10月20日から22日まで、東京・お台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAにてJapan Content Showcaseが開催された。映画、アニメーション、テレビ番組、音楽など様々なコンテンツを取引する国際見本市である。しかしそんな多様なコンテンツが集まる場であっても、講談社の見本市へのブース出展は異質かもしれない。出版・テキストコンテンツはJapan Content Showcaseではほとんど扱われていないからだ。その疑問を解く鍵になったのが、開催2日目に一般社団法人日本動画協会が主催したセミナー「株式会社講談社 日本のマンガの無限の可能性とは?」である。当日は講談社の松下卓也氏(ライツ・メディアビジネス局 ライツ事業部 部長)、金子義雄氏(デジタル・国際ビジネス局 国際ライツ事業部 部長)、そして中里郁子氏(第三事業局 なかよし・ARIA・エッジ編集部 部長)が登壇。編集部の視点のマンガを巡る状況、アニメを中心とした国内ライセスの活用、そして海外展開の3つのパートにより、マンガ・アニメのビジネスの現状と変化が語られた。なぜ講談社が国際コンテンツ見本市に?との疑問は、松下氏の話の冒頭から明確になった。講談社は5年程前からアニメビジネスを活発化させており、現在、国内でも有数のアニメプロデュース会社であるという。2015年に同社がビジネスに参加したアニメはテレビシリーズだけで23作品、劇場映画が5作品で30作品近くにもなる。このほとんどで講談社は製作委員会の中心のひとつとなっている。しかも、こうしたペースは2017年まで続き、一過性のものでない。講談社は国内アニメ産業の隠れたビッグプレイヤーである。つまりJapan Content Showcaseでの講談社は映像の企画・製作会社の側面が強いのだ。一方で講談社が短期間でアニメビジネスを強化できたのは、出版社である強みが活かされていることに理由がある。中里氏によれば、講談社には年間5万作品ものマンガが持ち込まれる。その中から残った作家が年に500作品を発表し、さらにその中からアニメ化されるのは年10作品。こうした厳しい競争を勝ち抜いた面白いコンテンツを保有するのが出版社である。松下氏は第1巻で10万部を越えた作品は全てアニメ化の対象とみられ、5万部越えは検討対象と説明する。そして面白い作品をアニメ化するのだから面白くないわけがないと。アニメ化できる作品をいち早く知る立場にいることが他社にない強みになっている。一方で、そうした大量のアニメが、果たしてビジネスの採算ラインに乗るのだろうか?ここでも松下氏から興味深い話があった。アニメビジネスの世界は、現在、「配信」により完全に変わったのだという。「(作品の)世界同時展開が可能になったこと」「世界中のファンがあらゆる日本のアニメにアクセスできるようになったこと」、このふたつの大きな変化だ。さらに金子氏がこれを引き継ぎ、配信の特徴を「番組編成がないこと」「視聴者が番組を選ぶこと」「“ディズニー”も“なかよし”も横並びなこと」だとする。結果として配信ビジネスの拡大で、アニメビシネスにおける海外からの売上げの占める割合が高まっている。これがビジネス収益化の鍵となっている。つまり売上げの伸びている、伸びる可能性のある海外のパートナーと手を組むことで、収益化により近づきやすくなるわけだ。さらに松下氏は今後日本以外の国からも製作委員会に加わってもらうメンバーもあるだろうと話す。配信がアニメの流通を変え、さらにお金の流れを変えた。しかし、ここで気になるのは、お金の流れの変化がこんどはアニメの作品内容を変えるのでないかだ。ただし、これについては今回はあまり言及がなかった。今後の課題になりそうだ。セミナーは全体を通じて、ビジネスの今後に対してポジティブで心地よく感じられた。もちろんビジネス環境の変化も理由にあるだろう。しかし世界が変化していることを前提に自分たちも変化して新しい潮流に乗ろうとしている、その意欲こそが、近年の講談社のライセンスビジネスの結果につながっているのでないかと思われた。[数土直志][/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
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