■キャラが立てば、どんなジャンルも面白くなる
――本作はアカネの物語でもありつつ、彼女たちと対立し、異世界の平和を脅かすザン・グの物語でもありますが、構成にあたって意識された部分は?
原:良いストーリーに加えて、キャラクターたちがちゃんと立っていれば、どんなジャンルでも面白くなるということだけは信じているんですよ。今回に関しても、主要なアカネ、チィ、ザン・グ、ドロポ、ピポは上手く立てられて、かつとても良いコンビネーションが生まれたと思っています。
――アカネたちを異世界へと導くヒポクラテスも、真面目そうな第一印象に反して、意外性の塊のようなキャラクターでした。中盤で大変な変化に直面して、「ここまでユーモア溢れるキャラになるのか!」と驚かされました。

原:ヒポクラテスに関しては、ストーリー上、「なんでああなるんだ?」という必然性はそんなにはないんですよね。
ただ、意外性を出して「え、どうなっちゃうの?」とお客さんに思わせるのも監督の仕事だと思っていますから、その意外性のためにヒポクラテスはとても災難な目に遭うことになりました(笑)。
――アカネが飼っている猫のゴロ兵衛が、なかなか起きないアカネにお尻を押し付けられるシーンなど、ちょっとした猫の描写がとてもリアルな印象を受けたのですが、原監督は猫を飼われているのでしょうか?
原:子どもの頃実家にいたくらいで、その後は猫と一緒の生活をしているわけではないです(笑)。
ただ、猫にもいろいろ個性がある中で、ゴロ兵衛ならでは個性を描くことは意識していました。そして、アカネとゴロ兵衛の現実世界での関係性が、異世界と意外な繋がり方をしていたりもするので、実は重要な役回りなのかもしれませんね。
――今回、ザン・グとドロポのコンビを、監督が携わられていた『クレヨンしんちゃん』でもおなじみな藤原啓治さんと矢島晶子さんが演じていますが、このキャスティングはどういった流れで決められたのでしょうか?
原:それに関しては、遊びの部分もありますね(笑)。
あと、とても信用している声優なので、機会があれば声を掛けているということもあります。藤原啓治さんも良かったですし、矢島さんのドロポについてはアフレコで大変驚かされましたね。
――これまでの矢島さんの演じられた役の中にもあまりないタイプで、新鮮な感覚がありました。
原:そうなんです。こちらとしても「どうなるのかな?」と思っていたところ、いざスタートしたら見事に僕の思い描いていた以上のドロポになっていて、こんな役も見事にできるんだ、と興奮した覚えがあります。
――ドロポは悪い行いをしつつも、その行動の中に繊細な部分が見え隠れしているキャラクターですね。
原:アフレコでは、ドロポが登場するシーンの度に、そういった繊細さをどう表現するかな? と思い、その度に「そう来たか!」という気持ちになっていました。
子どもっぽい純粋なところから、悪ぶっていたりする部分まで、その振り幅の大きさを巧みに表現してくれて、本当に矢島にお願いしてよかったですね。
■想像を刺激する映画の楽しさ
――その他、お遊び的なことで言うと、劇中登場するチィさんのお店に、原監督作品でおなじみのキャラクターの置物がチラリと映っていましたね。
原:ちょっとした遊びですね。そういうディテールみたいなものを見つける楽しさも映画を観る面白さだと思いますから。さりげなく、かつわかりやすくはしたつもりですので、ぜひ探してみてください(笑)。

――では最後に、本作の見どころをご紹介いただければと思います。
原:今回、幅広い層のお客さんに楽しんでもらえる作品にしたくて、そのために何が一番良いのかと考えた結果、説明を控え、観る人にイメージしてもらう作りにしました。
そこで意味がわからないことがあったとしても、それは映画の楽しさだと思うんです。
わからなかったことは、わからないなりに観た人が答えを出してくれればいいことですから。
僕自身は僕なりに納得が行く作品だと思っていますので、もし観た人の心に何かを残すことができればしめたものです。
想像力を刺激する映画というのは楽しいものだということを、改めて感じていただけると嬉しいです。
『バースデー・ワンダーランド』
公開:4月26日(金) 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:4月26日(金) 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会