高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義[取材・構成: 高浩美] ■ 打ち切りの危機もあった『トーマの心臓』、愛に満ちた作品世界で今も読み継がれている劇団スタジオライフの十八番とも言える『トーマの心臓』、4年ぶり7回目の公演となる。また、来年で劇団結成創立30周年、脚本・演出以外は全て男性で構成、とりわけ女性に絶大なる支持のある劇団である。この『トーマの心臓』は少女漫画では最高峰のひとつ。原作は萩尾望都。1974年に『週刊少女コミック』で連載、ドイツのギムナジウムを舞台に人間の愛という普遍的なテーマに挑んだ作品で、今でも絶大な人気を誇るロングセラーである。実は制作発表では萩尾望都から面白いエピソードが飛び出した。当時は読者アンケート最下位だったそう。何度も打ち切りの危機が……とのこと。「当時の担当編集さんからも『小学生の女の子が読むんだよ!?』とよくたしなめられましたが、自分が小学生の頃はこれくらい読んでた憶えがありましたし、“人が面白くないと言っても自分は面白いと思う!”と強気でした。自分のことしか考えないものですから(笑)」また演出家がロスで購入した英語翻訳版『トーマの心臓』単行本を取り出し、萩尾は「ヨーロッパを漫画漬けにしたいですね」と語った。物語は衝撃的な事件から始まる。ある雪の日、シュロッターベッツ・ギムナジウムのアイドル的存在のトーマ・ヴェルナーが陸橋から転落死、騒然とするギムナジウム。委員長であるユリスモール・バイハン(ユーリ)のもとにトーマの遺書が届く。当初は事故と思われていたが、自殺であった。遺書にはこうしたためてあった。「……これがぼくの愛、ぼくの心臓の音、君にはわかっているはず」ユーリはトーマの死が自分自身に理由があることを知り、愕然とする……。そんな折、1人の転校生がやってくる。トーマに瓜二つ、エーリク・フリューリンク、ユーリはエーリクを見るたびにトーマと重ねてしまうのだった……。このエーリクはダブルキャスト。エーリク役を何度も演じている山本芳樹は「針の穴に糸を通す様な、心情構築の連続です。心底、全てが難しいですね」と語る。また今回初役の松本慎也は、「初めて配役を聞いた時は、驚きとプレッシャーで一杯でしたが、演出家のもと、オスカーやエーリク…共演者と日々稽古を重ねることで、皆との関係性の中から、たくさんの発見があり、自分が演じるユリスモールを形作ることが出来てきたと思います。こらから、初日に向けて、ユーリのもつ罪悪感をさらに深く実感に落とし込み、頑なに自分を責め続ける罪の意識と、それが解けていく過程を、微細に、大胆に演じていきたいと思います」と意気込む。また、山本は続けて、「前回を越える『トーマの心臓』を、お観せ出来るように稽古に励んでおります。手応えは充分感じております」松本は前回はエーリク役だったが、その点に関して「違う点は本当に沢山ありますが、ひとつには、エーリクが常に開いてエネルギーを出し続ける役であることに対して、ユーリは閉じた中でエネルギーを重く深く貯め続ける役という点です。共通点は、2人とも萩尾先生の素晴らしい、愛に満ちた世界に生きていて、やはり大きな愛として存在するトーマに向かっているということです。どちらも大好きなキャラクターで、役者として演じられる喜びに溢れた役です」と語ってくれた。作品の魅力に関しては山本は「ひとが求める普遍的なものが純粋に繊細に、そして深く描かれているのも魅力のひとつでしょうか。演れば演るほど好きになる。きっと観れば観るほど、この世界の深遠に陶酔して行って貰えると思います」松本も「普遍的で、美しく、優しさと、愛に満ちた原作の素晴らしさが何よりも、魅力的だと思います。原作を読む度に、新しい発見があるように、演じる度に新しい発見があります。そして、原作に溢れる思いを、劇場という空間で、同じ瞬間、お客様と共にすることで得られる感動が、作品の魅力のひとつだと思います」と作品の普遍性について語ってくれた。最後に山本は「シュロッターベッツ学院でお待ちしています」と一言。続いて松本も「僕たち劇団Studio Lifeにとって、かけがえのない大切な作品であり、代表作です。劇団員一丸となって、魂を込めて、稽古に励んでいます。ぜひ観に来て下さい!シュロッターベッツでお会いできることを楽しみにしています」と締めてくれた。スタジオライフはダブルキャストや俳優の組み合わせの妙でどの回も見所が多いのが特長。ユーリと対峙するエーリク役にはベテラン・及川健と入団2年未満の久優二、田中俊裕が抜擢された。少しずつ異なる空気感を醸し出す、とりわけ新人とベテランの共演、ベテラン同士の“丁々発止”なやりとりもこのスタジオライフならでは、ということである。
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