――剣戟シーンは実写ならではの迫力がありました。アクションシーンはどんなことにこだわりましたか?
福田
基本的に僕はお笑いの人間ですから、普段やらないアクションは良いアクセントになるだろうと思いました。
小栗旬くんとも「アクションはしっかりやっていこう」と最初から話していて、相談をする中で、僕は“舞い”に近いようなエンタテインメント色の強いアクションが好きなんだという話をしていました。その流れで小栗くんから今回のアクション監督を紹介されて、彼のデモンストレーションを見せてもらったらとても面白かったんです。「僕のアクションはジャッキー・チェンに近いんですよ」と本人が言うように、彼が作るアクションはジャッキー・チェン映画ばりにその場にあるものをアクションに取り入れたりするんです。それはまさしく僕が思い浮かべていたエンタテインメントでした。
だから今回の映画もモロにチャンバラをやっているシーンは実は少なくて、飛んだり跳ねたりしているほうが多いです。でもそれがすごく『銀魂』っぽい感じがしたし、普通の剣戟とはちょっと違うぞという、作品のアピールポイントにもなりましたね。
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――たしかに普通の実写作品とは違う、漫画やアニメにも似たケレン味が感じられました。
福田
アクションをストイックに作ると、この動きの後はこの場所にいなくちゃいけないとか辻褄を合わせる必要が出てきますが、僕はそういうこだわりは全然ないんです。なので、アクションをやる人にはちょっと傲慢に思われるかもしれませんが、とにかく見て楽しい映像という視点で編集を施しています。石壁を走るシーンの直後に敵を持ち上げていても別にいいじゃない、と。こういう見せ方ってすごくアニメっぽいというか、実写ではあまり見ない手法なので、今までの侍映画には無いようなアクションシーンに仕上がったと思いますね。
――「銀魂らしさ」を再現しようとする上で苦戦したことはありましたか?
福田
予告編にも含まれていますが、新八と神楽が「宇宙一バカな侍だコノヤロー!!」と叫ぶシーンを含めた船の上空の空は何回も直しました。今の日本のCGは大変優秀で、特に風景はどこまででもリアルに再現することができます。ですが、最初に上がってきたリアルな空を見て、僕は「なんか違うんだよなぁ……」と感じたんです。なぜこんなふうに思うんだろう? と話し合う中で、制作の初期段階で、「『銀魂』のCGのステータスは『メリー・ポピンズ』だ」と説明していたのを思い出しました。『メリー・ポピンズ』の映像は、あの時代の精一杯の技術だと思います。もちろん、今ならもっと綺麗に作れます。でもそういうことじゃなくて、『メリー・ポピンズ』の空気感ってすごく夢がありますよね。あの感じが『銀魂』にも欲しかった。
そこで、このリアルな空に10パーセント、20パーセントくらいのアニメっぽさを足してみようと考えました。結果的にはCGの質をわざと落としたことになるので、見る人によっては安っぽい空に見えるかもしれません。けれど僕はこっちのほうが見ていてワクワクしました。うまく言葉にできないんですけど、銀ちゃんの色合いみたいなものとリアルな空が、どうも僕の中でマッチしなかったんです。CGチームには大変申し訳ない注文でしたが、何度か直してもらって、僕の思うアニメっぽい最終的な着地点を見出しました。これも結局、作品に対する僕の思い入れでしかないんでしょうが、トータルで見ると正解だったと思っています。
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――お話を聞いていると、福田監督の中で今回の映画は「アニメっぽさ」が重要なカギだったようですね。
福田
結局アニメや漫画とか、自分が好きなものがそうなんですよね。たとえば『アオイホノオ』で、柳楽優弥くん演じる焔モユルにすごくショックなことがあった時にバーンと照明が点くとか、リアルでは絶対にありえないじゃないですか(笑)。絶対にないんだけど、そういうことを僕は平気なツラしてドラマでやってきましたから、最終的にはそこが自分のこだわりとして出てきたんでしょうね。
――では最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
福田
ファンの方の中には、実写化に抵抗がある人が少なくないと分かっています。僕は実写の楽しみとは、実在する生身の役者が、いかにキャラクターにアプローチしているかを味わうことにあると考えています。その上で、あえて原作もアニメも見ないで臨んでほしいと役者に伝えることもあります。それは僕が監督としてそれぞれの能力を引き出すために、アニメを意識しないほうがいいと思う人にはそうしているということです。僕の武器となってくれる役者のポテンシャルを最大限に活かして、実写の楽しみを100パーセント提示できたと思っていますので是非、実写ならではの部分に注目して見てみてください。
映画『銀魂』
(C)空知英秋/集英社 (C)2017 映画「銀魂」製作委員会