「名探偵コナン」「ドラえもん」それぞれの人気TVアニメが映画で見せた答え 藤津亮太のアニメの門V 第22回 | アニメ!アニメ!

「名探偵コナン」「ドラえもん」それぞれの人気TVアニメが映画で見せた答え 藤津亮太のアニメの門V 第22回

連載・コラム

  
  •   
映画の長期シリーズを新鮮に保ち続けることは難しい。
ちなみに映画『ドラえもん』は今年の『のび太の南極カチコチ大冒険』で第37作目。そのほか『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』は第21作、『クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』は第25作。夏に公開になる『ポケットモンスター キミにきめた!』は第20作となる。日本は、1時間以上の長編アニメーションを大量量産している、世界的にも珍しい国だが、その一端はこの4シリーズの数を見るだけでも十分うかがえる。

TVシリーズを前提に、その“番外編”を独立した長編として劇場公開するというスタイルは、1980年の『ドラえもん のび太の恐竜』から始まったと思われる。この影響下で、さまざまなTVアニメが劇場版を公開することになった。

『のび太の恐竜』以前も、TVの番外編的長編は存在したが、あくまで「東映まんがまつり」などの看板の下で公開されていた。また『銀河鉄道999』はTVが先行し、後に映画が公開されたが、この2つは別物で“番外編”ではない。
こうして始まった“TVアニメ映画”の歩みだが、そこにはいくつかの困難があった。一番の問題はストーリーをどうするか、だ。TVや原作が継続している以上、ストーリーを終わらせるわけにはいかない。これは主人公が抱える問題・課題を解決するわけにはいかない、ということでもある。

そうするとドラマ面はゲストキャラクターに頼ることになる。ただしゲストキャラクターに比重が偏りすぎると、今度は主人公の存在意義が薄くなってしまう。またゲストキャラクターがいくら新しくても、ストーリーが同工異曲であれば、飽きられるのが早い。

この課題に対して、一番シンプルな答えを出しているのが『ドラえもん』だ。映画『ドラえもん』は、毎回冒険の舞台となる“新しい世界”をゲストキャラクターとセットで開発することで、新鮮なストーリー展開を可能にした。このアプローチは映画『クレヨンしんちゃん』にも受け継がれている。『ケロロ軍曹』の映画版が、毎回世界遺産を舞台に設定していたのも同種の発想と思われる。
この「新しい世界観」という手法は、「魅力的な世界観を提案できかどうか」にかかっており、そこが作品の出来栄えを大きく左右する。

一方、「新しい世界観」を毎回用意することが難しい作品もある。
たとえば『ポケットモンスター』。同作は舞台となる街を印象的に設定するなどして、各映画に色付けを試みてはいるが、「世界観」というほどではない。むしろ、同シリーズの主軸は“ゲスト”で登場するポケモンの存在感を強くアピールすることに置かれていた(特に第6作『七夜の願い星 ジラーチ』以降、その傾向は明確になったように思う)。これはTVシリーズも含め、主人公サトシを成長させないことで「いつ見ても同じテイストの作品にする=長期的に継続可能にする」という方向を選んだ以上、必然ともいえるアプローチといえる。
ただし、このドラマ性の薄さは観客の年齢に天井を設けることにもつながる。間口が広い分「子供が必ず通る作品」であることは、逆に「必ず卒業する作品」でもあるということになる。ここ数年、映画『ポケットモンスター』は興行収入30億円を切り、2016年の『ボルケニオンと機巧のマギアナ』が興収21.5億円に留まったことを考えると、このゲスト・ポケモンで押していくスタイルに限界がきているのかもしれない。

一方で、この夏に公開される最新作『キミにきめた!』は、主人公サトシとピカチュウの出会いを改めて描く内容で、予告を見るとドラマ性が高くなりそうな予感を秘めている。昨年秋からのTVシリーズ『ポケットモンスター サン&ムーン』もサトシをポケモンスクールに通わせるなど新趣向を盛り込んでいる。TVと映画合わせて、20年前のシリーズの発端を知らない、今の子供たちに向けて改めてポケモン・ブランドを再構築しようとしているのではないだろうか。そこも含めて『キミにきめた!』の内容面・興行面での仕上がりに注目したい。

ちなみに映画『クレヨンしんちゃん』は、映画『ポケットモンスター』とは異なり、ドラマ性が濃いシリーズを展開してきた。これは、映画『クレヨンしんちゃん』が実質的に「野原一家」全員が主人公であり、キャラクターの組み合わせ(夫婦、親子、兄妹。ここにゲストキャラクターがさらに加わる)を毎回変えることで、ドラマのパターンを変化させることができるからだ。
各登場人物のキャラクター性を変化させることはできないまでも、キャラクター関係をいじることでドラマを盛り上げることができる。これは映画『ドラえもん』や映画『ポケットモンスター』にはない『しんちゃん』の長所といえる。同作は2014年の『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』で興行成績のV字回復を達成すると、翌年の『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』で22億.9億円と過去2番めのヒットを回復。昨年の『爆睡!ユメミーワールド大突撃』は映画『ポケモン』とほぼ並ぶ興行成績を挙げている。このあたりも、各映画の世界観とキャラターのドラマがうまく噛み合ったからだろう。

このような“テコ入れ”や“方向性の確認”などがなければ長期シリーズは続いていくことはできない。『ONE PIECE』がそれまでの年1回ペースの制作をやめて、原作者が深く関与する形で『ONE PIECE FILM』シリーズとして2009年にリニューアルされたのも、こうした工夫の一環といえる。

こうしてさまざまなTVアニメ映画を振り返ってみると、映画『名探偵コナン』が、安定した興行成績を挙げている理由も見えてくる。同作は、2014年の『異次元の狙撃手』以降、40億円を超える大ヒットを記録しており、今や日本を代表するプログラムピクチャーと呼んでよい。
映画『名探偵コナン』は世界観を大きく変えたり、付け加えたりすることはできない。これはある意味、デメリットではある。

一方、ストーリーについては、「謎解き」が中心に置かれているため、ゴールが明確で観客が満足感を得やすい。また、各登場人物のキャラクター性については変化しないが、恋愛要素が絡んでいるため、ドラマチックに盛り上げることができる。さらに劇場版ならではのスペクタクルとして爆発・カークラッシュなどを入れても作品世界は壊れない。
この事件・恋愛という2要素があることで、そのほかの“TVアニメ映画”よりも、対象年齢が高めで、結果として“卒業していく作品”ではなくなっている。
そして卒業しなかったファンがいることで観客層が広がり、それが興行成績を支えているのだ。この層はコアなファンというより、“アニメも見る一般層”に近い。昨年、『君の名は。』の予告を映画『名探偵コナン』の前に上映したところ、twitterで『君の名は。』に関する書き込みが跳ね上がったという(http://news.livedoor.com/article/detail/12489015/)。これは映画『名探偵コナン』を楽しんで見ている“一般層”が、『君の名は。』のリーチしたかった層としっかり重なっていたということだ。

昨年は『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』が大きな話題を呼んだが、それとはまた別に“TVアニメ映画”が元気であることも、今のアニメ映画の活況の重要な要素であるのは間違いない。

[藤津 亮太(ふじつ・りょうた)]
1968年生まれ。静岡県出身。アニメ評論家。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』、『チャンネルはいつもアニメ
ゼロ年代アニメ時評』がある。各種カルチャーセンターでアニメの講座を担当するほか、毎月第一金曜に「アニメの門チャンネル」(http://ch.nicovideo.jp/animenomon)で生配信を行っている。   
《藤津亮太》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集