那由多と他の3人を繋ぎとめているのが、賢汰なのかなって思っています。
――なるほど。実際のリアルバンドでは、前田さんと橋本さんはそれぞれどんなポジションなのでしょう?
前田:「Argonavis」は僕とドラムのヘイヘイ(橋本祥平)が同い年で、バンド内では一番年齢が下なんですよ。また、僕もヘイヘイも音楽初心者なので、ボーカルの伊藤昌弘くんやギターの日向大輔さんに、色々とアドバイスをもらいながらやっているので、ポジションでいうと「弟」になるのかもしれません。
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橋本:「GYROAXIA」は、作中のようなピリピリ感はまったくないです(笑)。みんなで楽しくワイワイやっています。
でも、やはり那由多役の仁のカリスマ性はみんな感じていて。楽器隊が演奏しているのを歌いながらしっかり聴いていて、「ここはこうした方が良い」というフィードバックを毎回してくれるので、そこに従って演奏を変えたりしていますね。
あと、ドラムのこうちゃん(宮内告典)もずっとミュージシャンとしてやってきた人なので、音楽的に秀でているふたりがバンドを引っ張ってくれています。
――バンド練習後はやっぱりみんなでご飯に行ったりしますか?
前田:「Argonavis」は、昼間の練習が多いんですよ。午後から他の仕事が入っちゃってる人もいるので、予定が空いてる人同士で行くことが多いかもしれません。
あと、ラーメン屋に行くことが多い。バンドマンってなぜかラーメン屋行きがちですよね。
橋本:たしかに。僕らは、安い居酒屋によく行きます(笑)。
――「Argonavis」と「GYROAXIA」の2バンドでご飯に行ったりは?
前田:それが、行ったことがないんですよ! 行こうって話はしてるんですけどね。
橋本:時期が時期なので……。
前田:リモート飲み会やろっか!
橋本:いいね! もういっそ番組にして、生配信しちゃおう!
■橋本さんは「Argonavisが羨ましい」? お互いのバンドの印象を直撃
――前田さんは「GYROAXIA」について、橋本さんは「Argonavis」について、それぞれどのような印象を持っていますか?
前田:「GYROAXIA」は、圧倒的なカリスマ性・音楽性がありますよね。
アニメ第1話で、主人公の七星 蓮(CV:伊藤昌弘)が、「GYROAXIA」のPVを見ているシーンがあるんですけど、その数十秒曲が流れただけでも、「GYROAXIA」のファンになっちゃう(笑)。
それくらい心に刺さる、揺さぶられるものがあるバンドだなと感じています。
さっき真ちゃんが、「まだArgonavisに対して返せているものがない」とおっしゃっていましたけど、全然そんなことなくて。刺激をもらいっぱなしです。
橋本:いや~嬉しい……(しみじみ)。
前田:2nd LIVE「VOICE -星空の下の約束-」の時、リハーサルも一緒の時間が取れなかったので、本番でほぼ初めて「GYROAXIA」の演奏を聴いたのですが、「Argonavis」全員がソワソワしていましたね。
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今まで、ライブに向けての練習などで、メンバーの意識や団結力も上がっていたのですが、「GYROAXIA」の曲を生で聴いて、さらにギアが上がったというか。仲間でありライバルであるっていう存在に出会えて幸せです。
橋本:僕は「Argonavis」の楽しそうな様子が、少し羨ましくて。ライブでも背中合わせとか和気あいあいと楽しそうな感じで演奏してたじゃないですか。
あれ、「GYROAXIA」じゃありえないから、「俺もそれやりたい!」と思いました(笑)。
パフォーマンスやお客さんを楽しませる演出について、見ていて「バンドマンってこうだよな」「やってみたいな」と羨ましくなる部分がありました。
でも、それが「Argonavis」の色だとしたら、「GYROAXIA」にしか出せない色があるので、そこを色濃く出せるようにならなければと思っています。
僕たちにとって「Argonavis」は目標なんですけど、作中の設定では「GYROAXIA」が上に立たなければならないですしね。
前田:お互い、良い刺激になっていますよね。「負けるもんか!」という気持ちになる。良いですよね、そういう関係。
――声優としては前田さんが先輩になりますが、アフレコについて何かアドバイスを送ったりしたことはありましたか?
橋本:アフレコでは、「Argonavis」と「GYROAXIA」は席が離れているんですよね。なのでアッキー(秋谷啓斗)に気になったことを聞いています。また、他にも声優さんはたくさんいるので、そこらへんは“(技術を)盗もう”としていますね。
そうそう、アフレコって、本当に難しいんですよ! まずやることが多い。台本を見なきゃいけない、画面も見なきゃいけない、入るマイクを見定めなければいけない、マイクの距離感を調整しなきゃいけない、すぐマイク前からどかなきゃいけない、とか。
お芝居だけに集中できないというのが、普段の役者の仕事とは違うので、本当に、日々精進です……!
――アフレコ現場では、どんなお話をされているんですか?
前田:バンドの話をすることが多いかもしれないですね。あと、僕たちはモーションキャプチャーもやっているので、その撮影の話をしたりとか。
橋本:僕は他のアニメの現場を知らないのですが、『アルゴナビス from BanG Dream!』のアフレコ現場はとても楽しいです。
初めてアフレコブースに入るので、とても緊張していたのですが、みんなとても良い雰囲気を作ってくださっているので、すごく演じやすかった。
前田:ライブやドラマCDの収録などで、先にプロジェクトのみんなと関係性が作れていたからかもしれないですね。
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――『BanG Dream!』プロジェクトということで、楽曲も大きな魅力となっている本作。アニメのOP「星がはじまる」は田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)、「SCATTER」をUZさん(SPYAIR/S.T.U.W)、SHiNNOSUKEさん(ROOKiEZ is PUNK’D/S.T.U.W)などが手掛けていらっしゃいますが、聴いてみての感想を教えてください。
前田:「まさか!」ですよね。最初、誰が作ったかなどの説明なく、曲だけ聴かされたんですよ。
でも、田淵さんの曲のキャッチーさとか耳に残るメロディーって、曲を聴いただけでやっぱりわかるじゃないですか。
聴いただけで、ライブで演奏した時の景色が見えたので「この曲をやらせてもらえるんですか!?」と、みんなで盛り上がりましたね。早くナビの皆さんにもお届けしたいという気持ちになりました。
橋本:プロジェクトに参加してすぐに「MANIFESTO」を聴かせてもらったんですけど、「GYROAXIA」というバンドについてや、里塚賢汰というキャラクターのことをまだ作り上げられていない段階なのに、その曲を聴いただけで「GYROAXIAってこういうバンドだよ」と教えてくれたような感覚になりました。
楽曲に助けてもらった感じがあります。
「SCATTER」は、前半は「MANIFESTO」のような重厚感があって少し暴力的というか「ついて来いよ」というニュアンスが出ているのですが、サビになると急に疾走感がある爽やかなイメージになるんですよ。
「MANIFESTO」を聴いてから「SCATTER」を聴くと、新しい「GYROAXIA」を見ることができます。
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