日本SFファングループ連合会議は、7月19日、茨城県つくば市で開催中の第53回日本SF大会(なつこん)で、第45回星雲賞の受賞作、受賞者を発表した。日本長編部門に小川一水氏の『コロロギ岳から木星トロヤへ』が輝いたのをはじめ、日本、海外の長短編小説のほか、メディア部門、コミック部門、アート部門、ノンフィクション部門、自由部門など9部門の受賞が決定した。星雲賞は前年に公開された作品の中から、日本SF大会の参加者が優秀SF作品とSF活動に対して投票で決定する。SFファンによる選出、そしてジャンルの幅広さが特徴だ。第45回の受賞からも、2013年のSFシーンを一望出来るだろう。『コロロギ岳から木星トロヤへ』は小川一水氏が描く。“時間SF長篇”を掲げ、21世紀と23世紀を舞台に描く。小川一水氏の受賞は、第35回の日本長編部門、第37回、第42回(日本短編部門賞)に続く4回目となる。いま最も注目される作家の一人だ。谷甲州氏の『星を創る者たち』は、氏が長年書き綴る宇宙土木SFシリーズの最終エピソードにあたる。25年の時を経て、完結した。谷甲州氏の星雲賞受賞も3回目だ。海外長編部門は『ブラインドサイト』(著者:ピーター・ワッツ 訳者:嶋田洋一)、海外短編部門は『紙の動物園』(著者:ケン・リュウ 訳者:古沢嘉通)となった。ケン・リュウ氏は中国系米国人で、日本をテーマにした作品でも知られるボーダーレスなテーマ性が持ち味だ。メディア部門はギレルモ・デル・トロ監督の『パシフィック・リム』に決まった。日本の特撮や怪獣映画、ロボットアニメにもインスパイアされたとされる本作は、世界中の映画ファン、SFファンを熱狂させた。メディア部門は参考候補作品の8作品のうち6作品(『翠星のガルガンティア』、『宇宙戦艦ヤマト2199』、 『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』、『PSYCHO-PASS サイコパス』、『サカサマのパテマ』、『ガールズ&パンツァー』)がアニメだった。今回はアニメからの受賞はならなかったが、『パシフィック・リム』であれば納得だろう。コミック部門は、2013年に14年に亘る連載を完結させた丸川トモヒロ氏の『成恵の世界』、アート部門は加藤直之さん、ノンフィクション部門はあさりよしとお氏の『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた 実録なつのロケット団』である。自由部門の『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』(責任編集:大森望)は、第34回日本SF大賞特別賞に続く受賞である。SF作家とSFファン双方から評価を受けたかたちとなった。受賞理由は、「日本SF短編に光を当てた編集の功績」としている。日本SFファングループ連合会議/http://www.sf-fan.gr.jp/第53回日本SF大会(なつこん)/http://nuts-con.net/ja [第45回星雲賞受賞作]■ 日本長編部門『コロロギ岳から木星トロヤへ』著者:小川一水 出版社:早川書房(ハヤカワ文庫JA)■ 日本短編部門『星を創る者たち』著者:谷甲州 出版社:河出書房新社(NOVAコレクション『星を創る者たち』収録)■ 海外長編部門『ブラインドサイト』著者:ピーター・ワッツ 訳者:嶋田洋一 出版社:東京創元社(創元SF文庫)■ 海外短編部門『紙の動物園』著者:ケン・リュウ(劉宇昆) 訳者:古沢嘉通 出版社:早川書房(「S-Fマガジン」2013年3月号」掲載)■ メディア部門『パシフィック・リム』監督:ギレルモ・デル・トロ■ コミック部門『成恵の世界』著者:丸川トモヒロ 出版社:角川書店(カドカワコミックス・エース)■ アート部門加藤直之■ ノンフィクション部門『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた 実録なつのロケット団』著者:あさりよしとお 編集発行:学研教育出版(学研科学選書)■ 自由部門『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』全10巻刊行責任編集:大森望 出版社:河出書房新社理由:「日本SF短編に光を当てた編集の功績」
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