「ダンまち×キノの旅」原作者が互いの創作論を交わし合う! 大森藤ノ先生&時雨沢恵先生インタビュー【後編】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「ダンまち×キノの旅」原作者が互いの創作論を交わし合う! 大森藤ノ先生&時雨沢恵先生インタビュー【後編】

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~メモリア・フレーゼ~』と『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』によるコラボイベントを記念し、大森藤ノさんと時雨沢恵一さんによる原作者対談。インタビュー後編。

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■「キャラクターに名前を付けると感情移入できる」(時雨沢)



――『ダンまち』は非常に多くのキャラクターが登場しますが、群像劇を書くのは大変ではありませんか。

大森
とてもキャラクターが多いので、正直出番の取り合いにはなってます。本当はヘスティアやアイズを活躍させるべきなんですけど、自分自身の中で「このキャラクターにはこうさせたい」という感覚が往々にしてありまして。
また、編集部さんからも「ドワーフのおじさんを活躍させよう」みたいなアドバイスもあったり(笑)。

――時雨沢先生はいかがですか? 『キノの旅』の場合は主要キャラクターだけに名前が付いていますが。

時雨沢
キノ達、シズ達、師匠達、フォト達。この4つの主人公達で回しているので、キャラクターについては楽ですね。でも他の長編作品だと同じようにキャラクターを増やしすぎちゃって、中には出番がなくなっちゃうキャラも出てきたりして悩むことはやっぱりあります。

大森
時雨沢先生にお聞きしたかったのですが、短編でも名前ありのキャラクターが出る時があるじゃないですか。たとえば『城壁のない国』(文庫III巻収録)のラウハーや、『病気の国』(文庫V巻収録)のイナーシャとか。ああいうフォーカスした キャラクターが出てくるとすごく感情移入しちゃうのですが、やっぱり狙っているのですか?

時雨沢
そうですね。このキャラクターは重要だという時だけは名前を付けてます。それ以外は大統領や国長といったように役職名で言っちゃいますが(笑)。

――感情をコントロールしやすい、ということですか?

時雨沢
名前があった方がキャラクターが立ちますよね。やっぱりストーリーの中で強くインパクトを残すには、ちゃんとキャラクターに感情移入してほしいので。

大森
完全に先生の手のひらで踊らされてました。自分はラウハーさんが好きすぎてもう……。

時雨沢
ああー。ちょっとネタバレにもなりますが、新しく出てきたゲストキャラクターに名前が付いてると、たいてい死んでる気がします。もちろん死なないキャラもいるんですけど、7割くらいは死んでいるかもしれない。
逆に、どうせ死ぬんだろうと思わせておいて死なない場合は、レギュラーに上り詰めることもあります(笑)。フォトやティーがそうですね。

――(笑)。フォトも狙って?

時雨沢
フォトに関して言うと、『雲の中で』(文庫III巻収録)で書いた時は全然そんなつもりがなくて、何年か経って「そういえばあの話は別の目線で見たら面白そうだな」と思って『雲の前で』(文庫XII巻収録)で再登場させました。
それで「せっかくモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)も出てきたから、この奴隷ちゃんを主人公にして膨らませてみようかな」と、次の巻で彼女に名前を付けた感じです。
キノと対比させて 「旅をさせない」という方向に持って行きたかったので、ひとつの国に定住して、その中でドラマを書こうと。キノ(活動写真。Kinematograph)に対するフォト(写真。photograph)のネーミングもそういった意味合いです。

■「時雨沢先生とのコラボを他の作家さんに自慢したい」(大森)



――おふたりとも小説に限らず漫画やアニメなど色々なメディアミックス企画で監修をされていると思いますが、同じ脚本でもゲームならではの考慮すべきポイントはあるのでしょうか。

大森
媒体の違いはありますね。『ダンメモ』を監修させていただいてつくづく思ったんですけど、ゲームはどうしても説明ゼリフになってしまいます。
小説ならト書き、漫画やアニメだったら絵で説明できる状況も、ゲームではセリフで伝えないといけない。しかもフルボイスなので自分のペースで読めなくて、どうしても冗長になってしまうんです。
いつもユーザー視点で気になっていたので、『ダンメモ』はいつも極力カットしながらテンポ感を重視してました。

時雨沢
ゲームならではの現象ですよね。私も以前、『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』というゲームのシナリオ監修をやった時に学びました。
他にも「この中にセリフを収めてください」という枠が決まっているので、そういった部分にも気を付けながら。あとは何だかんだ言って自分のキャラクターなのでそこまで苦労はしなかったのですが、こちら側の修正に合わせて『ダンまち』側のキャラクターのセリフを変えなくちゃいけない時はかなり気を遣いました。

大森
そうですね。片方を直すたびにキャッチボールが必要なので、お伺いを立てながらじっくりと。時間を使って3~4回やり取りさせていただきました。

時雨沢
一字一句チェックしていったので、時間的にも体力的にも大変ではあったのですが、作業そのものは本当に細部を整えていくだけだったので、そこは非常に助かりました。ゲームのシナリオライターさんが優秀だったからだと思います。

大森
自分も今回のコラボに関してはほぼノーストレスでした。やっぱり原稿は基本的に編集者の方と一緒に作るものだと思っているんですけど、今回は自分が投げたボールを時雨沢先生が受け取ってくれて、ちゃんと返してくれるというやり取りが楽しくて仕方がなかったです。
他の作家さんたちに自慢したいです。「時雨沢先生とコラボしたんだよ。一緒にストーリー考えたんだよ」って(笑)。

――今回のコラボで特にこだわったり調整した部分はありますか。

大森
自分はこれと言ってNGがなかった気がします。ただやっぱり『ダンメモ』には必殺技があるので、キノはさすがにフルートって叫ばないですよねって思った部分はありまして。

時雨沢
たしかに必殺技を考える作業はありますよね。とはいえ「技名を考えてください」というのは、キノがゲームに登場するにあたってよくあるパターンでもあって(笑)。キノには技名なんてないので悩むところではあるんですが、ある意味慣れているので大丈夫でした。

大森
やっぱり原作を読んでいて感じたキノやシズのかっこいい動きを上手く表現できたらいいなあと思ってました。
キノだったら『英雄達の国』(文庫V巻収録)、シズだったら『たかられた話』(文庫IV巻収録)の立ち回りがすごく好きです。そういう部分もゲームの中で匂わせられたらいいなあと思っていましたが、なかなか難しいですね。

時雨沢
先ほど挙げていただいたエピソードはかなり細かく計算してバトルを組み立ているので、なかなかコラボでやるのは無理があるかもしれないですね。でも、今回のアクションシーンも必殺技エフェクトが派手ですごくかっこよくできていると思いましたよ。
《小松良介》
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