オレンジの3DCGアニメーションはなぜ魅力的? “セルなじみの良さ”より重要なこととは【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

オレンジの3DCGアニメーションはなぜ魅力的? “セルなじみの良さ”より重要なこととは【インタビュー】

「視聴者の視点に立った、ハイクオリティなCG制作」をモットーとするCGアニメーション制作スタジオ、オレンジ。初の元請け作品『宝石の国』を経て、さらに進化を続けるオレンジの過去と未来について、代表の井野元英二氏、和氣澄賢プロデューサーに話を伺った。

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■作画と3DCG双方の長所を持つ、高いクオリティのハイブリッド映像づくり



――オレンジが制作するCG映像は、作画と合わせても違和感の少ないルックが特徴です。これは井野元さんが個人でやってきた頃からの試行錯誤の賜物だと思いますが、当初の目標は「セルなじみが良いCG」だったのでしょうか?

井野元
私の中で、「セルなじみの良さ」は、最優先事項ではありません。視聴者に見てもらうために必要なことだったので、やってきたというのが本当のところです。

CGは、作画を組み合わせた場合に嫌な部分が出やすい。ですから、CGの嫌な部分を取るという意味で、「なじませる」ことは当然意識しています。
それをやったうえで、もっとセルに近づけようという方向もありますが、私の場合はそこから分岐して、「ある程度なじませるけれども、一定ラインから先はCG屋の好きにさせてください」というスタンスを貫いています。それが一番出ているのが、『宝石の国』(2017年)ですね。

『宝石の国』のキャラクターは、髪の毛の宝石の質感はCGでしかできない領域の表現を使っていますが、逆に顔まわりの肌の部分はセルに寄せています。
理由は、現代日本アニメにおいては、顔までCGの質感にすると、視聴者が感情移入できないキャラクターになってしまうからです。そこはまだ、作画の方に分がある領域。

ただ『宝石の国』の髪の毛の表現も、5、6年前だったら視聴者に受け入れられなかった可能性もあります。
例えば、『宝石の国』第3話「メタモルフォス」に登場したウェントリコスス(かたつむり)は、かなりリアルルック寄りで描いていますが、やはり数年前だとCG臭くて見ていられなかったと思います。

――CG制作会社として、どのようなルックで映像作りを行っていくかは非常に重要です。世界的にはフォトリアルな方向である中、日本では逆に2Dとのハイブリットルックで制作することが多いですが、オレンジはどうでしょうか?

井野元
ルックに関しては、昔から、制作側の独断でいくというよりも、あくまで「視聴者優先」で考えています。
今の視聴者は、アニメだけでなく、実写やゲームでもCGに触れる機会が増えているので、目がCG慣れしていて許容範囲が変わり続けています。
ですから、常に視聴者の反応を伺って、「今の時代だとギリギリ大丈夫だ」というラインを踏まえつつ、少しだけ新しいことを挟んで、ちょっぴり攻撃的な映像表現をしていきたいと思っています。

そういう意味では、『宝石の国』は、非常に過渡期の作品だと思いますね。
それは他の制作会社の作品も同じで、CG屋はみんな「ここまでだったら大丈夫だろう」と手探りで作っているかもしれません。

現在、アニメ風のルックに質感がついているキャラクターが、歌って踊るソーシャルゲームがあって、若い世代はそれを「普通」に見ている。
でも歌って踊るだけでは問題がないのに、ストーリーがあって感情が入ってくると、途端に違和感を覚えてしまうというのが、現状のラインです。
でも歌って踊るだけのCGに見慣れてきた人が増えたら、今後アニメ作品でも現状のCGのレベルで、普通に見てもらえる時代が来るかもしれませんので、その辺は時代の空気を読みながらやっていこうと思っています。

――プロデューサーの和氣さんから見て、「ルックは視聴者優先、でも少し新しい表現を盛り込んでいく」という制作の姿勢は、井野元さんだけでなく会社全体のスタンスになっていると感じますか?

和氣
そうですね。やはり、社長自身がアニメーターでありディレクターでもあるというのは、オレンジの一番の特色。社員の共通認識としても、「作ることが一番大事」ということが浸透していると思いますね。

■ネットでダイレクトに伝わってくる反応がうれしい



オレンジ公式ストアで販売中の「TVアニメ『宝石の国』コンセプトアート集 」
約80点ものコンセプトアートと特別インタビューを収録

――『宝石の国』は、作品としても技術面でも高い評価を得ましたが、元請け制作をしてみた結果、得たものはなんでしたか?

井野元
『宝石の国』が、オレンジという会社の代表作となったことですね。私個人としても、非常に達成感がありましたし、想像以上にオレンジの名前をたくさんの人に知ってもらうことができて、うれしかったです。
また、『宝石の国』以前は、CGで作ると何かしらの批判を受けていたのですが、『宝石の国』ではまったくなかったので、本当に良かったです。

――逆に、次への課題は見つかりましたか?

井野元
CGでの顔の演技、表情の出し方ですね。作画は人の手で描くぶん、柔軟性の塊のようにいかようにもできますが、CGはそこまで柔軟性がなく、どうしてもお人形さんのように見えてしまうんです。
『宝石の国』を制作するにあたり、どうやって柔らかい感じを出して、自然に見せられるかと考えた結果、2年ほどかけて、3Dのフェイスの上に2Dの口を乗せるという、オレンジ独自のシステムを開発しました。
『宝石の国』ではわりと具合が良かったのですが、まだ完璧ではありませんので、今後の作品でもっと作画的な柔軟性をCGに取り入れ、いろいろな感情表現が可能になると、CGの可能性が広がるのではと思っています。

作品の幅を拡げるために『モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ』(以下『モンスト』)にもチャレンジしました。元請けスタジオとして、どのぐらいのエネルギーが必要なのかを肌で感じておいて、今後新しい作品を作るうえでの体制づくりに活かせたらと。

(C)XFLAG
和氣
『モンスト』は、若手に責任あるポジションを任せることが多かった作品なので、社内スタッフのステップアップの良い機会になりましたね。

――これからのオレンジが目指す映像は、どんなものでしょうか?

井野元
既存の表現が通用しないような作品を、どう映像で見せていくかは目下考え中です。
技術的な面でいうと、『宝石の国』ではフリーランス時代からの念願だった、モーションキャプチャーを使ったので、次はフェイシャルキャプチャーをアニメでうまく使いたいなと思っています。

オレンジ社内にあるモーションキャプチャースタジオ。アニメ制作会社が自ら有しているのは珍しい
後は、東映アニメーションさんに先を越されましたが、リアルタイムレンダリングのUnityを、オレンジでもプログラミング中です。
そういった、新しい技術も取り入れながら、おもしろい表現ができないかといろいろと模索中です。

プラス、最大の目標は、オレンジとしての特色、「オレンジといえばこれ!」という映像表現を作ることですね。
そのために、海外スタジオの良いノウハウも取り入れて、日本の手法とうまく混ぜていきたいと考えています。

――最後に、海外のファンにどんな応援をしてもらいたいと思いますか?

井野元
『宝石の国』では、海外のアニメイベントに呼ばれることもあったのですが、会場で映像を流したときのお客さんの「うわー!」という反応は、とても励みになりました。
また、放送時に、SNSやツイッターのつぶやきがトレンド入りするなど、大きな反応があったことがうれしかったです。
もし応援してくれるなら、海外のファンの方でも「2期はまだですか?」とネットで発言してもらえると、モチベーションの1つになると思います。

和氣
オレンジにとって、『宝石の国』が最初の作品で、『モンスト』は2作目です。これからもずっと、良質の作品を作り続ける会社でありたいと思っていますし、毎回違うものを視聴者にお目にかけたいと思っていますので、これからも応援をよろしくお願いします。

井野元
オレンジは、ちょっとできが悪いけれど、すごく性格が良い子どもみたいな存在だとイメージしてみてください。
新しいことにチャレンジするときに、ひょっとしたら視聴者のみなさんに嫌われそうな部分も入れたりしますが、そこは安心感だけではなく、なにをやってくるのか予測できないことも含め、オレンジの作品を見ていただけるとうれしいです。


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《中村美奈子》
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