エンタテイメント大手のKADOKAWAが、海外での日本マンガ・ライトノベルの翻訳出版で大きな取り組みをする。北米の日本マンガ翻訳出版第2位のYen Pressをグループに加えることになった。Yen Pressは、北米出版大手のアシェット・ブック・グループ(Hachette Book Group)の日本翻訳マンガ・ライトノベル、それにグラフィックノベルなどを担当する事業部である。アシェットは同部門を分社化、2016年5月にYen Press,LLCを設立する。KADOKAWAは米国の投資会社を通じてYen Press,LLCの51%の持ち分を取得する。経営権の過半数を握ることになる。合弁会社のマネジングディレクター・発行人には、Yen Pressの立ち上げに関わり、長年、事業を統括してきたカート・ハスラー氏が就任する。合弁会社は、引き続きアシットが持つ書籍の流通網やマーケティングを活用する。一方で、電子書籍の展開や、アニメ配信との連動ではKADOKAWAが主体的に取り組む。KADOKAWAは、Yen Pressの出資と同時に海外向け配信の大手Crunchrollとの戦略的提携も発表している。3社のノウハウを活用することで、アニメ、マンガ、ライトノベルの分野での事業拡大を目指す。Yen Pressは2006年に、日本マンガの翻訳出版事業として大手書籍チェーン・ボーダーズの日本マンガ部門のバイヤーであったカート・ハスラーらが立ち上げた。2000年代後半の日本マンガ不況のなかで、電子書籍へいち早く取り組み、マンガスタイルのオリジナル英語作品や韓国マンガ、ライトノベルなど新たな市場開拓を続けることで、Viz Mediaに続く、業界第2位の地位を築いている。一方で、小学館、集英社などの有力タイトルはそのグループ企業のViz Mediaに、講談社の有力タイトルは米国市場を強化する講談社USAが翻訳出版権を獲得する傾向が強まってる。これに対抗してYen Pressは2015年にスクウェア・エニックスと協業を強化していた。今回の取り組みで、新たにKADOKAWA作品の多くがラインアップに加わりそうだ。さらにKADOKAWAは、近年、Yen Pressが翻訳出版に力を入れるライトノベルで、日本国内で圧倒的な市場シェアを誇る。Yen Pressのビジネスは大幅に強化される。KADOKAWAにとっても、今回の合弁会社はメリットが大きい。Yen Pressに出資することで、北米市場で先行する小学館・集英社グループ(VIZ Media)、講談社に一挙に追いつき3強の一角を形成することになる。現地で自らビジネスを手掛けることで、日本と比べて弱いとされてきたアニメとマンガ・ライトノベルなどのメディアミックスがより効果的に運用できる。2000年代半ばより不振を続けてきた北米の日本マンガ市場は2013年に底を打ち、2014年より反転を見せている。力を戻しつつある北米の日本マンガ市場で、Yen Pressは台風の目となりそうだ。[数土直志]
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