記録破りのスタートは、前評判どおりの感動に加えて、アクション満載のアドベンチャー、ヒロと仲間の友情など、どんな人でも楽しめる作品の魅力が理由だろう。
しかし、その作品はどうやって生まれたのだろうか?本作のプロデューサー ロイ・コンリ氏に『ベイマックス』の誕生について伺った。そして、国内公開まではあまり語られなかった本作の冒険アクションの楽しさについても聞いてみた。
[数土直志]
―まず、今回の監督の役割について教えてください。ドン・ホール監督、クリス・ウィリアムズ監督は、どうやって起用が決まったのですか。
ロイ・コンリ氏(以下ロイ)
決めたというよりも、プロジェクトの立ち上げ自体が監督によるものですね。ディズニー・アニメーション・スタジオでは、どんな作品も監督が推進力になって制作するんです。企画を進めるのは生みの親である監督だという考えに基ずいていて、これはジョン・ラセターが始めたことでなんです。
―その監督のアイディアはどうやって生まれるのでしょうか?
ロイ
スタジオではStorytrust(ストーリー・トラスト)と呼ばれるものを導入しています。監督たちや、それにラセター自身も加わって、自分たちのやりたい企画をそれぞれ出して合ってプレゼンをします。
そのなかでみんなが「一番可能性があるのは?」とか、「一番印象が深かったものは?」といったことを話し合います。なかには自分のアイディアで他の人を説得したり、あるいは人の意見を聞くことで企画を進めたりする人もいます。
―それは初監督作品も同様ですか?
ロイ
初監督である場合も同じピッチに参加できます。その際はストーリー部門を牽引できる力があるかどうか、短編での実績も考慮されますね。
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―ジョン・ラセター氏から今回の映画に対して何か要望はあったのですか?
ロイ
「いい作品を作れ!」です。(笑)
と言うものの、実際に彼が私たちにどうしろと指示することはありません。ディズニー・アニメーションはチームで作りますので、彼もチームのひとりなのです。価値観は共有してはいますが、私たちがラセターに何かをプレゼンをするというのとは少し違います。
これはディズニー・スタジオのカラーでもあります。ラセターのような人が自分のボスで本当に良かったと思います。
―『ベイマックス』では、サンフランソーキョーの街並みに代表されるように、日本カルチャーが随所に取り入れられています。日本人にはとてもうれしいのですが、日本以外で見た時に奇異に映りませんか?
ロイ
私は全くそうは思いません。日本のカルチャー、美術、そこから生まれるビジュアルはいまや世界の文化と統合されています。私はカリフォルニアで育ちましたが、そこでは一世紀以上もの間、日本の建築やアートに影響を受けています。たぶんサンフランソーキョーは世界のどこでも違和感なく受け入れられますよ。
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―今回はディズニー・アニメーションらしさがたっぷりと盛り込まれる一方で、アクションシーンではマーベルとの融合も感じさせました。
ロイ
そもそも企画の成り立ちとなる原作は、主人公たちがいかにスーパーヒーローになったかの話です。それに少年とロボットの心の絆を加え、このふたつをどういったバランスで見せていくかが『ベイマックス』の課題でした。
バランスはどんな映画でも重要ですよね。今回はそのポイントを見つけるのが大変でした。マーベルのような皆がわくわくするような要素は入れることは最初から狙っていました。ただどんなスーパーヒーロー作品も、感動がなければいけません。ですから今回は感動するストーリーをきっちり描くことを心がけました。
作品が出来上がって行く段階で、先ほど話したストーリートラストでは、本作は本当に深いテーマを議論することが多かったんです。そこが作品に影響して、テーマ的な部分が豊か作品になったと思っています。
―最後になりますが、『ベイマックス』には何人もの個性的豊かなナード(オタク)な男の子、女の子が登場します。作り手には、ナードな若者に対する応援メッセージの気持ちもあるのでしょうか?
私どものウェブサイト「アニメ!アニメ!」はアニメをテーマにしたサイトですので興味があるのですが。
ロイ
勿論!彼らへの応援歌ですよ。
私たち作り手は誰もがナードだし、一番いけてるのがナードだと思っています。『ベイマックス』は考えること、知性を祝福する映画だと思っています。それはナードとつながるし、それをうれしく思っています。
そして『ベイマックス』は、平和を通して正義を手に入れる映画です。それはいまの世界にとっても大切なことじゃないかと思います。
世界はナードが作るんですよ。そしていま世界の人の心を捉えているのがナードの作ったものなのだから、世界は間違った方向に行っていないですよ。
―本日はありがとうございました。
『ベイマックス』
http://Disney.jp/BAYMAX/
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