「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.18 日本アニメーション Part1
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世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。
全インタビューはこちらからご覧ください。
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日本アニメーション代表作:『ちびまる子ちゃん』『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』『あらいぐまラスカル』『トム・ソーヤーの冒険』『うっかりペネロペ』『愛と勇気のピッグガール とんでぶ~りん』『レ・ミゼラブル 少女コゼット』『劇場版 はいからさんが通る』
『フランダースの犬』から始まる『世界名作劇場』シリーズをはじめとして、多くの人の心に残る作品を送り出してきた日本アニメーション。日本だけでなくアジアなどでも人気の『ちびまる子ちゃん』も同社の制作である。2007年以来、同作の監督として腕を振るう高木淳氏に、『まる子』の魅力と難しさ、そして日本アニメーションについて話を聞いた。
[取材・構成=藤津亮太]
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(C)さくらプロダクション/日本アニメーション
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――高木監督は2007年から『ちびまる子ちゃん』の監督を務めています。どういう経緯で監督になったのでしょうか。
高木:『ちびまる子ちゃん』の第1期(1990~1992)は、演出助手で参加して、そこで演出になりました。
第2期(1995~)は合間に『さくらももこ劇場 コジコジ』や『ペネロペ』の監督で抜けたこともあったんですが、演出で参加していまして、そうしているうちに第600話前後で須田裕美子監督が辞める、という話が出て、その後を引き継ぐことになりました。
その少し前に、担当のプロデューサーに「高木さん、もし須田監督が辞めるって言われたら、監督をやれますか?」って聞かれたことがあったんですよ。
冗談半分みたいな調子で聞かれたので、その時は須田監督が辞めるなんて知らなかったから、「なにを言っているんだろう」と思って聞いていたのですが(苦笑)。
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――須田監督からは何か引き継ぎはあったんでしょうか?
高木:いえ。須田監督からは「もう淳ちゃんが監督なんだから、好きなようにやればいいんだ」と言われただけでした。
脚本打ち合わせも1~2本は引き継ぎを兼ねて一緒にやるのかなと思ったのですが、須田監督は自分担当の最後の話数が終わると、さっさと引き揚げていかれて(笑)。
だから僕も自分流にやらせてもらったんですが、脚本家さんたちは突然やり方が変わるわけですから戸惑われたと思います。
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――須田監督としては、各話演出としてかなりの話数を担当しているから、作品世界は十分理解しているだろう、ということだったのでしょうかね。各話演出時代に印象的だったエピソードはありますか?
高木:さくら(ももこ)先生のオリジナルの脚本で、お父さんのヒロシが8ミリカメラを借りてくる回がありました(第95話「お父さん8ミリカメラを借りてくる」の巻)。
普段は登場しない特別な小道具として8ミリカメラが登場して、それでお話が展開していくのが印象的で、結構楽しくやらせていただきました。
あと「うれしいお中元」の巻(第129話)も印象に残っています。これも先生のオリジナル脚本で、マンガ原作がないものを、アニメとして絵に起こした時に、いかにおもしろくしていくのか、そこにやりがいがあった記憶があります。
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――高木監督は『ちびまる子ちゃん』を監督する上で、どこを大切に考えていますか?
高木:『まる子』が始まってもう30年近くになるわけですが、それぐらい続いていると、もう彼女たちはあの世界の中で生きているんですよね。
だから、そういう部分をないがしろにしないでお話を作りたいと考えています。
要するに、面白くなるからといって、こっちの都合でまる子たちを動かすことは、やめようと。
もしお話をそこにもっていきたいなら、面倒くさいけれどちゃんと段取りを考えて、そこにもっていくことは意識しています。苦労することは多いですが。
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――具体的にどんな苦労が多いのでしょうか?
高木:『まる子』の世界は原則、1974年から75年にかけての1年間を描いているんです。
しかも季節ネタなんかは、原則として一回あったことは話にはしないようにしているんですよ。
例えば、クリスマスであれば、まる子が夜、家でクリスマスパーティーをやっているエピソードが既にあるんです。だから夜、ほかのお家に行ってパーティーをすることはできないんです。
1年365日しかなくて、しかも基本の舞台は家と学校の往復。その中でもう1200話以上作っているので、そこはなかなか難しいところがあります。
何年か前に、駅弁が出てくるエピソードがあったんですけれど、そこに有名な陶器のお釜に入った釜飯弁当が出てきたんですよ。
それを作りながら「この釜飯弁当、前に出てきてなかったっけ?」と思って、調べ直したらやっぱり自分が各話演出で担当した回に出ていたんですよ。
これ、気づかずに、初めて見るようなリアクションをさせてしまっていたら、前のまる子はなんだったんだってことになってしまいますからね。
……まあ、とはいっても完全にこういうことをなくすのも難しくて、実際には微妙に以前とズレて、パラレルワールドっぽくなってしまっている部分もないわけではないのですが。
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――まる子という主人公は動かしやすいですか?
高木:難しい主人公ですね。まる子はご存知の通り面倒くさがり屋なので、自分からお話を引っ張ってくれる主人公じゃないんですよ(笑)。
だから「おいちょっと、まる子、なんかしてよ」って言っても、面白いことをやってくれるわけじゃない。まる子は、ごく普通の小学校3年生ですからね。
それがおもしろくなったのは、やはり原作のさくら先生の視点だったり会話がズバ抜けておもしろかったからで。そこをなんとか原作のテイストに近づけようとするには、かなりの頑張りが必要なんです。
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――2015年には23年ぶりに劇場版『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』も公開されました。
高木:映画の企画が始まった時点では、まだ内容も確定しておらず、脚本家に依頼をするのか、先生に相談するのかも決まっていませんでした。
そうしたら、先生がパッと書いてくださって、そこでもう映画の内容は決まったんです。
ただ初稿は、丸尾くんとかレギュラーキャラクターが何人か登場していなかったので、そこだけ修正をお願いして、それで絵コンテに入りました。
映画はイタリアから来たアンドレアという少年がメインのゲストキャラクターです。先生とも「まる子とアンドレアは友達。これは初恋のエピソードではない」とお互いに確認していたんですが、映画を作っていくうちにちょっとこちらの思い入れが深くなってしまって、初恋っぽくも見える感じになってしまいました。
スタッフにもアンドレア好きな人は多くて「映画が終わっちゃうと、アンドレアを描く機会はもうないんだよね」と寂しがる声は多かったです。
→次のページ:「人間を描く」という意味で役立った『世界名作劇場』の経験