「ぼくの名前はズッキーニ」バラス監督インタビュー “日本のアニメ”からの影響と共通点は? | アニメ!アニメ!

「ぼくの名前はズッキーニ」バラス監督インタビュー “日本のアニメ”からの影響と共通点は?

フランスのアニメーション監督、クロード・バラス監督による映画『ぼくの名前はズッキーニ』が2018年2月10日に全国公開を迎える。

インタビュー
注目記事
クロード・バラス監督
  • クロード・バラス監督
  • (C) RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016
  • (C) RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016
  • (C) RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016
  • クロード・バラス監督
2018年2月10日、フランスのアニメーション監督、クロード・バラス監督による映画『ぼくの名前はズッキーニ』が公開となる。
小さな事故で唯一の家族である母親を失ってしまった少年、イカール。母から“ズッキーニ”と呼ばれた彼が孤児院で出会った仲間たちと育む友情を、パペット(人形)アニメーションによって優しく繊細に描いた感動作だ。


人形を少しずつ動かしながら1枚1枚撮影することで動きを生み出す表現手法であるパペットアニメーションを用いた作品といえば、『どーもくん』(日本)や『チェブラーシカ』(ロシア)、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(アメリカ)などが有名だ。昨年日本でも話題になった『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(アメリカ)もそのうちの一つである。
パペットアニメーションは世界中で愛され楽しまれている表現ジャンルだが、日本ではいわゆる「アニメ」と呼ばれる、手描きを主としたアニメーションが伝統として主流なこともあり、このジャンルにあまり馴染みのない読者も多いだろう。

そこで今回はこの冬来日したクロード・バラス監督に、アニメとパペットアニメーションの共通点と、アニメファンにとっての『ぼくの名前はズッキーニ』の見どころについてお話しいただいた。

『ぼくの名前はズッキーニ』
2018年2月10日(土)
新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA 他、全国ロードショー
http://boku-zucchini.jp/
[取材・構成=いしじまえいわ]

■様々なアニメ・漫画の影響と、バラス監督から見た日本のアニメの特徴

――バラス監督は日本のアニメをご覧になったことはありますか?

クロード・バラス監督(以下、バラス)
ありますよ。日本のアニメからインスパイアされている部分は多いです。高畑監督と宮崎監督によるTVアニメ『アルプスの少女ハイジ』は幼い頃にスイスで見ましたが、特に印象深い作品です。ハイジは単にかわいらしい存在ではなく、孤児として厳しい現実の中で生きている少女でした。そういう面は『ズッキーニ』にも大きな影響を与えたのではないかと思います。
『ハイジ』は日本のアニメですが舞台はスイスですので、スイス生まれの私が今ズッキーニの人形をもって日本に来られたことには深い縁を感じます。

――大人になってからご覧になられたアニメはありますか?

バラス
『もののけ姫』は特に好きな作品です。最近の作品なら、片渕須直監督の『この世界の片隅に』、短編では山村浩二監督作品(『頭山』など) もとても好きな作品です。また、高畑監督の『火垂るの墓』も非常に印象に残っています。漫画であれば松本大洋や浦沢直樹の作品が好きです。

――日本の漫画も読まれるんですね。

バラス
アニメ映画の『鉄コン筋クリート』を見たのをきっかけに漫画も読むようになりました。谷口ジローの漫画も好きですが、これらの作家はヨーロッパではとてもポピュラーですよ。小説でいえば村上春樹の認知度と同じくらいのレベルです。


――映像表現の面で、日本のアニメの特徴はどのように捉えられていますか?

バラス
日本のアニメは、感情の表現がミニマリストに徹しているという印象があります。必要のないものは極力そぎ落とした感情の描き方が、『ぼくの名前はズッキーニ』のキャラクターたちの感情の描き方にすごく近いなと思います。たくさんの制約がある中で本当に必要な部分のみを抽出することで、それが逆に広がりをもって大きく感じられるという事を意識して作品作りをしています。

――確かに、ディズニーアニメーションであれば全身を動かし顔の輪郭も大きく変化させて喜怒哀楽を表現するのに対して、パペットアニメーションも日本のアニメも、動くのは口や目や髪だけなのに、より深い感情を感じられる、という点は似ていますね。

バラス
そうですね。面白い共通点だと思います。これまであまり意識してきませんでしたが、確かにそういったところは日本のアニメの影響を受けているのかもしれません。
あと、日本のアニメや映画でもロマンティシズム(ロマン主義)を描いている作品がありますが、私にはそれがちょうどいいバランスのように感じます。逆にヨーロッパの作品ではそれがあまりに濃いように思います。

――監督の言うロマンティシズムとは、具体的にはどういうことですか?

バラス
個人の感情の表現に重きを置くのがロマンティシズム。それに対して、個人の感情を通じて人々がどのように社会と対峙し戦っていくのかを描くのが社会リアリズムです。ヨーロッパの作品の場合、個人の感情(=ロマンティシズム)のウエイトがあまりにも大きいことが多いように思います。
そのせいか、たとえば同じ作品であっても、日本語だとさらっとした感じにできるのに、フランス語だと、全く同じことを言っていても大仰になってしまいます。


――日本の作品もバラス監督の作品も、個人の感情そのものを派手に描くことではなく、個人個人の静かな感情や生き方と、それを通じて社会を描くことに価値を置いている、ということでしょうか。片渕監督の『この世界の片隅に』はまさにそんな映画でしたね。

バラス
そうですね。ちょうど先日片渕監督とお会いしてお互いの映画について話しましたが、そんな話もしましたよ。
《いしじまえいわ》
【注目の記事】[PR]

特集