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糸曽監督は10代でスタジオジブリの宮崎駿監督に師事し、大林宣彦監督のプロデュースにて監督デビュー。これまで『サクラ大戦』、『機動戦艦ナデシコ』、ハリウッドアニメ『トランスフォーマー』、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』など、アニメ・実写問わず手がけてきた。
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映像監督であるだけでなく、大阪成蹊大学芸術学部部長・教授として後任の育成にも力を入れている。海外クラウドファンディングを活用した作品制作にも造詣が深く、累計調達金額は8億円以上でギネス記録にも登録されている。
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フィンランド大使館公式キャラクターの「フィンたん」をデザイン、アニメ化をするなど、フィンランド大使館との親交が深いことから、糸曽監督が同所での劇場版プロジェクト発表を強く希望した。
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劇場版アニメ『サンタ・カンパニー ~クリスマスの秘密~』は、糸曽監督が2014年に自主制作した短編アニメのリメイク。当時はまだ珍しかったクラウドファンディングを用いたり、アニメの素材を二次利用した、体験しながら学べるアニメ教材を開発して教育機関に販売したりするなど、様々な手法が活用された。
劇場版は世界観を広げるため、大幅に尺を延ばして新しいシーンを追加。クリスマスが大嫌いな少女ノエルが、ある日、「サンタ・カンパニー」という会社で出会った同年代の子供たちに感化されて入社するための試験を受けたり、プレゼントを配る冒険をしたり、様々な困難の中で働く意味を見出すちょっと不思議でとっても輝ける秘密の物語。
サンタクロースのお手伝いをする主人公・ノエルは花澤香菜、ノエルに想いを寄せる少年ベルは梶裕貴が声を務める。
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また、同作は製作委員会ではない手法で、糸曽監督が著作権を100%持つことからも注目を集めている。資金調達はプロモーションも兼ねて3つの購入型クラウドファンディングを展開。6月20日より「Sony Bank Gate」、8月頃から国内では「Makuake」、海外向けでは「Kickstarter」で実施し、それぞれ異なるリターンを用意する予定だ。
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さらに、「周りを巻き込んで盛り上げていく」狙いから、日本の作品の海外向け視聴・拡散アプリ「オタクコイン」、クリスマスに子供のためにサンタクロースを派遣する「NPO法人チャリティーサンタ」とのコラボも発表された。
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同時上映作品『コルボッコロ』は、不思議な巫女の血を継承する14歳の少女・鈴が自然の精霊「コルボッコロ」と出会い、自分のあるべき姿を考え、進むべき道を模索していくSFエコファンタジー。こちらは糸曽監督が2007年にほぼ個人作業で制作した作品のリメイクで、劇場上映に伴い、『サンタ・カンパニー ~クリスマスの秘密~』との繋がりが明らかになるようにシナリオを改変している。
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同日は、糸曽監督が宮崎駿監督に師事していた時代のエピソードも披露した。ジブリが公式募集した次世代の監督候補・演出家育成の試験に合格。宮崎駿監督が企画を考える時によく利用していた大好きな豚から名前を取った“豚屋”に通って教えを受けた。宮崎駿監督が大好きな戦闘機やお酒などフランクに話してくれたこと、冬は薪割りを教えてくれたこと、自身が考えたシナリオを宮崎駿監督が40ページほどの絵コンテにしてくれた日々を懐古した。
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また糸曽監督は、忘れられないエピソードとして宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーが同席した集団面接を挙げた。
誰もが緊張する中で「まずは世間話をしようか」と切り出した宮崎駿監督が、「トトロが可愛いから大好き」と言った女性に「トトロは可愛いと自分は思っていない。たまたまお腹が空いていなかったからサツキとメイを食べなかっただけだよ」と答え、一人ずつ「トトロをどう思う?」と順番に聞いていった。
最後だった糸曽監督は考える時間があったことから、トトロが草食動物特有の歯の形をしていたことを思い出し、「肉食のはずがない」と答えたことで唯一面接に合格したと明かした。後に宮崎駿監督に問題の意図を聞くと、「エンターテインメント作品を作るなら人の話を鵜呑みにしてはいけない」と返ってきたと明かした。それ以来、「常に試されている」意識を持ったそうで、「考えること」が一番影響を受けた教えだと伝えた。
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