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詠舞台「蟲師」、そこに新しい表現の可能性がある

詠舞台「蟲師」、そこに新しい表現の可能性がある。声(言霊)、音、光、そこに映像をコラボさせることによって生み出される創造的かつ独走的。

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(C)漆原友紀・講談社/詠舞台『蟲師』製作委員会
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この『蟲師』の舞台化について中村和明は、次のように話す。
「『蟲師』舞台化のきっかけは、9年前にお手伝いさせて頂いた『蟲の宴』というアニメ『蟲師』DVD上映会イベントで、ゲストとしてご出演頂いていたアニメ声優の方々にやって頂いた[生アフレコ]でした。そこで『蟲師』の世界をリアルの場で再現するには[詠み聞かせ]というスタイルが一番だと確信しました。
当時は声だけだったのですが、アニメの映像や音などの素材を再構築して空間を創り、そこで物語を詠み聞かせる事で、より『蟲師』の世界へ没入できるのではないかと思い、ただの朗読劇ではない[詠舞台]というスタイルに至りました。
アニメ『蟲師』は、とにかく原作に忠実に創られた素晴らしい作品で、[蟲]という普段人には見えないモノの表現や、少し昔の日本の原風景の美しさなど、映像と音で見事に表現されています。完成されたアニメ作品の素材を、分解し、かたちを変え、舞台で再構築して使用するというのは、権利関係も含めかなりハードルの高い事で、あまりない試みだと思います。
決して[アニメの舞台化]ではなく、あくまで[原作『蟲師』を具現化するための要素]として使わせてもらえないか?でもただアニメ映像を背景として流すのでもなく…と考えた結果、やはり今回のスタイルしかないな、と。「蟲師」を語る上でアニメはどうしても欠かせないものだったので、であれば『原作を軸にして、アニメとリアルが融合した舞台ができないのかな?』と考えました。
舞台間口を覆う紗幕や、両サイドの壁面にランダムに吊るされた布に投影されるのは、アニメ『蟲師』の映像なんですが、アニメチームの皆様にご協力頂き、この舞台のために[背景だけ][蟲だけ]といったような再撮を行って頂きました。
また、音も[声だけ][環境音だけ]と分解し、ステレオではない使い方をする事で[声と音に包まれる]環境をつくります。テクノロジーを駆使しつつ、でもそのテクノロジーを感じさせず、必然性のある演出で、新しい舞台表現に挑戦したいと思っています」

アニメの舞台化ではない、原作を軸にするが、アニメの良さは取り入れる、という考えでの新しい舞台芸術。どこかノスタルジックで不思議な世界観の『蟲師』だからこそ出来る挑戦ではないだろうか。

この舞台で演じるのはアニメの『蟲師』の声優である。それに関しては、
「ギンコの声は、もう中野裕斗さんしかないだろうと。淡幽の声は小林愛さんしかいないだろうと。やっぱり土井美加さんの声で、語りを聴きたいと。もうそれだけが理由です(笑)。中野さんや小林さん、土井さんは、俳優として舞台にも立たれていらっしゃるので、それも理由のひとつではありますが、先にも言ったように『蟲師』の世界をつくるには[詠み聞かせ]が一番だと思っています。だったら、アニメの声優さんにそのまま出て頂こうと。
でも決して、中野さんが白いヅラをかぶったギンコとして出てくるわけではありません。きっと似合わないし(笑)。表面的な姿を似せてもそれはどこまでも嘘なので、そんな気は微塵もありませんでした。アニメで役を演じた皆さんの声は[本物]で、リアルの場にそのご本人がいて、その[本物]によって『蟲師』が語られるだけで成立するんです。
あとは、より観客の皆さんに[いかに蟲師の世界に没入してもらえるか]を演出するだけです。舞台を観る、というより、終わった後に『蟲師の世界を体験した』『ギンコや淡幽たちに会ってきた』そう思ってもらえるような舞台にしたいと思っています」

ひとつの舞台芸術作品としての今回の舞台、新しいライブエンターテインメントの形として観客に提示。観客は単なる傍観者ではなく、その世界観に入り込み、体験する、ということ。どんなステージになるのか、これはそこに行った者でなければわからないのである。
《高浩美》
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