7月2日から6日まで米国・ロサンゼルスで開催された日本アニメ・マンガの巨大イベントAnime Expo 2015は、例年にも増して大盛況だった。会場のあちらこちらで来場者の多さを指摘する声が聞かれた。動員を牽引するのは、アニメの動画配信だ。日本と同時展開の正規番組配信が、日本アニメファンの増加に大きな役割を果たしているためだ。日本のアニメとその関連企業が勢いを増すなかで、相対的に影が薄く感じられたのがマンガだ。アニメに比べると依然、インターネット上での海賊版が深刻な状態で、また正規での翻訳出版、デジタル配信も新たなビジネスモデルを構築中のように映る。そのなかで7月6日(現地時間)に開催されたマンガ出版のYen Pressのパネルトークは、北米におけるマンガビジネスの今後を考えさせるものだった。かねてよりYen Pressは新しい試みに積極的だが、ファン向けのパネルトークからも相変わらずの同社の挑戦的な姿勢が窺えた。パネルトークは、主に3つのパートから構成されていた。紙とデジタルのマンガ関連情報、ライトノベル関連情報、そして質問コーナーである。マンガ分野では新たに多くのライセンス獲得、出版が発表された。『ほんだくん』『ログ・ホライズン 西風の旅団』『冴えない彼女の育てかた』など、スクウェア・エニックス、さらにKADOKAWAの作品が中心となっている。現在、集英社と小学館、白泉社の有力タイトルはVIZ Media に、講談社のタイトルは講談社USAが獲得し、独立系の現地出版社が有力タイトルのライセンスを獲得する機会は狭まっている。しかし、Yen Pressは北米での十分な出版ネットワーク、デジタルネットワークを待たない企業と手を組むことで、ビジネスを拡大する方向だ。とりわけYen Pressがビジネスで密接に連動するスクウェア・エニックスとの取り組みに熱心だ。今年3月にスタートさせたデジタル配信には、『アホリズム』『咲』『セキレイ』『屍姫』などの8つの人気作品が加わる。さらに今年10月からは『黒執事』『ほんだくん』などで日米同時展開を始める。アニメに比べて遅れている同時展開はマンガビジネス全体にも大きなインパクトを与えそうだ。今回、Yen Pressでさらに注目すべきはライトノベルでの動きだ。2014年よりマンガに加えてライトノベルの翻訳出版をスタートさせたが、今回も『Another エピソードS』(綾辻行人)、『バッカーノ』(成田良悟)、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(渡航)の翻訳出版開始を発表した。日本アニメはマンガと同様ライトノベルを原作にアニメ化することが多い。一方でこれまでは北米で日本の翻訳ライトノベルは売れないとされ、ほとんど出版されてこなかった。Yen Pressはここに目をつけた。Yen Pressの代表であるカート・ハスラーは、「ライトノベルへの反応はとてもいい」と話す。加えて、未翻訳の有力作品が多いこともビジネス上では魅力だろう。日本マンガや小説の翻訳出版ビジネスがどこに向かうのか?Yen Pressの動きはその指標としても見逃せない。[数土直志][/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事
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