日本のアニメがフランス人クリエイターに与えた影響とは?アニメーターとバンド・デシネ作家がクロストーク | アニメ!アニメ!

日本のアニメがフランス人クリエイターに与えた影響とは?アニメーターとバンド・デシネ作家がクロストーク

2016年10月22日に、東京のアンスティチュ・フランセ東京エスパス・イマージュで「日本の影響を受けたフランスのアニメーター世代」と題した対談が行われた。その様子をレポートする。

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2016年10月22日に、東京のアンスティチュ・フランセ東京エスパス・イマージュで「日本の影響を受けたフランスのアニメーター世代」と題したアニメやバンド・デシネ、マンガについての座談会が行われた。このイベントは、アンスティチュ・フランセ日本が行うバンド・デシネの祭典「読書の秋」の一つであり、10月から11月にかけて様々な催しを行っている。
「日本の影響を受けたフランスのアニメーター世代」に登壇したのはサテライトに所属するロマン・トマとYapiko animationに所属するエディ・メホング、そしてバンド・デシネ『ラストマン』の作者であるバスティアン・ヴィヴェス、バラック、ミカエル・サンラヴィルの5名だ。その対談の様子をレポートする。

イベントでは『ラストマン』の作者陣に、まず「日本に来てどう?」という質問が。すると「新しい発見がたくさんあった」「いっぱい食べて飲んで、美味しい経験をした」などの意見が飛び交った。作品に対する日本人の反応には「思っていなかったようなコメントをもらった」「日本のファンにとって僕らの作品はエキゾチックらしい」と話した。
その『ラストマン』は、異能力バトルとファンタジーが融合した作品で、日本のマンガの形式で描きたいと3人が描いたバンド・デシネである。ページ数が少なくカラーであるバンド・デシネに対し、マンガ形式ということでページ数と白黒印刷にこだわった。こうしたマンガ形式の後続は今でも出ていないそうで、出版するまで相当苦労したそうだ。他にも『ラストマン』はアジア圏で流行っている縦スクロール型のデジタル版を配信し、バンド・デシネとして今までにない展開を続けている。
さらに『ラストマン』はアニメーションが11月より上映することが決定している。高めの年齢層をターゲットとし、タバコや暴力表現などが描かれるが、フランスから補助金も出ている。「大人向けアニメの最初で最後かもしれない」と『ラストマン』のメンバーは語っていた。

今回登壇した5名の共通点は、パリのゴブラン映像学校に通っていたことである。ゴブラン映像学校は、ヨーロッパの中でも最も古いアニメーションの名門校だ。ここから多くのアニメーション作家、イラストレーター、バンド・デシネ作家などが誕生している。
『ラストマン』の作者陣の先輩でもあるロマン・トマとエディ・メホングは大きく影響を受けたと語った。アニメーション作家で、『ラストマン』のアニメも手がけるジェレミー・ペリンをはじめとした同級生や、日本で活躍したフランス人アニメーター、来日した大塚康生などの日本人教員に出会い、「出会わなかったら、今日本でアニメを作っていない」とも語った。

日本で活躍してきた2人のアニメーターは、日仏でアニメ制作の環境は大きく違うと説明した。例として2014年のアニメ製作時間を比較したところ、フランスの260時間に対し、日本は2000時間となった。さらに長編・短編アニメ映画(映像)はフランス6本に対し日本は74本という結果になった。実際に仕事をするロマン・トマとエディ・メホングは、日本のアニメーター不足やフランスと比較した予算の少なさを説明し、『ラストマン』の作家陣も驚いた様子だった。

今回登壇したエディ・メホングは、日仏スタッフによるアニメーション・スタジオYapiko Animationを立ち上げて活動している。ロマン・トマはサテライトに所属し、『バスカッシュ』や『マクロスΔ』、『スペース☆ダンディ』の制作に携わってきた。二人とも十年以上日本アニメに関わってきているが、その二人をはじめとしたフランス人のアニメーターたちは「フランス人コネクション」と題した特設サイトの運営をしている。このサイトでは、日本のアニメスタジオで仕事をしたいフランス人アニメーターに向けて、スタジオの紹介、アニメ制作でよく使う言葉、スタッフインタビューなどを載せている。
立ち上げた理由について、日本とフランスの架け橋になり、「今までに見たことのないものを作りたい」と語った。

対談後には、『ラストマン』のゲーム『LAST FIGHT』の映像を流しながら、ゲームの音楽ライブが行われた。イベント終了後はサイン会の長い列ができ、『ラストマン』の人気を表していた。『ラストマン』の今後の展開はもちろん、フランスと日本が生み出す新たなアニメの可能性にも注目したいと思うイベントだった。
《タカロク》
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