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マンガ・アニメの未来をテーマにした国際カンファレンス「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima(IMART)」が11月15日から17日にかけて豊島区役所で開催された。カンファレンスでは24のセッションが開かれ、教育やテクノロジー、マーケティングやジャーナリズムなど様々な分野で活発な議論がなされた。
本稿ではそのうち、17日に開かれた「CGアニメはどんな物語を語りうるのか? 新しい時代のCGアニメ表現に向けて」の様子をお送りする。
近年、日本アニメで3DCG作品が盛り上がりを見せる背景として、製作・制作面で指揮を執るプロデューサーたちの力も無視できない要因だ。
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いま、プロデューサーは3DCGをどのように捉えているのか、CGだからこそ語りうる物語とは何か。東宝のプロデューサー武井克弘と、アニメ制作会社オレンジのプロデューサー和氣澄賢のふたりが登壇し、それぞれのプロデュース作品を事例に、3DCGアニメ表現の現在と未来についてレクチャーが行われた。
まず導入として、プロデューサーの役割について解説。プロデューサーはアニメ作品全体を統括する責任者であり、大きくは「製作」プロデューサーと「制作」プロデューサーとに分けられるという。
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「製作」プロデューサーは、企画開発にはじまり、原作ものであれば権利の獲得、製作委員会の組成、制作管理、宣伝・販促など「プロジェクト全体の責任者」。
対する「制作」プロデューサーは、制作スタジオ内の予算・スケジュール管理や、作品のクオリティチェックなど、「制作現場の責任者」と言える。
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武井は「製作プロデューサーと制作プロデューサーの両輪が上手く回ることが、よりよい作品を生み出すために大事になる」と、両者が連携する重要性を述べた。
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双方の違いを踏まえたうえで、まず取り上げられたのが、両者がともにプロデュースに関わったTVアニメ『宝石の国』。武井は本作における宝石でできたキャラクターたちの硬質な佇まいを表現するのに、3DCGが最適な表現だと思ったと、企画当時の狙いを振り返った。
一方で和氣は、原作の世界観を映像に落とし込むための工夫を、メイキング素材を交えながら紹介。特徴的な「頭部の質感」が完成するまで、どのようなテストが繰り返されてきたのかをわかりやすく解説した。
続いて、ふたりによるプロデューサーユニット「プロジェクト」が手がけたショートアニメ『そばへ』が取り上げられた。本作は商業施設などを展開する丸井グループのPRアニメーションとして製作された3DCGアニメで、YouTubeなどで無料公開されている。
雨をモチーフにした作品で、水滴やビニール傘の描写が、フォトリアルな3DCGから次第にアニメ調に整えられていく過程を紹介。服のなびきをいかに柔らかく描写できるかが、今作での3DCG表現上の課題だったと明かした。
3本目に取り上げられたのが、2019年10月から放送されているオレンジ制作のTVアニメ『BEASTARS』。擬人化された肉食獣と草食獣が共生する学園を舞台にした人気3DCGアニメだ。
今作での最大の挑戦は、動物の「毛」と「立体的な骨格」の表現だったという。いかにアニメ調の毛の表現に3DCGを落とし込むのか、そして立体的な骨格の動物たちに対しいかにして豊かな表情をつけるのか。
後者に関しては、フェイシャルキャプチャという、人間の表情の演技を撮影し、3DCGキャラクターに反映させる手法が採られており、それを動物の立体的な骨格上で表現するための試行錯誤が示された。
最後に武井が企画・プロデュースを務めた、オリジナルの3DCGアニメ映画『HELLO WORLD』を紹介。本セッションのテーマとも関連する、『HELLO WORLD』に込めた「3DCGという手法と物語内容を重ねるメタフィクショナルな構造」が明かされるとともに、「お客さんから、CGだから良い/悪いという意見が少なかったことに手応えを感じました。CGの表現力を一歩ずつ高めていき、描けないものをなくすことで、CGに向いている/向いていないという問題自体をなくすことがいまの目標です」と締めくくった。