「仕込み」と「練り」が絵の具を決める―ニッカー絵具 数井浩子のアニメ社会科見学 第6回 | アニメ!アニメ!

「仕込み」と「練り」が絵の具を決める―ニッカー絵具 数井浩子のアニメ社会科見学 第6回

アニメーター・演出の数井浩子さんによるアニメ制作ための道具を作る企業の訪問レポート:アニメ社会科見学。今回は美術に欠かせない絵の具、ニッカー絵具の第2回。

連載 数井浩子のアニメ社会科見学
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「雨でも晴れでもいつでも”同じ色”をつくり出す」
―ニッカー絵具を訪ねて (2)


■ 数井浩子(アニメーター・演出)

「うちは人数が少ないから、 みんなでお互いの仕事を手伝うんですよ」

現在、ニッカー絵具がつくっている絵の具の種類は、水彩絵の具、ポスターカラー、アクリル系、エクステリア用など多岐にわたる。そして、それぞれ約60~100色ほどつくる。

見学に行った日は、5色の絵の具をつくり、7色の絵の具をチューブや中瓶に詰めていた。絵の具は少ないもので一度に3リットル、通常は90リットル製造される。90リットルを絵の具の小瓶(40ml)に詰めると、約2250本ほどの絵の具である。

大量生産ではないがそれなりの物量である。しかし、ニッカー絵の具の社員は総勢17人(2013年現在)。色を仕込み、練りあげる「製造部」は4人、その絵の具を充填する「生産部」が6人、梱包して発送する営業二課は1人。その他は、事務、総務などが3人である。少数精鋭の絵の具製造所なのだ。

■ 絵の具つくりの心臓部:「仕込み」と「練り」が絵の具を決める

abesan「色つくりを担当する製造部は、ニッカー絵具の“心臓部”です」

営業部主任、石井応徳(いしい・まさのり)さんは、絵具つくりを人体に例える。大切なこの「心臓部」には2つのプロセスがある。ひとつは「仕込み」であり、もうひとつは「練り」だという。

「仕込み」とは、いわゆる顔料や接着剤などを配合表(「レシピ」)通りに調合するプロセスである。どの絵の具をどのような配分でつくるかの目安は「レシピ」に示されているものの、料理と同じで、レシピ通りにつくれば正解というものではない。

そこでもうひとつのプロセス、「練り」が重要になるのだ。調合された顔料は、「消泡剤」「防腐剤」「増粘剤」「バインダー」などの薬剤と混ぜ合せ、練りこまれることによって、なめらかで均質な絵の具になる。

この「練り」を実際に行うのは、「ロール」とよばれる機械である。ロール機には、長さ1m、直径60cmの3本のローラーがセットされている。最初のローラーに流し込まれた材料はゆっくりと3本のローラーの間を通っていく。ローラーの回転比は1:3:9と段階的に早くなっていくので、最後のローラーにたどり着くころには、混合された材料が均質な粒子になるという仕組みだ。

しかし、粒子を潰しすぎると黒っぽくなってしまう絵の具もあるため、場合によっては、3本のローラーの間隔を少し広げてあまり押しつぶさないようにする。こうしてロール機を使って平均3~4回、練りを加えて、やっと「絵の具」が完成する。

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