「アニ玉祭」が始まった理由、その意義とは ― 主催者インタビュー 前編 | アニメ!アニメ!

「アニ玉祭」が始まった理由、その意義とは ― 主催者インタビュー 前編

10月11日、12日に埼玉県・大宮で開催される「アニ玉祭」。アニメ!アニメ!では主催者3名に今年の見所や今後についてお話を伺った。

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10月11日、12日に埼玉県・大宮で開催される「アニ玉祭」。鷲宮、秩父といったアニメの“聖地”を多く抱える埼玉県の“アニメと観光”をテーマにした総合イベントが間もなく開催される。

編集部ではこのアニ玉祭のキーマン3人にインタビューをすることができた。イベントの見所、今後の展望はもちろん、“アニメの聖地化”についても詳しくお話を伺えたので、前後編でお届けする。

■アニ玉祭ができるまで
――まずはみなさんの自己紹介をお願い致します。
柿崎俊道さん(以下、柿崎):もともとはアニメ雑誌などで編集をしていましたが、2005年に「聖地巡礼 アニメ・マンガ12ヶ所めぐり」という本を出しまして、そこから各自治体などと一緒に動くようになりました。2~3年前からは聖地巡礼プロデューサーとして活動しています。アニ玉祭では総合プロデューサーを務めています。

田中康士郎さん(以下、田中):私はソニックシティの職員をやっています。アニ玉祭については当初企画を県にもっていった発起人という立ち位置ですね。去年はSONIC CITYが25周年でして、それにあわせて「なにかやろう」と県に持っていったという経緯があります。

松本直記さん(以下、松本):私は埼玉県の職員で、観光課(埼玉県産業労働部観光課)に所属し、アニメを含めた観光振興施策を担当しています。アニ玉祭に関しては、県側で全体のとりまとめを行っています。アニメ全体の施策としては別に担当がいますが、私はアニ玉祭の担当という形になっています。

――ありがとうございます。アニ玉祭のベースは田中さんが企画されたということでしょうか。
田中:最初はTAF(東京国際アニメフェア)をイメージしていまして、県の違う部署に企画を持っていきました。そこで色々と話しをしたのですが、東京と違ってアニメ制作会社が多いわけでもなく、ビジネスマッチングをするのは難しいかなという結論になりました。そこで埼玉の特徴でもある「アニメと観光」という切り口のイベントとして企画書を作り直したのが3年前くらいです。

――埼玉県側の反応はいかがでしたか?
田中:ソニックシティという会館自体が、埼玉県のもの※ですし、その目的も埼玉の文化・地域振興ですので、埼玉県の施策に沿ってイベントを立案しています。食べ物やビジネス向けのイベントは多く行っていますし、アニメを切り口にしたイベントについても、ぜひ!という反応でした。
※日本生命保険相互会社、さいたま市も所有

――初回のイベントの評価は?
松本:初めてのイベントだったので、アニメファンは集まってくれるだろうという予想はしていたものの、結構不安はありました。そんななかで6万人という大勢の方に集まって頂けたので、大変良かったと思っています。予想以上の人出で、成功したという評価をしています。

柿崎:惜しいのは2日目が雨だったことですね。

田中:台風みたいな集中豪雨でしたもんね・・・。

柿崎:屋台もダメだったり、コスプレイヤーも中に避難させたりしてかわいそうでしたね。それでも2日目は2.5万人の方がいらっしゃいました。

――去年実際にイベントを開催しての課題などはありましたか?
田中:初めて実施してみて、得意なところと不得意なところははっきり出たと思います。根本的なところでいうと“広報”の問題ですかね。埼玉県が発行している「彩の国だより」といった県民向けの広報紙や、各自治体の広報紙にも積極的に露出していきました。また、新聞社さんにもご協力頂いて、多くの新聞にも取り上げて頂いたので、そこは行政としてしっかりとできたと思います。一方でアニメファンなどコアユーザーへの情報の届け方が分からない部分もありまして、そこが去年は不足していたかなと。

柿崎:今年はそこを強化すべく、アニメ雑誌にも取り上げて頂き、情報は良い形でお届けできていると思います。

――民間の力もちゃんと活用しているんですね
柿崎:そうですね。慣れているところは民間にお任せしていく形にしています。

――今年は去年の反省を踏まえて、コアなファン層にもしっかりリーチできていると
田中:そうですね。昨年とは段違いの反応が実感できていますし、海外の媒体からのお問い合わせも増えたというのは全然違うところかなと思います。

――英語でのお問い合わせが増えたのでしょうか
田中:英語ばかりというわけではなく、KADOKAWAさんとのお付き合いの関係もあるとは思うのですが、「台湾ウォーカー」さんで特集を組みたいというお問い合わせもありました。国内でも、経済産業省がやっている「コ・フェスタ」からパートナーイベントになってほしいという依頼が突然くるなど、こちらからアクションを起こさなくても、取り上げて頂くことが増えています。
去年はどうやって情報を出すか苦心していましたので、全然違うなと。「コ・フェスタ」でも海外向けに情報を発信してもらえているので、去年と比べると想像もできない状況ですね。

――なるほど。今年の来場者数の目標をおしえて下さい
田中:2日で65,000人を目標にしています。

――松本さんにお伺いしたいのですが、改めてアニ玉祭の実施意義・その目的について教えて下さい
松本:埼玉県としては、このイベントが盛り上がることがゴールではないんですね。大きく取り上げている作品も、版元さんのプロモーションに加え、自治体の努力によって盛り上がっている作品達なので、埼玉県としては、そうした作品・自治体がさらに盛り上がるようなきっかけ作りを支援していきたいと考えています。また、他の自治体に成功事例を共有することで、彼らも何かできないかと考えるきっかけになればと思っています。
今年からは「プロジェクト会議」というのも発足させて、鷲宮・秩父といった成功事例を共有するだけでなく、今後の土台作りもサポートしています。今盛り上がっている作品・自治体のブーストと、これからの土台作りの2点がアニ玉祭の意義ですね。そして、ユーザーさんにはアニ玉祭という大きな箱に来て頂いて、それぞれの自治体のことを知って頂きたい。そして実際に足を運んで頂くというのがゴールになります。

ただのアニメイベントをやるのであれば、正直県が絡む必要はないと思うんですね。どうしても県がやる以上は制約も色々と出てきてしまいますし。県が間に入ってやるからには、しっかりと自治体にお金が落ちるような仕組みを作っていかなければなりません。県が主導してお金やクライアントを無理矢理引っ張ってくるのではなく、その先の自治体が盛り上がる支援をしていくというのが基本のスタンスです。

――あくまで盛り上がっている自治体をしっかり見せていく支援をしているということですね。そうした現状をちゃんと届けることで、新たなコンテンツの流れを生んでいくと
松本:そうですね。お客様にもちゃんと知って頂くのと同時に、制作側にも埼玉が力を入れているというのを見てもらえるのが良いのかなと思います。

後編に続く

アニ玉祭 公式サイト
/http://anitamasai.jp/
《宮崎 紘輔》
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