高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義[取材・構成: 高浩美]手塚治虫の傑作『虹のプレリュード』、正攻法のミュージカルで作品世界を幾重にも見せ、キャストも乃木坂46の生田絵梨花始め、大健闘!■ 恋愛や生き様を主軸に据えた手塚作品の傑作手塚治虫の傑作少女漫画『虹のプレリュード』がミュージカル化する。1975年、『週刊少女コミック』に連載されたもので、手塚治虫の最後の少女漫画誌連載と言われている。19世紀、ロシア帝国によるワルシャワ侵攻が題材で、音楽中心ではなく、愛国心にあふれた音楽家志望の若者たちの物語となっている。病死した兄の代わりに音楽学校に入学するヒロイン、兄になりすましてワルシャワ中央音楽院に入学するところから始まる。コミックを紐解くと、最初からミュージカルを思わせる滑り出し、歌詞とおぼしき言葉とミュージカルっぽく、人々が踊り、歌うワルシャワの風景から始まる。もしかしたらミュージカル化を前提に描かれたのではないかと思うくらいの“オープニング”である。ヒロインのルイズはワルシャワに着いて 1人の青年と出会う。その名は古道具屋の店員、ヨーゼフ。彼から音楽院に天才がいると聞かされる。彼の名はフレデリック・フランソワ、かの有名なショパンである。史実でもショパンはワルシャワ音楽院を主席で卒業し、ウィーンに赴いて演奏会を開いている。コミックもラスト、ショパンはウィーンでワルシャワが侵略され、陥落したことを知り、祖国を想うショパンが革命のエチュード(※1)を作曲するシーンで幕切れとなっている。歴史的事実と実在の人物、そして創作された“いそうでいない”人物を登場させ、ワルシャワを舞台に物語を構築。音楽を題材にせず、恋愛や生き様を主軸にすえた展開と哲学的な深さは流石、“ストーリー漫画“(※2)を確立させた手塚治虫ならではの作品である。そしてヒロインを中心に3人の男性が登場する。ヨーゼフ、フレデリック、そして出番は少ないがロシアのイワノフ大尉である。3人とも信念があり、それを信じて行動する。愛国心にあふれ、革命に生きるヨーゼフ、音楽という芸術に真摯に取り組み、信念を貫くフレデリック、職務に忠実で国を信じるイワノフ。誰もが時代の荒波の中で懸命に生きている。そんな姿に共感を覚える。随所にピアノのシーンが散りばめられており、まさにミュージカル向きな作品と言えるが、難しさもあろう。ピアノのシーン等、気になる場面は多々あるが、兄に負けず劣らずピアノの名手であるルイズに乃木坂46の生田絵梨花がキャスティングされている。生田は自身でもピアノを弾き、ここ暫くは芸能活動より学業に専念してきた。今回の大役、ピアノの腕前もさることながら、今後の活動の方向性に大きな影響を及ぼすかもしれない。大いに期待したい。また、ヨーゼフ役に中河内雅貴、フレデリック・フランソワ・ショパンに中村誠治郎、イワノフ大尉に石井一影、と若手実力派がキャスティングされている。人はどう生きていくべきかを問いかけ続けた手塚治虫、そんな作者の珠玉の作品『虹のプレリュード』が舞台に蘇る。(※1) 革命のエチュードこの曲は11月蜂起における1831年のロシアによるワルシャワ侵攻とほぼ同じくして公表された。この蜂起は失敗に終わり、革命は終結した。ショパンは「これは私に多くの痛みを残した。それをわかっていたかもしれない」と泣いた、と言われている。(※2)ストーリー漫画日本の漫画の分類のひとつ。明快な定義もなく、この言葉自体の発祥も曖昧である。ストーリー漫画が確立されたのは手塚治虫原作の『新宝島』であると言われている。
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