幅広く国際的な目線で芸術性に溢れ優れた作品を顕彰してきた文化庁メディア芸術祭。その平成26年度の受賞作品が11月28日(金)に発表された。文化庁メディア芸術祭はアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門から成り立つ。1997年にスタート、今年で18回目を迎えるが今回の応募総数は3853作品と過去最多だ。エンターテインメント部門ではGoogle’s Niantic Labsのゲームアプリケーション「Ingress」が大賞を受賞した。このゲームは世界200か国以上で遊ばれている同時参加型ゲームでiOS版が出てゲーム人口が増え人気に火が付いた。GPSと連動し、ゲームの中の仮想空間と現実の世界を結び付けて、二つの組織で陣取り合戦をするゲームだ。発表会見では、Google’s Niatic Labsの創業者であるJohn HANKEさんはビデオメッセージで登場し、「『ゼルダの伝説』やSONYのAIBOなどに影響を受けていたので、日本でこのような賞をもらえるのは嬉しい」と語った。ゲームの受賞は6年ぶり5作品目となる。そしてアニメーション部門ではロシアの短編アニメーション『The Wound』が受賞、監督はAnna BUDANOVA(アンナ・ブダノヴァ)さんだ。2011年にアニメーション科を卒業し、初の監督作品となる。ビデオメッセージでは「雪降るロシアの地からハグを送ります」と喜びのコメントをし、審査委員の小出正志さんは「音にもこだわり、クオリティが高く巨匠の風格を感じる。普通だったら新人賞だが、今回は見事に大賞となった」とコメントした。今回のアニメーション部門については「最近ではプロとアマの差がなくなってきた。学生はじっくり作る時間があることもあって海外でも賞を取ることが多く、世界的に見ても学生が強い」と話した。マンガ部門では近藤ようこさんの『五色の舟』が大賞を受賞した。『五色の舟』は津原泰水さんによる原作で、『11 eleven』に収録されている短編小説が原作となっている。『11 eleven』が第2回Twitter文学賞の国内部門で1位に選ばれおり、2014年には『五色の舟』がSFマガジンの「オールタイム・ベストSF」国内短篇部門で1位に選ばれている。発表後には近藤ようこさんと津原泰水さんが登壇し、近藤さんは「長くマンガを描いていてどうしようと思っていた、今回評価していただいて嬉しい」と語った。津原さんは“マンガ”が受賞したという事で、原作の自分が受賞したのかわからなかったと戸惑ったことを話し、「マンガの原作として書いたわけではないが、戦友というべき近藤さんの強い思いがあって…」と登壇した理由を明かした。審査委員のすがやみつるさんは「一秒で決まった、というか全員一致で、もう決まっているでしょうという雰囲気の中決まった」と絶賛した。今回のマンガ部門については「昨年は海外からの応募が多かったが、今年はほとんどない。過激さやインタラクティブ、アニメっぽいものもあまりなく、マンガマンガしたものが多かった」と話した。また昨年大賞を受賞した『ジョジョリオン』と比べて対照的なラインナップになったとも。「『アオイホノオ』だけ旬の作品だが、地味に長くオタクがオタクのために描いた作品だから、テレビで盛り上がってる今受賞しなければどうするんだと」と述べた。第18回文化庁メディア芸術祭受賞作の作品展は、2015年2月4日(水)から2月15日(日)まで六本木の国立新美術館で開催される。また夏には国立新美術館主催し、アニメやマンガ、ゲームなどをメインにした展示会も開催を予定、海外にも巡回をするそうだ。今後さらに国際的な広がりを見せる文化庁メディア芸術祭、海外の作品に触れるいい機会になるだろう。平成26年度 第18回文化庁メディア芸術祭受賞作品【アニメーション部門】大賞『The Wound』Anna BUDANOVA(ロシア)優秀賞『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』 高橋渉『ジョバンニの島』 西久保瑞穂『PADRE』 Santiago ‘Bou’ GRASSO(アルゼンチン)『The Sense of touch』 Jean-Charles MBOTTI MALOLO(フランス)新人賞『コップの中の仔牛』 朱 彦潼(中国)『たまこラブストーリー』 山田尚子『Man on the chair』 JEONG Dahee(韓国)【マンガ部門】大賞『五色の舟』 近藤ようこ/原作:津原泰水優秀賞『アオイホノオ』 島本和彦『チャイニーズ・ライフ』 李昆武/フィリップ・オティエ/訳:野嶋剛『春風のスネグラチカ』 沙村広明『羊の木』 いがらしみきお/原作:山上たつひこ新人賞『愛を喰らえ!!』 ルネッサンス吉田『ちーちゃんはちょっと足りない』 阿部共実『どぶがわ』 池辺葵「文化庁メディア芸術祭」公式サイトhttp://j-mediaarts.jp/
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