「ペンギン・ハイウェイ」原作者・森見登美彦×石田祐康監督対談 一度断ったアニメ化オファーをOKした理由とは | アニメ!アニメ!

「ペンギン・ハイウェイ」原作者・森見登美彦×石田祐康監督対談 一度断ったアニメ化オファーをOKした理由とは

8月17日(金)に全国公開がスタートする劇場アニメ『ペンギン・ハイウェイ』。街に突如として現れたペンギンの謎を追う、小学4年生のアオヤマ君のひと夏の冒険が描かれる。

インタビュー
左から森見登美彦先生、石田祐康監督
  • 左から森見登美彦先生、石田祐康監督
  • (C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
  • (C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
  • (C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
  • (C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
  • 『ペンギン・ハイウェイ』最新映像公開 (C) 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
8月17日(金)に全国公開がスタートする劇場アニメ『ペンギン・ハイウェイ』。街に突如として現れたペンギンの謎を追う、小学4年生のアオヤマ君のひと夏の冒険が描かれる。

原作は森見登美彦による同名小説。本作のメガホンを取った石田祐康監督は、大学在学中の2009年に発表した短編アニメ『フミコの告白』で注目を浴び、今回が長編アニメーション初挑戦となった。学生時代には森見小説に親しみ、思い出の作品をアニメ化する不安もあったと語る。公開を前に、おふたりに企画成立の過程と自身の子どもの頃を振り返っていただいた。
[取材・構成=奥村ひとみ]

『ペンギン・ハイウェイ』


『ペンギン・ハイウェイ』最新映像公開 (C) 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
2018年8月17日(金)全国ロードショー
penguin-highway.com/

■「石田監督のやる気にかけてみよう!」と思った(森見)


――石田監督と『ペンギン・ハイウェイ』の出会いを教えてください。

石田
大学生の頃、「森見登美彦の小説が面白いよ」と勧めてくれた人が何人もいたんです。それがきっかけで『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』など森見先生の作品を読み漁りました。その中でもとくに『ペンギン・ハイウェイ』は、友人が強く勧めてくれた一作でした。とにもかくにも、あの頃は僕の周囲では森見先生の作品が熱かったんです。

森見
ありがとうございます(笑)。

石田
ちょうど京都の大学へ通っていたこともあって、京都を舞台にされることが多い森見先生の小説は僕の大学生活を彩ってくれた重要なひとつでした。

――その頃からアニメ化をイメージされながら読んでいましたか・

石田
いやいや! 自分でアニメ化しようだなんて考えも及ばなくて、何の気なしに読んでいました。
けれど『ペンギン・ハイウェイ』は他の森見先生の作品とは、読んだ感じが少し違うというか……。厚かましいかもしれませんが、先生の作品の中で自分に一番向いているのはこれかな、って。

森見
しっくりきたんですね。

石田
ええ。絵にしがいのある描写だなと思ったんです。これはきっと美しく、あるいは楽しく、おかしみを持って描けるだろうと感じました。

――森見先生は今回のアニメ化のオファーを受けてどのようなお気持ちでしたか?

森見
正直に言いますと、はじめは「大丈夫かなぁ……?」という気持ちが強かったです。原作小説の明るい面とちょっぴり悲しい面、そして暗さや不気味さもある要素をアニメーションとしてどのように表現されるかまったく予想ができなかったし、特に『ペンギン・ハイウェイ』は僕が子どもの頃にこだわっていた原点のようなものを小説にした大事な作品でしたから、預けてよいものか慎重になりました。
でも、石田監督が送ってくれた企画書からはひしひしとやる気が伝わってきたので、「この監督のやる気にかけてみよう!」と思いました。

石田
つ、伝わりましたかね(笑)。

(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
――ちなみに、どんな企画書だったんですか?

石田
かなりの量の資料を添付して、何回かに分けてお送りした気がします。いま思えば原作者相手に厚かましいというか、暑苦しいんじゃないかというくらいの量でしたね……(笑)。

今回の企画では、少年が見る世界の美しさをアニメーションにしてみたかったんです。『ペンギン・ハイウェイ』はまさにピッタリの原作でしたが、はじめから「この作品でいくぞ!」と確信を持っていたわけではありませんでした。
すごく魅力的だけど、自分にとっては恐れ多い作品でもあるから、いいなぁと思いつつも外していたんです。いざ『ペンギン・ハイウェイ』に照準を合わせることになっても、具体的に考えれば考えるほど「森見先生の作品の真意を描けるのかな……」と不安でした。でも最終的には作品の魅力にかなわなくて、「アニメ化したい!」という気持ちが勝った形ですね。

森見
なるほど、いろいろと迷いがあったんですね。
今だから言えますが、最初にいただいた企画書は若干のズレが感じられて、一度はアニメ化をお断りしたんです。けれどその後にもらった資料付きの企画書で、ガラッと印象が変わったんですよ。

石田
最初に送ったものは、アオヤマ君のキャラクターデザインが今よりも柔らかい感じでしたよね。まだ特徴をとらえきれていなかったのを覚えています。

森見
もっと牧歌的な雰囲気の少年でしたね。
この作品はアオヤマ君のキャラクターがズレると、世界のすべてがズレてしまいます。最初の企画書はその点がとても危うかった。
それが、資料付きの企画書ではアオヤマ君のキャラクターがかなり良くなりました。石田監督の本気を感じました。
逆に最初の企画書からの変化を見たから思い直せたというのもあるので、一度お断りしたのは結果的に良かったのかもしれません。

(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
――石田監督はどこにアオヤマ君の特徴を見出したのですか?

石田
1回目と2回目の企画書で大きく変わったのは、アオヤマ君の目の描き方でした。最初のアオヤマ君は、上まぶたの線が丸っこいつぶらな瞳をしていました。
2回目を描いたときに今のようなひし形っぽい鋭い目つきになったのですが、僕はこの目を高感度センサーのつもりで描いたんです。この子の目には世界がかなりクリーンに映っていて、自分が気になるものをとてつもないレンジと周波数帯でパッと感度良くキャッチする。アオヤマ君ってそういう子だろうなと思って描いてみたら、なんだか自分の中で腑に落ちたんです。

――森見先生は本作を執筆された当時、アオヤマ君をどんな発想から生み出されたのでしょうか?

森見
アオヤマ君というキャラクターは、「僕が子どもの頃に見ていた世界が見える人」なんです。
子どもの頃の僕は郊外の街に住んでいて、この特に変わったところもない住宅地のどこかに世界の果てみたいなものがあるんじゃないかと妄想していました。
あのときに見えていた風景や妄想を小説に描きたい気持ちがずっとあって、それこそ『太陽の塔
』でデビューする前の習作で試みたこともあったのですが、どうやって書けばいいのかなかなか分からなかった。自分の思うような、キラキラした不思議な感じにならないんです。
いろいろ考えた末、じゃあどんな主人公ならばあの風景を再現できるのか? と発想を逆転することで、アオヤマ君の像が浮かび上がってきました。

――描きたい世界から逆算して生まれたのがアオヤマ君だった、と。面白いですね。

森見
書きながら調整して、徐々に固まった視点がアオヤマ君だったのです。これは何作か小説を書いて、だんだん書き方が分かってきたから可能になったのだと思います。中でも『夜は短し歩けよ乙女』で乙女というキャラクターを描いたことで、視点を特殊に設定すると見える世界も特殊になると分かりました。

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《奥村ひとみ》
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